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陸 ~人狼物語~  作者: 霧島雅狼
第壱章 家族
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第壱話 家族

まとめました。



 ……痛かった.それに、すごい寒かった。



 ……動こうにも、倒れてきた木の下敷きになり動く事ができない。



 だんだんと、意識がぼやけてきた。


 俺の体からでた血は俺の体の回りの雪を紅く染め上げる。


 すごい痛い。でも、だんだんとその痛みもぼんやりとしたものになっていく。



 『俺、ここで死ぬのかな……。』



  そう呟いた──その時。


 兄の声が聞こえた気がして、俺は、


 『兄っ……、ちゃんっ……、みんな……、ゴメンね……。』



 と言った。






 ――話は、3時間程前に遡る……。


 俺の名前は宮原陸、もうすぐ卒業の中学3年生だ。家族は父親の三郎と母親の加代子、酒飲みモデルとして人気の姉、真夏と高校生の兄、空との5人暮らし。(まあ、真夏姉ちゃんは仕事であんま帰ってこないけどね)



 ある日、冬休みに友達と遊んだ帰り道。俺は高校生くらいの不良3人組に絡まれた。




そして路地裏に連れてこられ、カツアゲされそうになったその時【。】それを目撃したのか兄が俺のことを助けようとして不良に殴りかかった。





 俺は何とか逃げ出せた。でも今度は兄が捕まった。不良は近くにあった鉄パイプで兄を思いっきり殴ろうとしている。



 ――「危ない!」



 そう叫んで俺は兄の上に覆いかぶさり、兄を守ろうとした。




 ――ガン!




 という鈍い音、それから俺は鈍い頭の痛みと共に全身の力が抜け、倒れる。


 俺はぼんやりとした意識の中、不良が今度こそ兄を鉄パイプで殴ろうとしているのが見えた。



 ――ヤメロ!、アニキニテヲダスナァッ!



 そう思ったその時、ドクン、と全身が脈打ち、俺の頭の中は真っ白になった。








 ……気がつくと不良たちはみんな倒れていた、兄は、



 「お前……、それ……。」



と言った後俺の投げ捨てられていた鞄を持ち、わけもわからず放心状態になっている俺を急いで連れて帰った。



 家には姉貴は仕事、両親は出張で明日まで帰って来ない。



 兄は俺に姿見を見せた、そこには俺がいた、でもそこに映っていたものはとても俺には見えなかった。



 着ていた服は変わっていない。


 ……しかし全身が黒と白の毛に覆われ頭の形は犬みたいになっている、さらに尾てい骨の辺りからはふさふさとした毛に覆われたしっぽが生えていた。


 その姿は、まるで映画とか本に出てくる狼男そのものであった。



 『えっ……、何だよ……、これ……。』



 と俺が狼狽していると兄が



 「あのな、陸……、お前に、ずっと話さなきゃって思ってたんだけど……。」






 といって俺にとって衝撃的な話を始めた……。




 ――兄が五歳のころの夏、どしゃぶりの雨の中裏山の近くで1匹の仔犬を拾ってきた、仔犬はまだ目も開いていない赤ん坊で、体は雪のように冷たく、ブルブルと震えていた。


 兄は家族と必死に助けようとした。



 ――しかし仔犬は、死んだ。



 兄は泣いた「ごめんね、ごめんね……。」と何度も謝りながら、そのとき、仔犬の体が光り輝き、やがてそこには一人の人間の赤ん坊がいたという。


 それから兄たちはその赤ん坊に陸、という名前をつけ、家族の一員として育てたという。




 ――俺は、ショックだった。



 『つまり……、俺は家族じゃ……、ないって……、事……?』



と俺が言うと兄は、



 「血縁上は、そうだ。でも――。」






 そこから先は、聞いていなかった。


 ショックで何も考えられずに家を飛び出した。


 いつのまに完全に犬の姿になり、服は脱げてしまった、外では雪が降っていた。


 雪の上を走る、柔らかい肉球はすぐにしもやけとなり、自分の血が雪を紅く染める。



 痛かった、そして寒かった。


 ……でも俺は現実が受け入れられなくて、俺はあてもなく走った。











 ――どのくらい走っただろうか……?

 

 気がつくと俺は裏山の山道をトボトボと歩いていた。


 寒い……、毛皮はあったが裸同然の格好で、それにじんじんとしもやけだらけの足元が傷んだ。






 ――これから、どうしよう……?






 正直、家に帰りたかった、でも、俺は家族じゃない、それに化け物だ。


 トボトボと歩く、そのとき、「おーいっ、陸ぅ!。」と俺を呼ぶ兄の声がした。俺は森の中に逃げた、よくわからないけど怖かった、怒ってるんじゃないかと思った。だから……、逃げた。



 ――森の中は暗かった。怖かった。藪や木の枝で全身を切り、そのたびに痛みが走り、血が流れた。



 ――『ウオォォォォォォォォン……。』



 俺は遠吠えをした、何故かはわからない。ただその遠吠えは、森でこだましていた事は覚えている。


 『俺は……、人じゃ……、無いんだ……。』


 そう呟いた、それから空を見上げた、きれいな星空だった。俺は、


 『帰り……っ、たいよぉ……っ!』


と呟いた、本当は……、帰りたかった、でも、怖かった。大好きな人たちから嫌われるのが……、「化け物っ!。」と言われるのが……。



 ――そのとき、雪の重みで1本の木がバキバキッ!、と音を立てながら倒れてきて……、俺は木の下敷きになった。



 『もう……、だめ……、だ……。』



 意識が薄くなってくる、最期に、兄に会いたくなった。


 ……だからだろうか?、意識を失う刹那、俺は兄の姿を見た気がした。









 「う……、ん……。」


 俺は目を覚ました、ここは……、俺の部屋……?


