マラソン大会
俺は小学六年生の男子児童だぜ!!
今日は待ちに、待ってないマラソン大会の日だぜ!運動が苦手な俺からしたら厄日も良いところだぜ!
時は朝の会に遡るぜ!
「お前たち!今日はマラソン大会だな!今まで練習してきた成果を十二分に発揮してくれ!」
クラスの担任圓岡だ。大学時代はラグビー部だったらしく無駄な肉は全くついておらず、浅黒く焼けた肌がいかにもスポーツマンという風貌をした男だ。
「イェーイ!」
一言吼えたのは我がクラスのNo.1ランナー。通称「豹」
その名はバリバリに豹柄でまとめた私服を好むところからきている。
そして、俺は現実に引き戻された。五年までマラソンが終わり、とうとう俺たちの出番らしい。
「行くぜ」
心の中で呟いた。高鳴る胸の鼓動。あと一秒……パンッ!小気味良いピストルが鳴り響き、俺たち総勢90名駆け出した!今日は負けない……一ヶ月前から休憩時間練習してきたんだ!
あれから9分くらい経っただろうか……。
苦しくても鼻で呼吸し息を整えろ!これからがラストスパートだ。
気づけば誰も前方には居ない。後方にも誰も居ない。
ゴールが見えてきた。ほんとは辛い、足が中々前に出ない。こんな走り方だと足がもつれてしまいそうだ。でも、歩みは止めない。
すると聞こえてきたんだ
「かんばってー!」
「もうっちょっと!」
「いっけぇぇぇぇ!」下級生達の応援は本来力にしなきゃならない。
でも今の俺からしたら呪いの言葉だった。つらいよ、やめてよ、もうらくにさせてよ、見ないでよ。
声には出せない。弱音は吐きたくなかった。同級生達の視線は下級生とは逆ベクトルの意思を含んでいた。
その時、豹が口を開けてボソッとこう言った。
「アニメ見たいから、はやく帰りてえんだけどさっさとギブしろよ……」
俺は全身の血の気が引き、地に膝をつき倒れた。
恥ずかしい。豹の奴は嫌いだ。豹の言葉で解放された気分の俺はもっと嫌いだ。