転生直後
目を覚ますと真っ暗闇だった。
何か布みたいなのに包まれているような感じだ。
ん?
あれ?ここ病室じゃない?
どこだ?
暗いなぁ。なんにも見えない。
起き上がりたいけど体が思うように動かない。
痛みは無いけど、体がほんとに動かない。
なんでだろ?
体を動かそうともがいてみる。
あっ、手は動く。でも、あんまり感覚がない?
ジタバタしてみる。
その拍子に、周りが見えるようになった。
知らない天井だ。
少なくとも入院していた病室では無い。
「……は、…………そこの……ある……。」
誰かの話し声が聞こえる!
すみませーん!
「んぁ、いぁーー!」
声も上手く出せない!?
なんか今、普段の数倍声が高かくなかった!?
病状、悪化した!?
あれからどうなったんだろう私。
急に病状が悪化して、意識も朦朧として。
お母さんがナースコール押して、先生たちが来て。
それから…………。
それから……。
なんも覚えてないや。
緊急手術とかしたのかな。
お母さん達はどこにいるんだろう。
「おや、目が覚めたようですね。」
「あらあら、大変。ご飯の時間かしら?」
あっ、看護師さん達かな?
神父の服を着た銀髪の男の人と、
質素なワンピースを着た女の人が私を覗き込んでいる。
明らかに看護師では無い。
というかデカ!?
いや、私が小さいのか?
手をジタバタと動かす。
視界に映る小さな手は赤ちゃんみたいにムッチムチで
とっても短かかった。
ええぇぇぇぇぇぇぇええ!?!?
「うぃやぁぁぁぁぁ!?」
「すっごい、おなかが減ってるのねぇ。」
い、いや違うんです。
そんなつもりじゃなかったんです。
「私は仕事があるので。よろしくお願いします。」
「えぇ、任せてちょうだい。」
神父服の男性は部屋から出ていった。
どうしよう、おなか減っているわけじゃないのに。
「よしよーし。ミルクのお時間ですよー。」
質素なワンピースを着た、女の人に抱き上げられる。
ボタンを外して、服をズラして右のおっぱいをボロンと私の口の前に持ってきた。
あっ、あっ、えっ、大丈夫です!いらないです!
「ほら、ごはんですよー。」
赤ちゃんだから、反射的に咥えちゃうぅぅぅぅ。
そのまま、母乳をチュウチュウと勢いよく
吸ってしまった。
「あらぁ、お腹減ってたのねぇ。」
女の人がくすくすと笑う。
恥ずかしい。泣きたい。
別に、バカにしてる訳では無いのだろうけど
何故かはずがしい。
授乳は生命維持に必要な事だとわかってはいるが、
なんだか、人としての尊厳を失ってるような気がしてしまう。
飲み終わると女の人は、背中をトントンと叩きながら
左右に揺れる。
「ゲェップ」
死ぬほどでかいゲップが出た。
「おっきいのが出たわねぇー。」
もうこれ以上恥ずかしいことはない。
恥に恥の上塗りをしてる。
恥の新記録更新しまくり。
もうヤダ。
おうち帰りたい。お母さんに会いたい。
そう考え始めた瞬間
感情が止まらなくなって、涙がどんどん溢れてくる。
「うあぁぁぁぁん」
泣きやみたいのに、全然止まらないぃぃ。
「あら、ご飯食べたばっかりなのにご機嫌斜めねぇ。
子守唄を歌ってあげるからねんねしましょうね?」
心地よい温かさと、トントンと背中を叩く音にに段々と意識が遠くなってきた。
お母さん……。
心の中で呟いた言葉が子守唄に溶けていく。
寝ちゃ……だめだ……起きて…なきゃ…。