帝と平凡な恋 番外編
番外編です!
「橙さま!」
龍布が名前を呼ぶ。
思い瞼をゆっくり開く。
「なんだよ?龍布」
眩しい光と共に龍布の顔が見える。
龍布は毛布をかぶっている橙を軽く睨んだ。
「なんだよ、ではなく朝ですよ」
どうやら龍布が直接起こしに来たみたいだ。
「休みが欲しい」
今は春で朝はまだ少し寒い。
「起きたくない、眠い」
「帝に私情は関係ありませんよ」
龍布が厳しいことを言う。
橙は悲しげに眉を顰めた。
皇帝は年中無休だ。
まだ、若いのに可哀想に思う。
だが、同情だけで龍布は甘やかさない。
「お腹すいたなぁ」
ぐぅーっとお腹がなる。
昨日は早めに夕餉を食べたのでお腹がすいた。
「だったら早く起きてご飯を食べてください」
「う〜ん」
目をこすりながら体を起こす。
子供だな…。
見た目は年相応なのに中身はだいぶ幼稚だ。
「着替えるから出て行って」
追い払うように手を振る。
一応羞恥心というものはあるみたいだ。
「とか言いながら、逃げ出さないでくださいね」
「そんなに疑うなら、もう出て行かなくていいから」
橙は諦めたように箪笥から服を取り出す。
いつもの服だが、平民から見れば一生着れない物だと言うだろう。
絹製の濃い青緑色の漢服はとても繊細で上品な作りと言えるだろう。
「何を人の服ガン見してるんだ?」
「い、いえ」
寝間着を脱ぎ始めた橙をなんとなしに眺めた。
子供っぽく見えて、鍛えてるなぁ。
龍布が関心を込めた目線を送っているとその視線に気づいた橙は体を隠すように体の前で腕を交差させて、体を捻った。
「龍布、そのいやらしい視線やめて。いかがわしい物が好きなのは知ってるけど、それは人に迷惑をかけないように…」
「すいませんでした!もう、後ろ向いてますから」
龍布は両手を上げて後ろを向く。
着替えするのに時間がかかる。
と言っても原因の一つとしては自分の視線なので何も言わない。
「出来た」
そんな声が背後から聞こえたので振り向くと前髪をかきあげた橙が立っていた。
その姿は大人びていて少し哀愁漂うアンニュイな表情はさらにその雰囲気を醸し出していた。
「なんか、怖いですね」
「何がだよ!?」
怖いと言われて少し驚いている。
「なんか、纏うオーラ的なものが怖いです」
さすがは、美しいと昔から国中で言われ続けた容姿の血を受け継ぐお方。
そういえば、最初の面接の際は緊張であんまり橙の顔の事を気にしていなかった気がする。
「よく分かんないけど、朝飯食いに行くぞ」
橙はなんのことだか、と首を傾げた。
「あ、はい」
ぼーっとしていた龍布は慌てて橙の後に着いて行った。
ありがとうございました。
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