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2-6,眼鏡をつけているキャラが突然眼鏡を外すとイケメンになるってどういう原理!?

 クロトとサキは、スキ太郎の後をついて 入り組んだ路地を右へ左へと振り回されながら進んだ。まるで迷路のような細道を抜け、 ようやくスキ太郎が足を止めた。

「ここでござる。」

ここだと言われその方角に顔を向けるとそこには――薄暗い裏通りにぽつんと建つ、“ヤ”のつく看板がぶら下がれられている、古びた雑居ビルの前だった。その看板を見たサキはガタガタと震えながらクロトに尋ねた。

「あ、あ、あ、あの、クロトさん。  こ、これはどういう事なんですか……?  ど、どうして私たち……こんな所に……?  せ、説明して……くれるんですよね……?」

声は震え、語尾は消え入り、 今にも泣きそうな顔でクロトを見上げる。

「ん?なぜって、ここに目的の子がいるからじゃないか?」

「いや、そんな疑問形で返されても困るんですが!!」

なぜか疑問形で返されてしまい、つい反射的にツッコんでしまったサキ。それを見たクロトは少し苦笑いなってしまいサキをなだめた。

「まぁまぁ、そんな怒るなって。あいつがここだって言うならここで間違いないだろって話で。」

自信満々にスキ太郎の方へ顔を向ける。

「あいつは、人一倍五感が鋭どくて、特に嗅覚は獣人族以上にきいててな。確か……半径三十キロまで匂いを追えるんだったか?」

「さ、さ、さ、三十キロ!!」

あまりにも規格外な事に声が裏返ってしまったサキ。なぜなら半径三十キロと言えば、東京から横浜までの距離のため常人ではありえないからだ。この人(スキ太郎)もシーナ同様、規格外の存在なのだと感心している、スキ太郎が突然くるりと振り返り、 クロトに向かって右手を突き出した。

「さぁクロし。仕事はちゃんとこなしたでありますから、ヨウ殿のブロマイドを寄越すであります。」

サキの感心は一瞬でどこか遥かに飛んで行ってしまった……。

「いやいや、何言っちゃってるのスキさんよ。まだここにお目当ての子がいるとは限らんじゃろ。」

「お目当ての子とか誤解を招く言い方は辞めて。」

「いやいや絶対にここにいるでござるから早く渡すであります! それともクロしは拙者の鼻を疑っているでありますか? それならそうとはっきり言うでありますよ。」

なぜか二人が突然、喧嘩腰で話し始めてしまい徐々にヒートアップしていってしまった。

「いやいやスキさんよ。あんたを疑っているわけではないが中にちゃんといるかどうかしっかり確認するまでがお主の仕事じゃとわしは言うとるんだよな!」

「なぜに殿様口調?」

「いやいやクロしよ。その言い方じゃやはり拙者の鼻を疑っていると言っているようではありませぬか。」

「いやいやいや……。」

「いやいやいやいや……。」

「二人とも、もうそのくらいに……。」

二人の押し問答に切りがないと思ったサキが二人を止めようと思ったその時……。

「おうおう、うるせぇな。人のちの前で何騒いでやがる!」

ガラッ、と勢いよくガラス扉が開き中から如何にもヤバそうな雰囲気を漂わせた獣人の男性が出てきた。


 その如何にもヤバそうな獣人男性を見たサキはガタガタと肩を震わせながら必死に声を絞り出した。

「あ、す、すみません……  私達あの……決して怪しい者ではなくてですね……」

冷や汗をダラダラと流しながら今にも泣きそうな顔でその怖い男性に話しかけ、心の中で助けて欲しいと願っているその隣でクロト達は、まだ”いやいや合戦”を繰り広げていた……いや空気読めよ! 

もう切りがないと思ったクロトが突然手を叩き()()提案をする。

「よし、分かった。じゃあ勝負しよう。 誰が先に目的の子を見つけるかって勝負を!」


(何言っちゃてるのこの人!!)


