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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

静寂世界

作者: 露(つゆ)
掲載日:2026/06/03

「わー!」

「ぎゃー!」

 私は人知れずため息をつく。奇声を発しながらドタドタと走り回る子供達を見て、休日のファミレスに来たのは失敗だったと反省する。

 私は大きな音が苦手だ。子供の頃からそうで、周りからは過敏だの気にしすぎだの散々言われ、今や人間不信でもある。

「きゃー!」

「(うるさ……。親は何してんだろ……)」

 ちらりと子供を横目で見る。

 そして、突然『それ』は起こった。


 パァン。


「……え」

 赤が、飛び散る。騒いでいた子供の頭が弾け飛んだと気づいたのは、柘榴の様になった子供だったものの頭と周囲に散乱する破片。

 私は目の前の光景にただただ呆然とした。

「き……」

 一部始終を見ていたウエイトレスがトレイを落としてガシャン! と音が鳴る。

 パァン。

 トレイと食器が弾け飛んだと同時にウエイトレスが悲鳴を上げる。

「きゃあああぁ!!!」

 パァン。

 ウエイトレスの頭が弾け飛んだ。辺りに血が飛んで他の人達も騒ぎに気づきだす。

「な、なんだ!?」

「ひっ……何これ……!!」

 店内が騒がしくなる。比較的落ち着いている人もいれば、ウエイトレスの様に悲鳴を上げる人もいる。

 パァン。パァン。

 人々の頭が弾け飛ぶ。そこで私は気づいた。

「(悲鳴を上げた人の頭が弾け飛んでる……?)」

 騒ぎを聞きつけた店員が状況を確認しに来、声を張り上げて客を誘導しようと……。

 パァン。

 店員の頭が弾け飛んだ。

「(違う……大声を出した人の頭が弾け飛んでるんだ……)」

 パニックになり、あちこちから破裂音が聞こえる店内で、私は遠い景色を見ているみたいにどこか冷静だった。


 なんとか家に帰ってネットニュースを見てみると、この現象は世界各地で起こっているらしく、世界中が大混乱になっているとの事だ。

 家に帰る途中でもあの現象をたくさん見た。至るところから悲鳴と破裂音が聞こえた。


 後日、政府からあの現象について発表があった。

 調査によると、ある一定以上の音量を出すとその発生源が爆発するという。

 人間だけじゃない、動物も、無機物も、なんであろうと爆発する。原因は不明であり、引き続き調査を続けると。

 到底受け入れられる話ではない。けれど、受け入れなければ死ぬだけだ。

 人々は変わってしまった世界に順応していった。


 日々は過ぎ、世界の現状はというと……。


 まず、人口が激減した。

 赤ん坊、子供、衝動的に大声を出してしまう者や、声を出してはいけないと理解できない者達が死んでいった。


 そして出生率の低下。

 低下というかもはや零だ。出産時に赤ん坊は絶対に泣き声を上げる。必然的にそうなる。


 人口だけではなく、動物の数も減った。

 大きな鳴き声を出す動物は軒並み死んだ。ペットが死んで悲しみにくれる人が大勢いるらしい。


 さらに工業の衰退。

 何かを作るには大きな音が出る。工場なんて最たるものだ。

 停電も度々する。

 今使っているスマホも、壊れたらもう次は無いだろう。


 そして文化の弱体化。

 音楽はもちろんのこと、音の出るもの、絵画であろうと画材を作るのに音が出る。

 これは残念だな、なんて思った。


 言い出したらキリがないが、とにかくこの世界は緩やかに死んでいっている。


 そんなある日、スマホに一通のメッセージが届いた。内容は……。

『この世界を悩ませている現象の元凶がわかった。けれど、それに立ち向かうには人数がいる。どうか力を貸してくれ。元凶は……』

 私はそこまで読んで画面を閉じた。

 私はこの世界を変える気はない。こんな居心地の良い世界を何故変える?

 うるさいお喋り集団も、大声で怒鳴る上司も、爆音を鳴らす車やバイクも、私を悩ませるものはみんな消えた。

 人でなしだと思われるかもしれない。

 けれど、以前の世界で誰が私を助けてくれた? 正直ざまぁとしか言いようがない。

 私はこの世界が気に入っている。だから私はこの世界で生きていく。

 この、静寂世界で。

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