そりゃあ最初に潰れるのはあそこだよ
しかし王都の陥落か……そんな酒場の注文の様にさらりと言われても困る話だ。
「なぜそんな事になった?」
「そうだな、順番に説明するとしよう。まずはお前がいたレベル屋に例のロータスが持ち込まれた事がきっかけと言えばきっかけだ。」
「ブラントン商会だな。もう興味もなかったが、例のプリズムポイズンワーム問題が関係するのか?」
「残念ながらそっちは無関係だ。クラム・サージェスという男は今も変わらず指名手配。お前がルーベスノア子爵の地位を失ったらまた指名手配に逆戻りだな」
「別人にしてくれてありがとうよ。……それで?」
「され、そこがジョナス・クーリンド・マルカシア・サリボドール侯爵と接触し、アンダーグラウンド・インビジブル・ロータスフラワーを譲渡される事になった。それは知っているな?」
「そりゃな。それが放逐されるきっかけなった話だ」
「実はあの男は第2王子派でな。更に言えば隣国のベルタース王国とも繋がっていた」
……クランツ・イングリア・クラックシェイム王子か。王位継承権第2位だが、妾の子か。
しかしベルタース王国ねえ。
「東北の大国だな。確か姫様の国が最初に攻め込んだ国で、領土の3割を奪われたのだったか。戦争自体は今でも続いているそうだが」
「お互い大規模な軍事行動は無いが、停戦も休戦も結ばれていないからな。さてそれはともかく、第2王子はサリボドール侯爵を仲介にベルタース王国と共謀し第1王子の排除を考えていた。まあ無理だがね。さすがに第1王子にそんな隙は無い。そこで様々な陰謀を巡らしていたのだが……」
「失敗したと。しかしそこから何をどうしたら王都が陥落なんてことになったんだ?」
「それは先程話した通りだ。持ち込まれたのはアンダーグラウンド・インビジブル・ロータスフラワーではなくアンダーグラウンド・ロータスツリー。それに誰も気が付かないまま巨木へと成長し、数日のうちに王都を飲み込んだ。しかも厄介な事に、こいつは胞子を飛ばして人間に寄生体を植え付ける。そうなったら最後、自ら餌になりにふらふらと近づいてしまうのさ」
木なのかキノコなのかどちらかにしろと言いたいが、まあそんな事は意味がないな。
時期的には俺がまだここに着くころか?
それとも魔国に行っている頃か?
どちらにせよ、随分と短期間に起こったものだ。
あのままレベル屋をしていたら、俺は奴隷のまま一歩も外に出られず死んでいたな。
「今更の話だが、きちんと調べなかったものかねえ。俺が抜けてもまだスタッフは大勢いただろうに」
「プリズムポイズンワームの排泄物を山に捨てる奴らだぞ」
納得するしかねえ。
「それで、王都にいた国民の方々は脱出できたのですか?」
真摯な姫様の言葉が少し意外だった。
王族なんてものは身内が大事。国民なんて駒程度にしか考えていないと思っていたからな。
「その点はご安心ください。先ずはいきなりレベル屋を突き破りましたからね。即パニックですよ。それに王都カブラムは小さい」
確かに。大国の王都は長い年月と共に民衆が流入し、そのつど拡張する。
しかしマーカシア・ラインブルゼン王国は今の代になって急速に拡大。仕事を求めて流入した国民の数に対して拡張は追い付かず、下水まで利用する始末だ。しかもその下水も拡張しきれていないから中途半端な工事で止まっている。
「確かに、何かあった時に逃げるには最適ではあるな」
元々が要塞化されていない都市だ。平坦だし道も真っ直ぐ。何かあれば即逃げは容易い。
下水に住んでいた人間はもっと早いだろう。
不幸中の幸いというか、戦闘を考慮していない簡略な造りと拡張が間に合っていない小ささが、逆に多くの国民を救ったわけか。
まあこの様子なら王族も大丈夫だとは思うが……。
続きに興味を持って頂けましたら、是非ブックマークをお願いします。
評価はいつでも変えられますので、今の段階の感じを入れて頂けると嬉しいです。
↓↓↓
☆ ☆ ☆ ☆ ☆→★ ★ ★ ★ ★