 サキは一瞬、何とんでもない口走ってると心の中で叫び驚きのあまり固まってしまった。すると近くで聞いていた獣人男性が怒りながらクロトに詰め寄った。

「あー!何言ってんだてめぇ。ここはてめぇらみたいなガキの遊び場じゃねぇんだよ。」

もうカンカンにブチ切れた状態でクロトに詰め寄ったが無視。というかそもそも誰もいないかのように勝負内容を話始めた。

「最初にお目当ての子を見つけ無事()()まで親の元まで送り届けた者が勝ち!勝った者は負けたものになんでも一つ言うことを聞かせることができる。そう……なんでも。」

それを聞いたスキ太郎は一瞬ピクッと反応を見せた。

(いやいや状況をよく見てくださいよ!!)

 まるで悪魔の取引かと言わんばかりの悪い顔でスキ太郎に勝負を持ちかけるクロト。その光景にツッコミを入れずにいられなかったサキ。更にその横でもう我慢の限界と言わんばかりで立っていた獣人男性というカオスな状況。そして黙って立っていた獣人男性たとうとうブチっと爆発してしまった。

「てめぇら、ふざけんじゃねぇぞ!!」

 怒りが頂点に達した獣人男性は、までで火山が噴火したかのような顔をこれでもかと言わんばかりに真っ赤にさせ二人に襲い掛かった。……が突然スキ太郎が獣人男性の方に左手を伸ばし獣人男性身体をガッチリ掴み空中に浮いたような状態で動きを止めた。


「「……はい?」」


サキと獣人男性は、 何が起こったのか理解できず、 同じタイミングで同じ変な声を上げたていると。

「その話……本当だろうな……。」

突然どこからともなく聞いたこともないイケメンボイスが耳に入った。一体どこの誰が発した声なのだろうと考え、その声のする方に顔を向けるとそこにはスキ太郎が視界に入った。いやいや、流石にないでしょと心の中で否定しているとクロトが話始めた。

「ああ、本当だ。漢に二言はねぇよ。」

クロトもいつもの軽い調子で話す感じでなく、これでもかと言わんばかりのイケメンボイスで対抗。

すると先ほどまで変なしゃべり方しかしてこなかったスキ太郎がまともに話し出した。

「そうか。じゃあちょっと本気だすか!」

 スキ太郎は右手を眼鏡に手をかけ眼鏡を外し、そのまま左手でホールドしていた獣人男性を勢いよくどこかに飛ばした。その拍子に左手の巻かれていた包帯もほどけてしまい、スキ太郎の左腕が露わになった。その腕を見たサキはつい驚いてしまいフリーズしてしまった。なぜなら彼の左腕は人間の肌ではなく、硬質な蒼鱗がびっしりと並び、 光を反射して鈍く輝いている。まるで――竜の腕そのものだったからだ。どういうことなのか分からず思考を巡らせているサキの混乱などお構いなしに、 スキ太郎は眼鏡を外したまま叫んだ。

「さぁ、いっちょ行きますか!!」

「あ、ちょっと……!」

 止める暇もなく、 スキ太郎は勢いよくビルの中へ突撃していった。そして少しするとビルのあちこちから謎の悲鳴が響き渡った。もう何がどうやらで頭を抱えることしかできなくなったサキ。その隣で右手を額に当て遠い所を見るかのような涼しげな顔でつぶやく主人公。

「おー、今回も凄い暴れっぷりだな。よしよし、今回も楽出来たぞ。」

……楽をしていた主人公。それでいいのか主人公!?


 スキ太郎がビルに入ってから更に数分後、ビルの扉からスキ太郎が奥から出てきた……全身赤く染まった状態で。

「だだだ、大丈夫ですかスキさん!? 全身血まみれというか赤く染まってない部分がない状態で?」

自分でも何言っているのか半分、分からない状態で心配するサキ。するとスキ太郎が、妙に落ち着いた声で言った。

「ふー、安心しろサキ。俺はこう見えてかなりつえぇから怪我なんて一つもしてねぇよ。これはただ子供の影響に配慮したケッチャプのコーティングだ。最近はP〇Aだのなんだのってうるせぇ世の中だからな!」

「ちょっと急に現実的な発言しないで下さいよ!」

 唐突に“ピー音案件”をぶっ込んでくるスキ太郎に、 サキは慌ててツッコミを入れるしかなかった。二人が楽し気な会話?をしているとクロトがスキ太郎の方に歩み寄り血まみれ……いや、ケチャップまみれのスキ太郎に眼鏡を手渡した。

