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5-2,綺麗なバラにはスカイアッパー!?

 壊れた残骸(テーブル)を片付けたあと、少し冷静になった依頼人がようやく口を開いた。

「す、すみません。こ、壊してしまい……」

「いえ、大丈夫ですよ」

テーブルを壊してしまったことに対し罪悪感を抱いてしまい、すぐさまサキがフォローに入る。

「じ、自分……他の人と、話すの……苦手、で……上手く……言葉がでな、く……」

依頼人はゆっくりした口調で、ところどころ言葉が途切れ、非常に聞き取りにくい。それでもクロトたちは黙って耳を傾けた。

依頼人の話をまとめると――

ここ最近、家に帰ってこない“友人”を探してほしいという依頼だった。

「なるほど。つまり行方不明の友人を探せばいいってことですな……。分かりました、その依頼、うちが受けましょう」

クロトは即答した。顔は見えないが、依頼人はほっとしたように肩を落とした。依頼人は腰の小さなポーチを開け、一枚の写真を差し出した。クロトが受け取り、サキとスキ太郎も覗き込む。

そこに写っていたのは――白くてまん丸の、可愛らしいウサギ!?

クロトとスキ太郎は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まってしまい、サキは「どこかで見たような……」という表情で写真を見つめている。

「……えっと、友人というのは、この可愛らしいウサギちゃんのことでしょうか?」

依頼人は静かに頷いた。

クロトは一瞬だけ呆れた顔をしたが、すでに依頼を受けてしまった以上、断るわけにもいかない。深いため息をつきながら、行方不明の友人――つまりペットの捜索を開始することにした。

(まぁ、うちには優秀な探知犬がいるし、大丈夫か)

この時クロトは楽観的に考えていた。だが、この後まさかあんな事態になるとは――この時の三人はまだ知る由もなかった。


街へ繰り出した三人は、探知犬――スキ太郎にウサギの匂いを嗅がせ、その匂いのする方へと進んでいた。

「うーん……」

「どうしたサキ? そんな“うーんうーん”項垂れて。トイレでも我慢してるのか?」

「違いますよ! というか女の子にそんなこと言わないでください!!」

デリケートな話題に土足で踏み込むクロトに、サキは顔を真っ赤にして怒鳴った。

「そうじゃなくて、このウサギ……どこかで見たことがある気がして」

「どこかって、どこで?」

「それが思い出せないんです」

サキは写真を見ながら歩き続け――そのまま“ながらスマホ歩き”のような状態になっていと、すると突然、スキ太郎がぴたりと足を止めた。

「うわっ!」

サキは避けきれず、スキ太郎の背中に激突した。

(※ながらスマホは大変危険行為なので止めましょう!!)

「いた……もう急に止まらないでくださいよ……」

サキが鼻を押さえながら文句を言うと、スキ太郎は真剣な表情で前を指差した。

「見つけたでござる」

その言葉に、クロトとサキはスキ太郎の後ろからひょっこり顔を出し、前方を覗き込む。そこには――”一匹の白くてまん丸のウサギ”が、ぽつんと座っていた。サキは手に持っている写真と見比べる。

「……間違いない。今回の依頼対象です」

「おぉ、もう見つけたのか。流石だな! それじゃあさっさと捕まえて今回の(依頼)を終わらせるか! よーしよし、怖くないよー」

まるでどこぞのモブキャラのような発言をした主人公(クロト)は、依頼対象(ウサギ)の方へ少しずつ近づいていった。その奇妙な光景を見ながらも、サキはまだ“例のウサギ”について考え続けていた。

(えっと、確か……あのウサギ……!?)

頭の中を電流が走り、ようやく記憶が繋がったサキは、慌てて左手を伸ばしクロトを止めようとした――が。

「ま、待ってクロトさん! そのウサギにむやみに近づいちゃいけません!!」

気づいた時には、クロトはすでにウサギの目の前まで来ていた。クロトがそーっと手を伸ばした、その瞬間、ウサギの目の色が変わり、次の瞬間――


ヒュッ!


ウサギがクロトに向かって飛び跳ね、小さな拳がクロトの顎にアッパーカット!!


ドゴォッ!!


見事なクリーンヒットを食らったクロトは、背中から地面に叩きつけられた。


技を繰り出したウサギは、そのままバク宙しながら後ろへ下がり、綺麗に二本足で着地。そして――まさかのファイティングポーズ。

「な、何でござるか? 何が起こったでござるか?」

スキ太郎は目を丸くし、サキはその場で頭を抱えた。

「あー、遅かったですか……」

「どういうことでござるかサキ殿?」

「えっとですね、私もさっき思い出したんですけど……あのウサギ、ただのウサギじゃなくて、“ヴォーパルバニー”っていう、極めて珍しいウサギなんです」

サキはヴォーパルバニーについて説明し始めた。


ヴォーパルバニーとは――

見た目はどこにでもいる可愛らしいウサギで、普段は大人しい。だが、自分に害を与える存在が現れた瞬間、性格が一変、非常に好戦的になり、相手を容赦なく攻撃する。小さなウサギだからと甘く見ていると痛い目に遭い、名前の由来でもある“ヴォーパル”に恥じぬ鋭い攻撃を繰り出す、恐ろしいウサギである。


「……だから、むやみに近づくのは危け――」

 サキが言い終わる前に、地面に倒れていたクロトがガバッと起き上がった。

「こんの、くそウサギが……よくもやってくれたな!!」

「あ、ちょ、クロトさん!!」

サキが止める間もなく、クロトはヴォーパルバニーに突撃した。その瞬間、視界がふっと暗くなり、どこかで見たことのある“バトル画面”が目の前に広がった。


いらいたいしょうの ヴォーパルバニーが あらわれた!


  ーーーーーーーーーー

 |→たたかう  どうぐ|

 |          |

 | なかま   にげる|

  ーーーーーーーーーー


サキ「なんか突然始まったんですけど!? これ大丈夫なんですか!?」

スキ太郎「まぁ、なるようになるでござるよ」


  ーーーーーーーーーーーーーー

 |→たいあたり  ひっかく   |

 |              |

 | はねる   スカイアッパー|

  ーーーーーーーーーーーーーー

クロトのたいあたり!

ヴォーパルバニーはひらりと避けた……。

ヴォーパルバニーのインファイト!

こうかはばつぐん!!

クロトはたおれた……めのまえがまっくらになった。


ヴォーパルバニーに突撃したクロトは、あっけなく返り討ちに遭い、“おりん”が鳴り響きそうな情けないポーズで倒れ込んだ。

「一体何がしたかったんですか、クロトさんは!?」

サキが思わず大声でツッコむ。その声に驚いたのか、ヴォーパルバニーはビクッと跳ね、クロトたちとは逆方向へ猛ダッシュで逃げていった。

「あ、逃げたでござる!!」

スキ太郎は冷静に状況を報告し、その声を聞いたクロトは、地面に倒れたままピクリと震え――次の瞬間、勢いよく立ち上がった。

「待てやコラァァァ!! 捕まえてシチューにしてやらぁぁぁぁ!!」

鬼のような形相で全力疾走するクロト。

「ちょ、待ってくださいクロトさん!!

それ依頼対象だから、食べちゃダメですよぉぉ!!」

サキは慌ててクロトの後を追い、スキ太郎は「やれやれ」と言わんばかりに肩をすくめながら二人の後を追った。

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