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面倒な魔物博物館だ

 階段を駆け抜けると、目の前には壁と同じ素材の石扉。

 ただノブだのなんだのがあるわけじゃない。一見したら、ただの行き止まりだ。

 まあこういった仕掛けには慣れているんでね。構造を考えれば言われなくともわかる。

 重いドアを蹴り開けると、何かが潰れた音がした。知ったこっちゃないがな。どうせ敵だ。


 気配で分かってはいたが、魔物が集まってきている。

 ただ王都にあったのは何処もレベル屋なんだよな。


 潰れたのはともかく、すぐさま襲い掛かって来たのは3メートルを超す巨大な緑の蛇。

 普通の目は無いが、実は顎の下に隠した特殊な目がある。

 石化の瞳を持つバジリスクスネーク。強固な鱗と石化の瞳。牙に毒は無いが、人間くらい骨ごと噛み砕く咬合力(こうごうりょく)、それに締め付ける力は牛すらも潰してしまう。

 まあ、今回は顎下から頸椎を切って終わらせるが、本来は水で倒す。なにせこいつ、全く泳げないという弱点を抱えているからな。

 レベル屋あるあるだ。


 倒れるまでの時間差が出るのでレベル屋では1回1体しか使わないので中級者用だが、その力と特殊能力によるボーナスは大きい。

 それはともかくまだまだいるな。地面が緑色に染まっていくようだ。


「2人共、常に気を張っていろよ。特にフェンケ。連中のレベルは20程だが、石化の視線はレベル50相当だ。油断しているとやられるぞ」


「それを言ったら、一番レベルが低いのはクラム様でしょう?」


「俺が油断するかよ」


「確かにそうですね。姫様、ここは私たちが足手まといにならないようにしましょう」


「あたしはアレに石にされる事はありませんが、危ないのはフェンケですよ」


 姫様は涼しい顔で言ってのけるが、全くその通りだな。そんな中、襲い来る長大な緑の絨毯に混ざって、大量の蝶が飛んでいる。

 蝶と言っても1メートル越えに8本脚。翅自体はエメラルドのように美しいが、あれ自体が厄介だ。

 幻想的な翅だが、実際に幻惑の効果がある。意識を破壊され、廃人になるほど強力なのがね。

 ただ太陽の光が無いと効果が無い。光を反射して虹色に輝く事で効果を発揮するわけだ。

 月の光でも効果はあるが、やはりかなり弱くなるな。ここの魔光程度じゃ効果はゼロか。

 ただその強力な特殊能力のおかげで、本体は10レベル程度だが非常に高いボーナスを持つ。

 というか、こんな地下ではただの虫だ。

 扱いも倒すのも容易いため、レベル屋の入門としては扱いやすい。


 まあ、当たり前だがこんなのばかりだ。

 他も触手で這いずる大ナメクジや、天井をひたひた歩いて来る透明な兎の下半身など。こいつらは単純に強いというか、非常に強力な特殊能力を持つ。初見殺しの必殺級の奴だ。

 ただその分だけ経験値効率が良く、尚且つ明確な弱点がある。それがこの王都にいる魔物の特徴って訳だ。


 ただ、それは他から強力な魔物が持ち込まれていなければの話だが。

 どうしても、人型の魔物というのが少し気になる。

 アイツらは普通の魔物と性質が全く違うからな。


 そんな事を考えながら、絨毯のように流れ下って来る蛇を倒し、邪魔な蝶も含めて来たのは全て始末する。

 本来なら姫様の一振りで一掃できるが、さすがに王墓を破壊するのはダメだよな。

 ただ――、


「フェンケは後ろに下がっていろ。こいつらは倒し方さえ分かっていれば簡単だが、どいつも所見殺しの特殊能力持ちだ」


「確かにレベル屋の魔物ですものね。お任せいたします」


 フェンケにしては素直に下がってくれたが、まあカーススパイダーを捕まえて戻ってからはこんな感じだ。

 やはり経験が育てたのだろう。素直に従ってくれるのはありがたい。


 まあこちらはこちらで、どんなモンスターが来ても知っているから問題は無い。

