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プロローグ

「ここか……」

 俺、月神杏つきがみきょうはとある部室の扉の前に立っていた。

 扉にはマジックで【自由部】と書かれた紙が貼ってある。

 俺はこの度、この【自由部】とやらに入部する事となった。

 しかし困った事に俺はこの【自由部】が一体なんなのかを知らない。

 じゃあ、なんで入部したかと聞かれるとそれはそれは長い話となってしまう。

 だが説明しなければ分かるはずもないので順を追って説明しよう。


 今年俺が入学したこの私立蓮星高等学校は部活推進校と呼ばれ、生徒全員の部活への入部を原則とした高校である。

 基本的に何の部活へ入るかは任意であるので入学から一ヶ月という決められた期間内に個人が自由に入部届を出すシステムとなっている。

 が、しかしこの学校にはその期間を過ぎても入部届を出さずに帰宅部になろうとする者、通称【不埒者】が稀にいる。

 そういった者は学校側に自動的にランダムで部活を決められるという事になっている。

 そしてその期間内に入部届を出さず、学校側にランダムに部活を決められた不埒者が俺だ。

 自動的にこの【自由部】という得体の知れない部活に入部させられた。


 ということで、俺は今日初めてこの【自由部】に出席する。

 ぶっちゃけ緊張しているのが現状である。

 どんな奴がいるんだろ……。絶対ヤバイ奴らだろうなー……。具体的に言えないけど……。つーか【自由部】ってなに……。なにが自由なの……。って、そんな事考えてる場合じゃないか……。

(元はと言えば部活届を出さなかった俺が悪いんだ。これで入ってヤバイ奴らが居ても逃げ出さず俺は全てを受け入れよう……)

 俺は心の中で覚悟を決める。

 (よし、開けようっ)

 そして、

 ガラガラガラッ――――

「失礼します! 本日からこの部に入部する事になった月神きょ――」

 意を決して扉を開けた。

「――ふごっ!」

 挨拶をした刹那俺の顔面に何かが直撃する。

 その直撃した反動で俺は後ろに飛ばされる。

(いってぇ……。なにがあたったんだ……?)

 自らの身体が浮く中、俺は自分と共に飛ばされているある物を見つける。

 ――白い球体。

 ――野球ボールだ。

 は? 野球ボール?

 ドサッ――――

 俺は謎に満ちた疑問を頭に抱えたまま倒れた。

 意識が朦朧とする中、耳に人の声が聞こえてくる。

「おい美咲、むきになってボール思い切り投げるのはやめろと言っただろう……」

「あははっ、ごめんごめん」

「まったく、これで誰か怪我したらどうするんだ……」

「いや、結衣、時既に遅し……。この人、多分、ボールに当たった人……」

「え? なになに〜? ひょっとして誰かに当たってた?」

「いや、これは違う。ボールに当たった奴じゃない。こいつは多分別の理由で倒れたんだ。たぶん心臓発作とかで。よってこいつは私達と無縁だ。さあ、こいつは放っておいて続きをやろう」


「放っておくなあああああ――――!!」


「あ、起きた」

「「あ、起きた」じゃねーよ! 今俺ボールに当たって倒れたんだけど!? 発作で倒れたんじゃないんだけど!?」

 俺はツッコミを入れる。

 そんな俺に三人の内の一人、――ロングヘアの女生徒が冷たい視線を向けてくる。

「うるさい奴だな、今私達はこれから【ドキッ!女だらけの室内運動会】を再開しなければならないんだ。邪魔をするな、死ね」

「大会名酷っ!そして口悪っ! って、そうじゃねえ! お前ら何か俺に言うことあるだろ!?」

『すいませんでした』

「うわっ、以外にも普通に謝られたっ!」

 なんだこいつら……。まさかこいつらが【自由部】の連中じゃないだろうな……。

 不安になっている俺にさっきの女生徒とは別の、ポニーテールの女生徒が俺に尋ねてくる。

「ねえねえ、そういえば君、【自由部】の前に居たけど私達に何か用があって来たんじゃないの?」

 【自由部】だった――――!!

「うん、そうなんだ……」

「大丈夫? 急にテンション下がったけど……」

「いや、大丈夫だ……」

「それで、【自由部】に、なんのよう……?」

 さっきまでの二人とは違う、ツインテールの女生徒が聞いてくる。

「ああ、実は――」

 俺が説明を始めようとしたその時、


「ただいま帰りました〜。あっ、お客さんですか?」


 ショートカットの物腰の柔らかそうな女子が小さなビニール袋を持って現れた。

「おお、由紀乃、調度良いところに来たな、【自由部】にクズ、いや、客人だ」

「おい今こいつクズって言ったよな!?」

「え、ほんとうにっ?わぁ〜、こんな所に来てくれるなんて嬉しいな〜。どうぞ汚い所ですが上がって下さいっ」

「はぁ……」

 そんなわけでお邪魔する事になりました。



――――――――――――――――――――



「それで、【自由部】にはどのような用件で来たんですか?」

 先程の物腰柔らかそうな女生徒が尋ねてくる。

「えっと、今日から入部する事になったから来たんだが……」

「えっ? 入部? …………ああっ! 今日来るの忘れてたぁ!」

 物腰の柔らかそうなの女子は慌てふためく。

 なんか、可愛い人だな……。

「おい、由紀乃」

 ロングヘアの女子が物腰柔らかそうな女生徒を呼ぶ。

「はい?」

「はいじゃねえよ。なんだ入部って」

「えへへっ、言っておくの忘れてました。実は今日からうちの部に新入部員が入る事になってたんですよ」

「この時期に、しかもこんな部に入るってまさかこいつ【不埒者】か?」

「ええ、そうですよ」

「なんで入れたんだよ……」

「え、ダメですか? でも人数多い方が楽しいと思うし……」

「まあ、そうだけどさ……。まあいい、お前に任せるよ……」

「はいっ。ありがとうございますっ」

 ショートカットの女生徒は笑顔で応えた。

「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。えっと、あなたの名前は……」

「月神……。月神杏だ……」

「月神さんですねっ。ええっと、じゃあ部員の紹介をしますね。まず最初にそこに居るポニーテールの子が一年の六道美咲ろくどうみさきちゃん」

「よろしくねっ!」

「それで、そこのツインテールの子が美咲ちゃんと同じ一年の雨宮零あまみやれいちゃんっ」

「よろしく……」

「それでそれで、そこに居るロングヘアの子が二年の如月結衣きさらぎゆいちゃん」

「よろしくな、クズ、いや、月神」

「おいお前さっきも俺の事クズ呼ばわりしたよな!?」

「なんだようるせーな、ちゃんと言い直しただろうが。大体なんだ貴様は、年上をお前よばわりして」

「ま、まあまあ……」と俺と如月をあやすショートカットの女生徒。

「こほんっ。えっと、そして最後に紹介するのがこの部の長である私、二年の千凪由紀乃せんなぎゆきのです。どうぞよろしくお願いしますっ」

「ああ、よろしくな」

 俺がそう言うと千凪(部長と呼ぶことにしよう)はニコッと笑顔になる。

「それでは月神さん――――」

 そしてその笑顔を保ったままこう言った。

「――――【自由部】へようこそっ!」


 これが彼女達との出会いだった。


 まさに偶然と呼ぶべき出会い。


 最初は不安に思っていたけど、この連中なら(一人を除いて)上手くやっていけるかも知れない。


 そう思った。



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