2-5,癖が強い人って、その周りにも癖が強い人が来るって本当かな!?
ライブが終了し、会場からは熱気を残したまま観客たちが続々と外へ流れ出てくるその中に、ひときわ目立つ男の姿があった。
「デュフフ、今日もとても素晴らしかったでありますな。さぁ、早く帰って過去のライブ映像でも見るであります……ほぇ?」
ライブ会場から出てきた男は満足そうな笑みで帰宅モードに入っていた男の視界に、見に覚えがある人物を見て男は足を止めた。
「おや、これはこれはクロしではありませぬか。いやーまさかこんな所で会うとは偶然でありますな。……まさか!遂にクロしもヨウ殿の良さに築いたのでありますか!? でしたら今から帰ってヨウ殿のライブを一緒に……。」
男はクロトに近づき、 まるで機関銃のような勢いでまくしたててきた。サキはその勢いに驚いたが、 それ以上に――その男の見た目に度肝を抜かれた。なぜならその男性は、目にはぐるぐるした眼鏡をかけ、服はチェック柄のシャツ、ズボンは色落ちしたジーパンを履いているという”いつの時代のオタク”かと言わんばかりの見た目であり。なおかつ左腕にはなぜか包帯グルグル巻きという謎の中二病要素も含まれているという、キャラ設定がこれでもかと言わんばかりに盛りに盛られているからだ……。
サキはしばらく放心状態に陥ったが、 なんとか冷静さを取り戻し、クロトに声をかけた。
「……あの、クロトさん。この人は一体?」
「あ、そうだったな。じゃあ改めて紹介するな。こいつの名は”スキ太郎”。一応俺達何でも屋で一緒に働くもう一人のメンバーだ。」
「スキ……太郎?」
初めて会う人で尚且つ迷子の子を探す故で必要な人と言うことでどういう人なのかと緊張していたというのに、その相手がまさか何でも屋のメンバーであり……見た目がその……独特な人で驚きを隠せないでいると言うのに名前までもが特徴的過ぎて、迷走してしまったため、クロトに確認してみることにした。
「あの、クロトさん。本当にこの人なんですか? なんだか凄く胡散臭そうな人なんですが……。」
「ん? まぁ確かに見た目とか名前とか凄く胡散臭く見えるかもしれないが……実力だけは確かだから。」
クロトは自信満々な顔で大丈夫だと言い放つ、その顔はまさに主人公の風格だった。クロトとサキが小声でこそこそ話ているとスキがクロトの隣にいる女性を見てとんでもない発言をするのだった。
「そういえば、クロし。隣にいる御仁はどういうお方で? は、まさか!ついにクロしにも彼女が出来たのでありますか!?おめでとうでござる!」
「!? ち、違いますよ! 私はクロトさんの彼女とかではなくてですね……。」
「そうだぞスキ。サキは決して俺の彼女とかじゃないぞ……。」
急に彼女とか言われ焦った様子で弁解しようとするサキに、クロトも違うと即座に返答する。それを聞いたサキも訂正してくれるのだろうとホッとしていると……。
「彼女じゃなく……嫁だ!」
「「「違うでしょ!!!」」」
目をキラリとさせ真剣な眼差しで発言するクロトに即座に反応し、サキの激しめのツッコミが火を噴きクロトの頬に炸裂。クロトの身体は見事な放物線を描き、ライブ会場前の植え込みへと突っ込んだ。上半身だけが植え込みに刺さり、下半身だけが魚みたいに魚のようにピクピクと跳ねている。
サキは冷静にスキの方に振り返り自己紹介を始めた。
「あの、初めまして。私サキって言います。今日から何でも屋で働くことになりました。よろしくお願いします。」
「あー、これはこれはご丁寧に、よろしくでござる。それでそのサキ殿達がどのような要件で拙者に会いにきたでござるか?」
「あ、そうでした。実は……。」
サキ達はなぜスキに会いに来たのか説明しだした。スキ太郎は左手を眼鏡のテンプルに添え、 ぐいっと上へ押し上げながら真剣な顔で聞いていた。
「なるほど。そうだったでござるか……。」
「だから、スキさんの力を貸して……。」
「断るでござる!!」
「……へ!?」
あまりにも即答すぎて、 サキの思考が一瞬でフリーズしてしまった。
「あの、えっと……今……なんて……?」
「だからお断わりするでござる。拙者これから自宅に帰り、今回入手した戦利品を眺めながら過去のライブ映像を見なければならい故、忙しいのであります。」
「ですが……!!」
「無駄だって。」
サキが必死に食い下がろうとしたその瞬間、先ほど茂みに突っ込んだクロトが頭に枝が突き刺さり血が流れた状態で話に割り込んだ。
「そいつは基本自分の事が優先だから、他人がどうなろうとどうだっていい奴なんだよ。」
「じゃあ、どうすれば……。」
サキが何か言いかけたその時、クロトは懐から何かを取り出しスキに話しかけその何かを見せつけた。
「おい、スキ。これを見ろ!」
「なんですかクロし?……って、それは!」
「そうだ。ヨウ☆ちゃんのサイン入りブロマイド。それも非売品だ。もしこれが欲しいなら……分かるな!」
クロトはニヤリと口角を上げ、 まるで闇商品のような悪い顔つきで言い放つ。スキは物凄い欲しそうな目つきで両手を前に突き出し指をクネクネとしたかと思うと、すぐに手を引っ込め苦虫を噛みしめたかのような顔させ目からも流血させるほど悩んだりと情緒不安定になっていた。サキはその光景をみて完全に引いていた。
しばらくすると、勘弁したかのように一気に力が抜け顔を下に向け……。
「……はぁ。分かったでござる。手伝う、手伝うであります。」
無事に交渉が進み、勝利したかのような満足げな笑みを浮かべるクロト。そしてクロトは手に持っていたブロマイドを懐にしまい込み、今度は別の物を取り出した。それは行方不明になった子が最後に持っていた、”小さな青いキーホルダー”だった。
「キーホルダー?あの、クロトさんこれで一体何を?」
「まぁ見てれば分かるって。」
クロトはそのキーホルダーをスキに手渡し、それを受け取ったスキはそのキーホルダーをしばらく眺め少しすると鼻に近づけスン……スン…… と嗅ぎ始めた。それを見たサキは驚きスキを止めようとしたがクロトが手でガードし大丈夫と言わんばかりで顔を縦に振った。
しらばくしてキーホルダーの匂いを嗅いだスキは、今度は顔を上に向け空気を嗅ぎだした。そして少しするとクロト達の方に顔を向け……。
「……こっち。」
何かを感じ取ったかのように歩きだしたスキ。サキは何が何だか分からないでいたがクロトはただスキの背中を追い、 サキも慌ててその後に続いた。