 この程度の連中なら、特殊能力を使っても姫様には効かない。

 厄介なのはプリズムポイズンワームの毒と――人型の魔物だな。

 本当にアンダーロータスが持ち込まれていたら面倒だが、あれも植物では無く魔物なんでね。例え透明でも気配で分かる。

 つかね――、


 虚空を一閃。

 すると、地面に何かが落ちた音と共に不自然な形で青紫の体液が流れ出す。


「これは?」


「植物型の魔物でね。インビジブルデスとかラウンドトラップとか言われているな。目撃例はあまり無いというか、見ての通り死んでも透明だ。ただ動物なり植物に触れると、張り付いて体内に種子を注入する。するとこいつらの手足となる植物型の人形が出来あがるって寸法さ。ウッドゴーレムとか木人とかは知っているだろ? あれの大元だよ」


「それは初耳でした。あたしは透明な相手は見えませんので、気を付けないとですね」


「気を付けていれば、姫様の皮膚を貫ける魔物なんてここにはいないよ。フェンケは気配感知を持っていたな。見えていないだけで殺気は振りまいているんでね。気を付けてさえいれば何とかなるだろう」


「殺気だらけなんですけど」


「見えない殺気がこいつだ。まあ慣れろ」


「スパルタですね」


「補助はするさ」


 姫様はちょっと微笑んでいるが、俺がフェンケにも注意を向けている事は分かっているんだろう。

 当然、姫様にもな。




 ■   ■   ■




 珍しい魔物のオンパレード。さすがに世界最高のレベル屋で繁栄した国の王都だけある。

 しかも当然ながら強力な奴等ばかりだが、幸いまだ何とかなる程度だ。この近辺に、厄介な気配はない。

 まあフェンケにとっては全部厄介だけどな。


 問題なのはプリズムポイズンワームの毒。高確率――というか確実に姫様にも有効だ。

 それだけの相手だからこそ、常人では到達できないレベルまで上げられるわけだがね。

 他にも骨剥ぎネズミや林檎虫なんかもいるが、やはり最大の問題は人型の魔物か……。


 人型の魔物と言っても2種類ある。

 1つは亜人系。よく見るオークとかだな。

 あれは普通の魔物だ。人に近い形だが、人型とは言わない。魔物は魔物だ。特性も同じ。

 結構移動をするので、放置すると無茶苦茶増える。いや、これはどうでも良いか。


 俺たちが人型と呼ぶのは全く別。ただ詳細に関しては俺も詳しくはない。

 というより、世界全体でも全然わかっていないんじゃないのか? 何せ資料が少なすぎる。

 1つ言えるのは、人型と言いつつ人とは違う外見をしている可能性があるって事くらいか。

 ただそれでも人型と呼ばれるのは、人と同じように思考し独自の考えで行動するからと言われているな。

 他の魔物を操る力はあるが、自分はより上位の存在から操られる事はない。

 そして人と交流する事がある。人の言葉や感情を理解するのだ。

 案外、俺より人間らしいかもな。

 とはいっても、互いに仲良くできるかという事は決してない。

 双方とも、相手の絶滅が最終目標だからね。誰が決めたかは知らんが、そういう歴史だ。


 そしてもう一つの違いとしては、連中は沸かない。

 いつの間にか人型魔物が大量に――という事が無いわけだ。

 まあこれは人類にとってありがたい事だな。なにせ連中の強さは――、


「クラム様、王墓から出ます」


「何処に向かっているかもわからないまま来たが、このままだと何処に出るんだ?」


「いきなり外は危ないと思いましたので、城の地下に繋がる道です」


「成程。確かにそっちの方が良いな」


 外に出たとたん、無数の魔物に囲まれていましたなんてのは確実にありそうだ。

 どうせどこも危険なら、慣れている方が良いか。




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