番外編 兄ちゃん奮闘録
タイトルの名のごとく
「ど、どないしよ……。」
俺の名前は宮原空、まぁ大学生ってやつだな、んでうちには犬に変身できる変わった弟、陸が居る、陸には発情期というものがありその時は発情期抑制の薬を飲ませなきゃいけないんだけど……、忘れた結果、
「ワンッ!」
……ダメだ、こいつ、完全に身も心も犬になってやがる……。
「と、とりあえず沢村さんの所へ行くか……。」
と俺は言いながら部屋の中を駆け回る陸を捕まえた。
――「あぁ…、陸くん発情期抑制の薬飲むの忘れましたか……。」
沢村先生は苦笑いをしながら陸の頭をぽんぽんと叩いた。すると陸は、嫌なのか、
「ワウウ……。」
と言う不機嫌そうな声をあげる。俺は、
「……それで?、陸は…?。」
と聞く、すると沢村先生は、
「無理ですね……。彼は、発情期が終わるまでこのまんまですよ……、でも、お兄さんとかは一応認知はしてます、ただ精神的に子供の狼になっちゃってますから、ね……。」
と困った顔をしながら言った。
――とりあえずは、家に帰ってきた。
にしても発情期が終わるまで、ずーっとこのまんま……、ってぇ!?
「うぁっ!?、 陸!、床でオシッコすんなよ!」
俺は部屋の隅で片足上げてオシッコする陸に向かってそう叫んだ。
すると陸は、
「ワゥ?」
と言う声をあげながら首をかしげる。
「……えっ。」
俺は絶句した。可愛すぎるのだ。
……まてよ?、こんな可愛い姿、いつもは絶対に見せないぞ?、……つまりこれは、陸のお宝画像を大量に集めるチャンス?
俺の中からそんな事を考えているのを感じたのか、陸は全速力で逃げ出す。俺は、
「おいっ!、陸待てっ!、可愛い写真撮らせろ!」
と言いながら携帯のカメラで陸を撮影するため追いかけた。
――こうして犬の弟は全速力でしばらく自分の事を撮影しようとする弟大好きの兄から逃げるハメになったのだった……。
まぁ、俺もあの時は、大人げなかったな……。
――「陸ぅ~、チカレタ~。」
俺はそう言って地面に座り込む。
俺は陸がいつまで経っても逃げ続けるので作戦として散歩に連れて行ってその隙に写真を撮ろうとした、すると陸は俺の気持ちを悟ったのか多少びくついていたが何とか散歩に連れ出すことが出来た……、が、それは甘かった。
――こいつのせいでもう5時間歩きっぱなし。もはや疲れて写真どころじゃない……。
陸はまだ歩きたそうに、
「ワウワウ!」
と言ってくる、そして俺が、
「るせーっ!、俺は疲れた!」
と言いながら陸の方を見た。
そしてその時、陸が少し足を引きずっているのに気がついた。
俺は陸を抱き上げ、脚を見た。
見ると陸の足は歩き過ぎたせいなのか肉球から少し血が滲んでいた。
俺は陸に、
「おっ前なぁ、足痛いんだったら痛いアピールしろよな。」
と言いながら陸の足の傷を持っていたウエットティッシュできれいに吹き、ハンカチを巻き付ける。
その時、ふと陸が始めて犬になったあの日の事を思い出した。
――陸は森の中、傷だらけで地面の雪を血で真っ赤に染めて木の下敷きになっていた。
あの時は無我夢中で、必死に陸の事を助けた。
陸は確かに手のかかるしょうがない天然バカだし、ボケッとしてる。
それに血も繋がっていないどころか人間ですらない。
それでも、こいつは俺にとっての大切な家族であり弟だ、代わりなど絶対に居ないんだ。
――「よいしょっ。」
そう言って陸の体をおぶる。
あの雪の日の陸の体は氷のように冷たく、軽かった、でも今は確かに体には確かに温もりがあるし多少重くなったように感じる。
「お前も成長するな……。」
と俺が言うと陸は分かっているのか分かってないのか分からないが、元気に、
「ワン!」
と吠えた。
それにしても、もしかしたら将来、こいつは人としてではなく狼として生きていくのかもしれないんだよな……?、でもそれはこいつの自由なんだ。
でも、こいつがどんな道を選ぼうと、どんなに離れても、俺はこいつが誇ることの出来る兄ちゃんでありたい。
俺は、陸と夕焼けを見ながらそう思った。
そして、
「もうすぐ夕飯だし・・・、帰るか。陸、今日の夕飯何だろうなぁ?」
と陸に向かって言う、すると陸は、
「ワフンッ!」
と言う声をあげる、それを聞いた俺は、
「陸~、ゴメンだけど俺、犬語わかんねぇよ!」
と笑いながら家へと歩いて行った……。
――「な、何だよこれ……?」
そう俺が聞くと姉は、
「何って、私が作った料理よ。」
と言った。
料理?、この暗黒で異臭を放つ物質が?、これが近づいて来ただけで陸一目散に逃げ出して今は外で食べてきた父さんの所に避難してるぞ………。
そしてその後、それを一口食べた俺は泡を吹いて倒れ、病院送りとなった……。
――俺は、こんな怖いものを作る姉は、欲しくないんだがなあ・・・。
――その頃、沢村は裏山にあるとある神社にいた、ふとどこからか、
「最近のあいつの様子は、どうだ……?」
という声が聞こえる、すると沢村は、
「いや、特には変わりない。元気だよ。」
と言った、すると声のほうはどこか安心したような口調で、
「そうか……、良かった……。」
と言う、その言葉を聞いた後沢村は声に向かって、
「それにしても……、この発情期抑制の薬、確かに効くけどさあ、苦すぎるよ……。」
と言って背後にいる影に薬の入ったビンを見せた。
やっと沢村先生を出せて安心した。
次回は陸と流菜の絡みです。