 ――あれは、夢だったのだろうか……?


 しかしあれが現実にあったということは、全身にまかれた包帯や湿布、それから俺が犬の姿のままだということが物語っていた。


 俺は体を動かそうとして、


 「っ!。」


 激痛に顔をしかめる。


 ――そのとき、ガチャッ、とドアが開く音がして、姉が湿布を6枚ぐらいもって入ってきた。


 姉は目が覚めた俺のことを見て目を見開いた、それから赤く腫れた目から涙がこぼれる、そして姉は、


 「陸ぅっ!。」


 と叫びながら俺のことをギュッと抱きしめた、俺は訳もわからず、


 「あっ、姉貴っ!、どっ、どした!?」


 と聞いた、姉は泣きながら、


 「だ、だってぇっ……。陸が大怪我してぇ……っ、意識無いってきいてぇ……、死んじゃったかとおもってえっ……。」


 と言った。俺は、


 「ごめん……、姉貴……。」


 という、すると姉は、


 「あんたは何も悪くないよ……、私たちがちゃんと言っとけばよかったの……。でも……、どんなことあっても、陸は私の弟だから……、私が陸のこと……、守るから……、何も心配いらないから……。」


 と言った、そしてまた泣いた、俺はただ、


 「姉……、貴……。」


 としかいえなかかった。







 ……いつの間にか姉は泣きつかれたのか寝てしまった、今は母さんが俺におかゆを食べさせてくれている、母さんは、



 「陸……、いろいろ心配しなくても、大丈夫だからね……。」



と言った、それから俺の包帯と湿布をかえると部屋をでていった。

 父さんは姉を部屋へと運んだ、父さんは姉を部屋へと運んだ、父さんはただ一言、



 「陸……、早く元気になれ……。」


 とだけ俺に言った。





 それから少しして兄が入ってきた、兄は、


 「陸……、大丈夫か?」


 と言い、それから椅子に座る、それから兄は、


 「痛かったろ、怪我……?」


 と言った、俺は、


 「うん……。」


 と言うと、兄は、


 「そうか……。」


 と言った。




 それから、暫く沈黙の時が流れた。





 「俺はあのさぁ……、兄貴……。」


 しばらくして、俺は兄に向かい口を開く、兄は、


 「ん?、なんだ?。」


 と聞いてきた、俺は、


 「俺ってさ……、化け物だよね……。」


 と言った、それから俺は、


 「だってさ……、俺ってどっかの野犬の子供じゃん……、きっと血のつながった両親も……、俺がこんな……、化け物だから……、捨てたんだんだよね……、きっと……。」


といった、兄は俯いている、俺は、


 「こんな……、犬のくせに言葉喋ったり人になったりできるんだよ!?、気持ち悪いじゃんっ!、化け物だよっ!、だからっ……、俺はずっと孤独っ――。」




 ――パシッ、と音がした。




 頭が少し痛む、少しして兄が俺の頭を軽く叩いた事が分かった。



 兄は、


 「こんのバカッ!家族じゃったらなんで姉貴は泣いた?、父さん母さんだって……、お前のこと……、気にかけて……。」


と言った、それから、



 「いいか、家族っていうのは血のつながりじゃない、一緒にすごして……、お互い強い絆で結ばれている……、それが本当の家族だ……!、お前は……、おっちょこちょいでドジだけどだれよりも優しくて世話焼きで、1回カーッとなるとそのままつっぱしっちまう陸って名前の、俺たちの、家族だよ……。」



 と言った、俺の目から涙が溢れた、なにかピンと張っていた物が切れた気がした。兄は笑って、



 「血縁上は、家族じゃない、でも、俺たちは、家族だ。」



 と言い、そして、



 「おかえり、陸。……あん時は助けてくれて、ありがとな。」



 と言って、笑った、俺は


 「兄ちゃん……、兄ちゃんっ!。」


 と言いながら兄に飛びついて泣いた。


 兄はそんな俺の頭を優しく撫でてくれた。


 俺は泣いて泣いて泣いて……、そのまま眠ってしまった。






 ――「う……、ん……。」


 しばらくして俺は目を覚ました、


 「よっ、目が覚めたか。」


 そう部屋にいた兄が言った、それから、


 「服、着ろよ、元の姿に戻ってるぞ。」


 と言った、俺の体は人に戻っていた、怪我も綺麗に直っている。


 俺はあわてて服を着た、少しして姉が部屋に入ってきた、姉は、


 「陸!、よかった、人の姿に戻れたんだ!」


と言った、それから、


「あっ、そうだ、これあげる!」


と言って箱を渡された、俺が、


 「あっ、ありがと!」


 と言って箱を開ける、すると何かが飛び出してくる、それはビックリ箱だった。


 驚いて俺はしりもちをつく、姉は人を驚かすのが好きなんだよな……。

 でもいつもなら大笑いするはずの姉が笑わない、兄は眼を丸くして、


 「犬に……、戻った……、だと……?」


 と言った。


 ――え?、あ、また犬になってる……。




 姉は、


「かわいいっ!」


と言いながら俺に抱きついた。




 こうして俺、宮原陸の犬になったり人になったりする生活が始まりました。あはは……。


(ちなみに俺、犬じゃなくて多分オオカミだったよ……。)




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