「よう、スキさん。少し遅かったな。あれか最近アイドルばっかりに現を抜かしている方身体鈍ってるんじゃいのか?」

「はぁ!? なんだてめぇ俺の推しの子を馬鹿にしてんのか! 流石にそれは……クロしであっても放っておけないでござるよ!」

自分の推しの子を馬鹿にされたかと思ったスキ太郎はクロトに怒鳴りながら眼鏡を定位置に収めた瞬間

、 さっきまでのイケメンボイスが一瞬でなくなり最初のオタク風のしゃべりに戻った。

「いやいや、別に俺はスキさんの推しについてバカにしたわけじゃなくて……ってまぁそれについては後にして、目的の子はいたか?」

唐突に本題に戻るクロト。まだ言い足りなさそうなスキ太郎だったがブロマイドのためだと思いぐっと堪え話始め、背中に抱えていた何かを前に抱えなおし二人に見せた。

「ふー。そうでござったな。ほらこの通り、ちゃんと目的の子がいたでござるよ!」

「「いや赤いな!」」

二人揃ってツッコんでしまった。なぜならその目的の子も前進赤くまるで殺人事件にあったかのような姿だったからだ。正直どこがどこなのか判別できないほどだったからだ。

「……あの、大丈夫なんですかその子。ちゃんと生きていますよね?白目剥いてますけど、本当に大丈夫ですよね!?」

ピクリとも動かない子供に凄く焦ったように心配するサキ。焦りすぎて半泣きになってしまった。

「デュフデュフ安心するでありますサキ殿。ちゃ~んと生きてるでありますよ。ただちょっと怖いものを見たせいで気絶しているだけでありますよ。」

その言葉を聞いて一安心し胸を撫で下ろした。だが同時に怖いものとはきっとこの人だろうと思ったがあえて口にはしないサキだった。


 気づけば辺りは赤く夕焼けが街を染める時間になっていた。三人は無事子供を何でも屋に連れ帰り、母親と再会させることが出来た。その頃には気絶していた子供もすっかり目を覚ましており、何でも屋へ向かう道中はサキの背中でぐっすり眠っていた。そして何でも屋に到着し、母親の腕の中に飛び込み大泣きしながらしがみついた……全身ケチャップまみれのまま。夕日のせいで余計に赤みが強調されてしまい、感動シーンのはずが余計にシュールな絵になってしまった……。

 その後母親と子供はクロトとサキ、そしてスキ太郎に精一杯頭を下げ感謝の気持ちを伝えた後帰路につき無事一件落着……かと思われたが当然。

「どうでありますかクロし。あの勝負、拙者の勝ちでありますな、デュフ……デュフデュフ。」

ケチャップまみれのまま、不敵な笑みで笑うスキ太郎。彼もまた夕日の赤がさらに彼を染め上げ、 もはや“赤い影”と化してどこにいるのかすら分からない。そんなスキ太郎にクロトは静かに言い放った。

「勝負? ふっ、何を言っているんだスキよ。お前もすでに俺と同様勝負に負けているんだよ!」

突然の宣言に、スキ太郎は目を見開いた。

「……は?何を言っているでありますかクロし。 拙者は目的の子を見つけ、連れ帰り、母親に返したでありますよ?  つまり拙者の勝ちでありますよね?」

「いや……。確かに見つけたのは君かもしれないが……。最後に子供を護っていたのは誰だったかな?」

「それは拙者……いや!」

突然頭にピキーンと言った某名探偵に出てくるような閃きが脳裏によぎった。

「……ま、まさか。」

「そう、最後母親に渡したのは……サキってことだよ!!」

突然辺りが裁判所のような場所に成り代わり、異議あり!と言いそうな人の青いスーツを身に纏いカッコよくビシィッと人差し指を突きつけた。それを聞いたスキ太郎は体に電撃が走り膝から崩れ「ま、負けた」とあまりにも潔い敗北宣言。クロトは両手を腰に当て、 勝ち誇ったように胸を張った。

「ふっ……真実はいつもひとつ、ってどっかのじっちゃんが言っていた気がするぜ。」

もうめちゃくちゃな現状にツッコむことを諦めたサキは、頭を抱え深くため息を吐くのだった……。

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