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そろそろ仕事にかかるか

 専用装備……王室特務隊の鎧なんかがそうだ。

 あれは同じデザインに見えて、それぞれがオーダーメイドの特別品。

 それぞれの性質に合わせたギミックがあるとは聞いていたが、甘く見ていた事はビスターという男との戦いで痛感した。


 そいうえばサイネルという女の方は変化していなかったが、アレは変化済みだったのか出来なかったのかは分からないな。

 何せ魔道具だ。あそこ迄ズタズタにされたら、壊れていたっておかしくはない。


 武器も本来は専用装備があるはずだが、さて使っているのは何人いるか。

 武器も鎧も、世の中にはたくさんのものが存在する。

 鎧に関しては本人用に設計されたオーダーメイドの分、多少の性能差よりもそっちを選ぶ。

 あのババアでさえ本気の戦いであの鎧だったのだ。信頼度がうかがえるというものだよ。


 だが武器は別。こちらは単純な魔道具クラスでは、到底太刀打ちできないものが存在する。

 聖剣・魔剣は作った系統の魔法や素材が違うだけで、魔道具であることに変わりはない。

 ババアに貰ったこの短剣も普通の魔道具だが、聖剣や魔剣に劣るものではないさ。

 出来合いが作った人間次第なのも同じだな。フェンケのモーニングスターやメイド服も魔道具だし、ビスタ―が使っていた武器も、能力は桁違いだが両方とも魔道具だったしな。

 しかし聖剣と魔剣には、それぞれ上位の存在がある。

 本当に、その世界の力で作られた品。聖剣は天界。魔剣は異界。いわゆる名前付きと言われるもので、見ただけで赤ん坊でもその名前が分かる……しかし姫様の武器からはそんな雰囲気はないな。


「その専用装備ってのは姫様用の? しかしとてもじゃないが戦場に行くような代物には見えないな」


 処刑斧はともかく……。


「ええ。あたしが12の時に作った物で、まだ着られてよかったです」


 え、その頃から成長していないの?


「コホン、クラム様。今、姫様に対して失礼な事を考えませんでしたか?」


 馬鹿な⁉ もしかして俺が動揺した? しかもそれをフェンケに察知された? 流石にありえん。


「いや、そんな事は無いぞ。ただそれ程早くに作っていたのかと思ってな」


 それもまあ嘘ではない。

 子供は成長が早いからな。

 12歳の時に作った服など、普通は15歳になったら着られないだろう。

 しかもどう考えてもアレが普通の布であるわけがない。作った時期もそうだが、それから新調していなかった点がまあ気にはなったさ。


「そうですよ。フェンケも変な疑いはしないように」


「すみません、普通に冗談です。殿方はそちらの方面を気にすると思いましたので」


 当然成長の方だよなあ……。


「まあ別の意味で気にしたよ。それで、窮屈じゃないのか? それにどんな時に使う事を想定していたんだ?」


「その点は大丈夫です。サイズは自在ですので、一生物です。それにあたしが戦場に出る事は誰も考えていませんでしたので、これは万が一の護身用なのです」


 にっこりと笑うが、その処刑斧は護身用じゃあありませんよ。


「あ、この斧ですか? これは父のお下がりです。今度説明しますね」


 いやまあ説明されても困るけどな。

 しかしそうか……俺の視線に気が付くとはね。

 確実に、自身のレベルに意識が追い付いて来ている。そろそろ養殖とは言えなくなってきたか。

 スキルはまだまだだけどね。


「では準備が出来た所で行くとしようか」


「確かプリズムポイズンワームでしたね。やはり外でしょうか?」


「いや、先にターゲットをやる。今後の為にも、出来れば全部始末しておきたい」


「避けられない事は分かっていますが、それでも全部ですか……」


「事情は分かりませんが……その……本命は……」


 姫様とフェンケはそれぞれちょっと考えが違うか。

 姫様の方はもう割り切っているし理解している。

 どんな姿になっているかは知らんが、部下が判断できるだけの容姿を残し、ここに居る。

 情勢を考えれば、決して世に出してはいけない存在となってしまったという事だ。

 だから依頼内容に異は唱えない。だが他の2人が強敵だってのも、考えるまでもない事か。

 フェンケはやはり、王族殺しに抵抗があるな。当然といえば当然だが。


「サリボドール侯爵と人型の魔物。連中が調べたんだ。実際にいるんだろう。安全に帰るためにも、そいつらは始末しておきたい。どうせさっきのゲートは使えないしな。危険は出来る限り排除しておきたいってわけさ」


「ゲートが使えない?」


「場所がばれたんだ。もうぶっ壊されているだろ。人間並みの知恵があるならそうする。どうせ今の魔物を操っているのは、間違いなく人型だ」


「あ、確かに」


「ですが、そんなに詳細な命令は出来ないと聞いておりますが」


「暴れろですむだろ、そんなの」


「あ、なるほど」


 無事だとしても使いたくはないね。

 あそこをもう一度突っ切れと言われても、そんな余力が残っているかもわからんしな。

 ただ退路の確保も必要だが、当面の問題はターゲットがいる場所ではあるが……これはすんなり予想がついたな。


「なあ姫様、ここから玉座の間まで行きたい」


「うーん、謁見室ですか? それですと外ブロックになります」


 あ、俺の言っている部屋名は、こちらで勝手につけた奴だ。


「いや違う。儀式用ではなく、きちんとした話をする方だな」


「……あ、分かりました。ただ場所は分かりましたけど、そこを知られているのは王室の人間としては複雑です」


 ちょっと困った顔をするが、まあ秘密なんていつかは漏れるものだ。


「その辺りを知らないと侵入は出来なくてね。ただ、俺も行ったことは無いんだよ。用事も無かったし」


「分かりました。それでは行きましょう」


「ああ、よろしくな」


 おそらく考えるまでもない。侯爵はほぼ確実にそこにいるだろう。

 魔物は確かに最上種に従うが、あくまで漠然とした命令のみだ。

 たそえ攻撃するなと命令があったとしても、人間がいたら迷わず攻撃するね。

 だから本当にまだサリボドール侯爵がいるとしたら、それは確実に魔物がいない場所。

 ここを候補の一つと考えるのは自然な流れだろうし、そして、いるとしたら王座の間のような場所だ。

 偉そうだし、何よりこの城で最強のセキュリティが施されている場所だろうからな。


 王子は魔物に喰われていれば話は早いが、生きている事は確認済みの命令だろう。

 ならやはり、最も安全なそこに居るのが自然だよな。

 ただ人型の魔物――この結界内に存在できるか?


 出来ないなら楽だ。ここにはいない。

 最初はこういった結界を考えていなかったら2人と1体、同時にいると考えたが――いや、多分間違ってはいないか。

 この結界がどれだけ強くとも、人型の魔物ってのがそんなに甘い存在とは思えないからね。




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