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Episode29/2.暗転(後)

 そこに駆け上がってきたダークーー女性異能力者と対峙したかと思えば、六花が直ぐに拳で腹部を二回突く。ダークの体に二つの孔が空いた。


 一瞬で死体の完成だ。


「殺しに躊躇いは不要。殺せと言われたら殺す。殺すなと言われたら殺さない。それが絶対よ?」

「わかってます……けど、僕は愛のある我が家の一員じゃありません」


 別に躊躇いや情けがあるわけじゃない。

 すぐ先日まで一般市民だった僕は、極悪犯罪組織に馴染んでいる人とは違う。

 殺しに抵抗感を覚えないわけがない!


 四階に降りると、三階から陽山が上がってきて合流した。


「刀子さんたちはどこかしら?」


 舞香は颯爽と現れた陽山に対して、疑問を投げ掛ける。


「僕は月影日氷子の身の安全のみが目的だ。彼女らはまだ、下で殺戮をつづけているんじゃないかな?」


 四階通路を進むと、意外とアッサリ403号室前に辿り着いた。

 しかし、同時に四階通路に数人の男女が現れた。

 全員、敵対関係ーーリベリオンズの構成員だろう。


「豊花と陽山は人質の救出を優先して! アレは私たちで始末するから!」


 と、舞香は転移し相手との距離を一気に詰める。

 六花は舞香に追随するように敵へと駆け出した。

 陽山と二人きり……なんて居心地が悪いんだ。


 そう思っていたが、すぐに二人きりではなくなった。

 陽山が強く蹴りを穿ち、403号室の扉を蹴り開けたからだ。


「な!? テメーら! どうしてここが!?」

「ふむぅ、某が思うに探知型の異能力者がいると思うのだが、メロディはどう思う?」

「知るかよウゼーな!」


 室内には、メロディとロックという予め顔写真で確認していたリベリオンズの構成員二人と、おそらく非・異能力者の人質の一番近くにいる男。


 そして、メロディとロックの背後とも、人質の傍とも言える場所に佇む、刀子さんの弟子の殺し屋ーー静夜の姿。

 計四人の男たちが居た。


 ベッド上で縛られている瑠璃、結愛、月影さん、そして目を布で塞がれている森山の四人の人質が固まるように座らされている。


 瑠璃は僕の姿を見てまぶたを見開き、狼狽を表情に浮かべる。

 どうして豊花が此処に居るのかーー信じられないといった瞳で僕を見る。


「クソがッ!」


 メロディの異能力は、たしか筋肉を極端に膨張させる身体干渉型の異能力者だ。

 ロックは全身を岩の様に固める異能力者ーー。


 少しでも抵抗できそうなのはーー。

 僕はメロディに切りかかる。


「ッテーな!? こっちには人質がいんだぞ? 手出しした瞬間、人質を殺すからな!? まずはテメーからミンチにしてヤる!」


 メロディは怒りでがなり声を上げ、筋肉を膨張し始めた。

 人質を盾にされるがーー僕は気にせず刃をメロディに当て引く。

 辺りに数滴の血が散らばる。


「人質なんてどーでもいいのかああッ!?」


 メロディは僕を殴り付けようとする。


 ーーだって、人質の見張り役は、もう……。


 寸でのところで躱し、再びメロディにナイフを振る。

 ようやくナイフの扱いに慣れてきた。


 ロックは陽山を蹴り飛ばすが、両手でガードし威力を最小限に抑えていた。


 メロディは異様なほど膨張した筋肉を天高く掲げ、拳を振り下ろし叩き潰そうとしてくる。いや、していた。


「かはッ!? あッ? はっ、はっ、っ?」


 メロディは地面に倒れ伏すと、首からの出血で窒息しそうな事態に陥る。

 メロディの背後から腕が伸び、その手に握るアイスピックがメロディの首に突き立てられたからだった。


 倒れ伏すメロディの背後には、人質の見張り役を疾うに殺害した静夜の姿があった。

 静夜は森山の視界を塞ぐ布を外しており、視線でロックを見るよう暗に指示する。


「某の体は頑強な……り……?」


 陽山はいつ取り出したのか、包丁を真横にして心臓に突き刺していた。そう、突き刺さっていた。一般人相手に刺すのと同じ結末に。


 森山の異能力封じで、肉体の頑強さは失ったのだ。

 そのまま陽山は、包丁で腹部を二回刺し、最後にロックの太ももの内側も切り裂いた。


 ロックという巨漢が倒れ、少しだけ床が振動するのが伝わってくる。


「陽山ーーおまえは本作戦に……刀子さんには手を貸さないと言っていなかったか?」


 静夜は人質の拘束をほどきながら、陽山に真顔のまま問いかける。

 双葉結女は震えるだけで無言のまま静夜により解放される。


