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5-3,あのウサギ出来るぞ!?

 物凄いスピードで路地裏を縦横無尽に逃げ回るヴォーパルバニー。障害物があれば軽々と避け、曲がり角では壁を蹴って方向転換するという、物凄い俊敏性を見せつけていた。

「待てやこのくそウサギィィィィ!!」

鬼の形相のクロトが、負けじとヴォーパルバニーを追い続ける。その後ろをスキ太郎、さらにその後ろをサキが必死に追いかけていた。

「……はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと待ってくださいよ……」

サキは手を膝につき、肩で息をしながら額から汗を流している。

「情けないでござるよサキ殿。この程度で弱音を吐くとは」

スキ太郎は涼しい顔で走り続けていた。

「そ、そんなこと言われましても……。というか逆にどうしてスキさんはそんなに余裕そうなんですか?」

サキは深呼吸をしながら素朴な疑問をぶつける。スキ太郎は鼻を高くし、どや顔で語り始めた。

「ふふ、それは当然でござるよ。拙者は常に戦争しているでござるからな」

「せ、戦争!?」

サキは驚き、思わず唾を飲み込む。

「そ、それって一体……」

「ふ、それはでござるな……欲しい物を手に入れるために誰よりも速く走る脚力と持久力!

そして人混みをかき分けて前へ進むフィジカル!それら全て、オタクとして生きていくために必要な力でござるよ(※あくまで個人の感想です)」

スキ太郎の背中からは、どこかで見たことのある逆ピラミッドの建物や、全面コンクリートの広場に何千もの人が押し寄せる光景が見えた気がした。その異常な熱量についていけず、サキは遠い目をするしかなかった。二人がオタク談義をしている間、クロトは――。

「はぁ、はぁ……とうとう追い詰めたぞ、このくそウサギ」

ヴォーパルバニーを四方を壁に囲まれた袋小路へと追い詰めていた。ここまで全力で追っていたクロトの目は、完全に獲物を狩る狼の目になっている。観念したのか、ヴォーパルバニーはその場でじっと動かない。サキとスキ太郎が慌てて駆けつけたが、時すでに遅し。クロトは依頼対象(ヴォーパルバニー)へと飛びかかっていた。

「く、クロトさん!!」

だがヴォーパルバニーは、まるで“待ってました”と言わんばかりに目を光らせながら跳ね上がり、クロトの頭に飛び乗ると――思いっきり踏み台にした。

思いっきり踏み台にした。

「お、俺を踏み台だと!!」

クロトは顔面から地面に突っ込み、そのまま壁に激突。ヴォーパルバニーは壁に設置された配管や看板を足場にしながら、ビルの屋上まで軽々と跳び上がった。そして、まるでクロトをあざ笑うかのように一度だけこちらを見下ろし、そのまま逃走していった。クロトの中で、何かがブチッと切れた。

「あーくそー!!

あのクソウサギ絶対捕まえてグツグツとウサギ鍋にしてやらぁぁぁ!!」

「だから食べようとしないで!!」

サキの悲鳴が路地裏に響き渡った。


 その後も三人は、全力で逃げ回るヴォーパルバニーを捕まえようとした……がことごとく失敗。時には飛び蹴りをくらうクロトや、罠に引っ掛かり頭から生ごみをブチ当てられるスキ太郎、何処からか出てきたのか分からないスライムを全身に浴び、ちょっとムホホな展開になるサキなど、完全にヴォーパルバニーの手のひらの上で踊らされている三人なのであった……。

「「「……」」」

完全に弄ばれていると感じた三人は暗い表情になってしまい、しばらく放心状態になってしまう。そんな中、突然――スキ太郎から不気味な笑い声が漏れた。

「……ふふふ。初めてでござるよ……拙者をここまでコケにしたおバカさんは……」

「す、スキさん……?」

サキが恐る恐る振り返ると、スキ太郎はゆっくりと右手を顔の横へ持ち上げ、自分の眼鏡のフレームをつまんだ。その仕草は、どこかで見たことのある“覚醒前のポーズ”。そして――


カチッ。


眼鏡を外した。

「上等だコラァァァ!!この借り、十倍にして返してやらぁぁぁぁ!!」

煽り耐性が異常に高い依頼対象に、ついにスキ太郎がブチ切れてしまった。雄たけびを上げながら、ヴォーパルバニーへ一直線に飛びかかる……が、気づけばスキ太郎の足は宙に浮いていた。

「……ん、え!?」

下を見ると、いつの間にかマンホールの蓋が開いており、その真上にスキ太郎が立っていた形になっていた。スキ太郎は必死に足をバタバタさせたが、むなしく空を切るだけでそのまま奈落へと落下していった。

「ぎゃあああああああああああ!!」

「スキさぁぁぁん!」

サキの悲鳴が路地裏に響き渡った。そんな中、突然クロトが不気味な笑い声をしながら立ち上がった。

「……ふふふ、初めてですよ……私をここまでコケにしたおバカさんは……」

「く、クロトさん?」

突然、どこかで聞いたことのあるセリフを吐き出したかと思うと目をギラリと輝かせ闘志がメラメラと燃え上がっていた。

「上等だこら、そっちがそういう手で来るなら。こっちだってもう容赦はしねぇ。例えどんな手を使おうが絶対に捕まえてやるぅぅ!!」

いつにもなく気合が入っているクロトに少し引き気味になるサキとスキ太郎。すると、クロトは懐からスマホを取り出し何処かに電話し始める。

「あー、もしもし。……例の物を……そう、大至急用意してくれ、それじゃ」


ブチ……


「えっと、クロトさん? 一体誰と電話を?」

突然電話したクロトに疑問を思たサキは、恐る恐る話しかけてみたが、急にクロトがサキの方に目をギラリとさせ振り返った。その眼には何やら邪な気配が漂っており、徐々にサキの方へと近づいて行った。嫌な予感がしたサキも少しづつ後ろへと後退しながら涙目になりながらクロトに話しかけてが無反応。走行している間に壁まで追い詰められてしまった。

「えっと、あのクロトさん? どうして少しづつこっちに来るんですか? あの聞いてますか。 あの……きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

うす暗い路地裏にて、女の子の悲鳴がこだました。


 三人の追ってから巻いたヴォーパルバニーは、ゴミ箱の上でまるでネコかと勘違いする間のように休憩していた……その時。


コツコツ!


何処からか固い靴で歩く音が聞こえた。その音に反応したヴォーパルバニーは音のした方へと顔を向けた。するとそこにはいたのは、バニーガールの恰好をしたサキだった……!?

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