2-4,人の趣味、性癖って色々あるよね!?
路地裏を出た二人は、人通りが多い大通りを歩いていたが二人は未だに先ほどの写真についてまだ揉め続けていた。
「クロトさん!さっきの写真消して下さい!」
「断る、断固として断る!!」
胸を張あげ、鉄のように硬い意志でサキの訴えを張りのける。その反応に、頬を膨らませ怒るサキだったがしばらくして怒る事すら馬鹿バカしく思えたサキは、ため息をつきながら肩を落とした。
「……それでクロトさん。私たちは今は何処に向かっているんですか?」
「ん?さぁ、何処だろうな。」
半ば諦め、今どこに向かっているかクロトに問いかけると、クロトは手を頭の後ろに回し交差するように手を重ね気の抜ける返事をした。それを聞いたサキは足を止め、ジトーとした目でクロトを睨みつける。背後から異様な視線を感じとったクロトは振り返りとサキの不信感たっぷりの顔を見えた。
「なんだ、その不快感たっぷりの目は……あれだぞ、そんな目で俺を見ると興奮するぞ。」
クロトのヤバい性癖を聞いたサキは、表情はそのままに無言のままスッ……と後ろに下がり始めた。
「……まぁこの際、クロトさんの性癖についてはその辺に捨てといて。私は今、行方不明になっている子を探さないといけないんです!だからクロトさんに構っている暇はないんです!」
両手を前に突き出し、 まるで“何か”をつまみ上げているかのような仕草をした。その見えない”何か”を思い切り振りかぶり――
ブンッ!!
と、全力でその辺に放り投げた。
「あー!俺の性癖ー!」
クロトは分けの分からない事を言いながら何かを掴もうとしたが届かず、その”何か”は勢いよくどこかに飛んでいった……。クロトは膝から崩れ、“何か大切なものを失った男”のように肩を震わせていた。
そんなクロトをよそ目に、サキは背を向け改めて依頼者の子供を探しに行こうといた……がその時。
「……サキよ。どこに行こうというのだね。」
背後から、妙に重々しい声が響いた。振り返ると、まだ膝をついたまま、地面に視線を落とし“絶望ポーズ”のままでしゃべりかけてくるクロトだった。……というか、ずっとその姿勢のままでいて恥ずかしくないのだろうか。
「どこにって、決まってるじゃないですか! 子供を探しにですよ!」
サキは勢いよく振り返り、 地面に膝をついたままのクロトに向かって言い放った。するとクロトは……。
「探す?一体どこを? こんなデッカイ街でたった一人の迷子の子猫ちゃんを探すって……それは流石に無謀にもほどがないか?」
地面に向けて語りかけるように呟いたクロトの言葉に、 サキはピタッと動きを止めた。
「……っ」
図星をつかれたように、 ほんの一瞬だけ目が泳ぐ。確かに、この広い街でたった一人の子供を探すのは―― 無謀と言われても仕方がないと思った……それでも。サキは唇を噛み、 クロトに向き直って絞り出すように言った。
「……じゃあ……じゃあどうすればいいって言うんですか。教えて下さいよ!」
凄く悲しそうな目で今にも泣きだしそうな顔でクロトに訴えかけた。おそらく、サキ自身も最近同じような経験をしたため、一刻も早く見つけて上げたいという気持ちでいっぱいなのだろう。そんな表情を感じ取ったクロトはゆっくりと立ち上がり、さっきまでの情緒迷子が嘘のように真っ直ぐな声で言った。
「ま、こんなでっけぇ街でたった一人の子猫を探すなんて事は、砂漠で一粒の砂を探すようなもの……。
だから、迷子の子猫を探すには、犬のおまわりさんの出番ってわけ。」
クロトはどや顔で胸を張り、 相変わらず意味不明な理論を披露した。サキはその言葉の意味が理解できず口をぽかんと開け思考を巡らせていると、クロトは再び歩き始め、サキは我に返り急いでクロトを追いかけた。
「みんなー!今日も来てくれて、ありがとー!」
二人は薄暗くそこそこ広いライブ会場に来ていた。会場内はすでに熱気でむんむんしており、席はどこも満席で多くのファンがライブ会場に来ていた。ライブが始まるとステージにスポットライトが当たり、 中央に立つアイドルがキラキラと輝きながら手を振った。その瞬間――
「「うおおおおおおおおお!!!」」
観客席のファンたちが一斉に立ち上がり、 割れんばかりの歓声を上がった。その光景を一番後ろで見ていたサキは目が完全に点になってしまい、どういう状況なのか分からず、再び迷走に入ってしまった。
「……あの、クロトさん。ここって……一体?」
「ん、ここか? ここは最近、絶賛売り出し中のアイドル……半人半妖の”ヨウ☆ちゃん”のライブが見られる会場だが、どうした?」
「いや、そういうことを聞きたいんじゃなくてですね……どうして私たちがここに来たのかっていう話であってですね。」
会場の熱気やテンション、なぜここにいるのか?などという色々な事が一気に起こりすぎて思考がついていけず若干なりのパニック状態に陥っていたサキだったが、冷静にクロトに問いかけ回答をもらおうとしたが、欲しい答えではなく再びクロトに話しかけようとした時、前方の席からひときわ大きな歓声が上がった。
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
その声にサキはびくっと肩を震わせ、 反射的にそちらへ顔を向けると、そこには――。
両手にペンライトを握りしめ、 背中にヨウ☆ちゃんの巨大プリントが入った半被を羽織った男性が、 キレッキレのオタクダンスを披露していた。腕は風を切り、 足さばきはもはや武術の域。 ペンライトは残像を描き、 周囲の観客が思わず距離を取るほどの迫力。
サキは口を半開きにしたまま、 完全に固まっていると。
「……な、なんですかあれ……?」
「やっぱりここにいたか……あいつ。」
クロトがボソッと呟き、 呆れた目でキレッキレのオタクダンスを披露する男性を睨みつけた。
「え?あいつって……まさか!?」
「そう、あいつが俺達が探していた”犬のおまわりさん”で。ついでに言うとあいつがうちの何でも屋で働くもう一人のメンバーだ。」
「……え?」




