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素晴らしい成長だで良いよな

取り敢えず目の前には3人……と言っていいか?

1体は魔物だし、もう一人はおそらくもう――な。

ただ気配はあと4人あるな。

そりゃあ他にもいるとは思っていたが、思っていたほどの数じゃあない。

だが相当なレベルだ。侯爵の護衛としては少ないが、かなり名のあるやつらだろう。


それに横の人型魔物は味方だろうし、この王都中を闊歩している魔物が全てそいつの支配下と考えれば安全ではあるんだろうな

つっても、やっぱり足りねえなあ。おそらく魔物に無差別攻撃をくらって、隣の奴に泣きついたって所か。

並の部下はそれまでに全滅か。

いったいいつからここに引っ込んでいるのか分からんが、寂しい人生だねえ。


「それで、そちらの戯言は終わりですか?」


「やれやれ。もう少し話が通じると思ったのだがねえ。まあいい。現実を見れば、少しは頭も冷えましょう。我を動かしたいのであれば、先ずは少し痛い目を見る事になるでしょうがね」


その途端、急に4人の人間が現れる。

服装はまちまちだが、クロスした14個の星をかたどったマーク。こいつらの事は良く知っているよ。

ベルタース王国が誇る特殊部隊。7人の戦士と7人の魔法使いで構成され、14宝星(ほうせい)とも呼ばれている。

この国の王室特務隊のようなものだな。実力は当然相当なものだ。


ただ名前や経歴はさすがに謎。どんな連中かは分からない。

侯爵の手前に出来て来たのが2人。1人は180センチ後半の大男。もう一人は俺と同じくらい……177センチって所か。

どちらも重厚かつ豪勢な鎧を身にまとい、二人とも武器は剣。

技量(スキル)の高さは立ち振る舞いを見ただけで分かる。レベルも112と97か。

さすがに並ではないな。


その背後にいるのは魔法使いだな。

1人は女、もう一人は男。

こちらは二人とも戦士と違い、黒く地味なローブ姿……に見えるな、普通なら。

しかし全く同じ黒で、全身に魔法陣が描かれている。

顔はもちろん手も足もローブに隠れ、まるで黒い布が舞っているように見えるな。

そう、両方とも浮かんでいるんだよね。


さっきまで、この部屋には最初の3人しか見えなかった。

ただ気配は感じていたが、詠唱まではさすがに聞き逃さない。

魔道具でないとしたら、最初からこの状況だったって事か。

カモフラージュと浮遊――特別難易度が高いわけではないが、多重魔法? それとも魔道具か?

しかし魔法使いがいるのなら、カモフラージュを解く理由がない。まだ攻撃もしていないのだから。


ただ4人ともにレベルも高く、技量も高い……のだろう。さすがに大国の特殊部隊だけの事はあるという訳だが、何かが不自然だ。

まあ最大の問題は得体のしれない人型の魔物なのだがね。情勢はなかなかに難しいねえ。


だからといって死んでやる義理は無いし、姫様もフェンケも殺されるわけにはいかん。

というか、2人ともかすり傷一つ付けさせたくはないなあ――なんて考えていたら、姫様が動いた。


――ザッ!


石を切り裂く音と水飛沫のような音が同時に響く。

奥の壁には天井から床まで一直線に亀裂が入り、その周囲を血が不気味なルージュのように彩っている。

そして、1人の人間が2つになって落ちた。女の方の魔術師だな。


その姫様はというと、まだ勢いが残っているのだろう。かがんだ姿勢で、まるで天井に張り付いたかのように静止している。

完全に無表情。だが怒りでそうなったわけではない。視界は最大限広くもち、周囲全てを視界に収めている。


うん、ちゃんとできているな。

騎乗して感情豊かに叱咤や鼓舞をする王族の戦いとは全く違う。あれは俺が教えた戦闘術。暗殺者の戦い方だ。

レベル207という最大の暴力を生かす為に室内特化の戦いを教えたのだが、傍から見たら怖いだろうなあ――と思う前に、もう一人の魔法使いも頭から股まで一直線に断ち切られた。

姫様は既に床。膝を曲げ、すぐにどの方向にも攻撃できるように対処している。


時間にすれば1秒程度の早業だ。

まだ誰も声すら出せないが、焦燥の気配だけは先に出ている。まあ判るけどね。

だけど人型の魔物の表情に変化はない。元々あれが固定の顔なのかもしれんが。

とは言ってもまあ、この状況で一番危険なのはアイツだ。


音もなく机を超え、姫様に注意を向けた戦士の内、俺と同じくらいの方の頸椎を背後から突く。

骨には一切当てず、刃は喉まで貫通した。

軟骨を切断された瞬間、不自然な程に首が横に折れて倒れていく。

狙った理由は近いから。運が悪かったな。

ただ倒れるのを待つ理由は無い。それどころじゃないし。


まだ誰も状況を理解しない中、人型の魔物だけが姫様の方に手を向けようとしている。

感情の有無は知らんが、そもそもの反応が人間よりも早い。

ただ油断か? それとも自信か? まあ迂闊だな。

ゆっくりと上がって行く右手の肘から先を切断する。

しかし無茶苦茶に硬い。それに妙な手ごたえだったな。


その時には、姫様の跳躍でもう一人の戦士も真っ二つになっていた。

早いな。ここまで2秒ちょっとか。

常人では理解も出来ないだろうが、壁に残った亀裂と血痕が現状を雄弁すぎるほどに語っている。

流石にレベル207ってのは、本気で戦ったらどうにもならないな。しかも専用装備か。

正直、俺でもちょっと勝てるかは分からんよ、これは。


姫様はヒュンヒュンと処刑斧を回転させ僅かに残った血を吹き飛ばすと――、


「それで、そちらの頭は冷えましたか? でしたらそこからどきなさい」


まだ無表情を崩していない。

素晴らしい戦いっぷりだが、この戦い方を王様に知られたら俺の首が飛ぶのではないだろうか?

暗殺者に指導を任せたお前が悪いとは言えないよねえ。





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