 僕はその様子を見て、真っ先に瑠璃を後ろ手で縛っている拘束を解くために動いた。


「べつに? 僕はそこの月影日氷子からワンコールだけ連絡があってね? 要するに、助けを求められたわけだ」

 陽山は失笑する。

「自害するまえに殺害されたら、僕の楽しみがひとつ失われるじゃないか。それに、清水刀子の指示には一度も従ってはいない」


「あんた以外の連絡先を知らなかっただけよ! 感謝なんてしないわよ!?」


 月影さんは激昂した様子で返答する。


「どうぞ、お好きに」


 僕は試行錯誤しながら、なるべく瑠璃の指が痛まないよう、やさしく拘束をほどいた。


「あ、ありがとう。でも、その……どうして豊花がここにいるの?」


 拘束が解除され、人質一同は皆、安堵の表情を浮かべる。

 しかし、瑠璃だけは困惑しているような顔を向けてくる。


「その子はね? 大切な貴女の危機に、いてもたってもいられなくて、自ら助けに来たのよ」


 舞香と六花が遅れて部屋に入ってきた。

 舞香は少し語弊がある伝え方をする。


 たしかに、僕は瑠璃を助けたいがあまり、ユタカの言うとおり早計にも愛のある我が家を頼った。

 しかし、最初は自ら現場に来るだなんて思ってもみなかった。


 それに、その……たしかにそうなんだけど、あまりダイレクトに“大切な貴女”ーーとか本人には伝えてほしくない。


「大切な貴女ーー豊花が……私を……?」


 瑠璃はいっそう困惑し始める。

 なにか言おうと瑠璃が口を開けたタイミングでーー。


「悪いな、数人逃がした。微風は逃亡者を始末してくれたか?」


 刀子さんら三人が403号室の扉の前に現れるなり、舞香に対して問いかけた。

 舞香は刀子さんに言われると、スマホを耳に当てた。


「あと、言われたとおり、シルファは殺さず連れてきたぞ。やけにおとなしいヤツだ。本当に誘拐されたのかもな?」


 真中さんが腕を引っ張り、舞香に見せるようにシルファとやらを表に引き摺り立たせた。


 刀子さんは日本刀を懐紙で拭っており、よく見ると血糊のような液体が刀に付着しているのがわかる。


 シルファの瞳は両方とも焦点が定まっておらず、どこか作り物の様に感じられた。


 そう感じたのは間違いではなかった。

 よくよく観察すると、シルファは両目とも義眼を入れていた。

 つまり、全盲?


「刀子さん? 沙鳥によるとあらかた始末できたらしいわ。だけど三人ーー前以て硬いから通じないって瑠奈が言っていたルーナ。それに意図的に対象にしなかった赤羽裕璃の二人。あと、一番問題なのはマリアまで逃しちゃったみたい」


「実質ボス以外の殺戮は終わったか……」


 愛のある我が家に引き渡すように、刀子さんはシルファの背中を押す。

 ふらふらとした足取りで向かい来るシルファを、反射的に僕が支えるようにキャッチした。


 目が見えないんだとしたら、誰かが手を繋いでいないと不安じゃないか。

 杖? みたいな物も持っていないし。


「そいつはまだ中学生。誘拐されて無理やり異能力を使わされていた様だ。真偽の程は嵐山に判断してもらえ。私は逃げた三人を追う」

「いま瑠奈が上空に飛翔して、三人の逃走経路を確認しているみたい。私と六花も追跡しろって。私の力で刀子さんと六花を連れて、瑠奈の指示に従って転移する(飛ぶ)わ」


 舞香は言うと、ポケットからもう一台のスマホを取り出し、誰かーーおそらく瑠奈に電話をかける。


「無線を用意しておくべきだったな」

「冗談。スマホでも無線みたいに扱えるアプリもあるくらいだし。わざわざ無線なんて用意する争いではないんじゃないかしら。ーーえ?」


 舞香は途端に声を上げ、サッと僕に視線を向けた。


 え……えっ?

 僕、なにかまずいことでもやらかした?


「沙鳥から豊花に伝言。シルファの本名を聞き出して、事情をもう一度話させて、その真偽を判断しろって言っているわよ?」


 舞香もいまいち理解できない命令なのか、複雑な表情を浮かべながら刀子さんに近寄り、六花に傍に来るよう手招きする。


 というか、はい?

 僕がシルファに対して詰問しなくちゃいけないの?


 僕は沙鳥から協力される立場で、僕から沙鳥に協力する立場じゃないのに……。


「ありす、沙絵、おまえたちは人質の身の安全を確保しろ。私は残党の処分に向かう」


 直後、刀子さんと六花を連れて、舞香は逃走したマリアやルーナ、裕璃を追うために姿を消してしまった。


 僕は手を繋いだシルファに対して、仕方なく質問することにした。

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