表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/124

神知に魔略か

 そしてまずは冷え切った体を温めるために風呂に入ったのだが――、


「それでですね、先程の話なのですが」


「え、ええ」


「2人だけですので敬語は不要ですよ」


「いやまあ、じゃあ、そうしよう……」


 しくじった。フェンケというストッパーがいないとこうなるんだった。ここのメイドじゃ止められん。

 今、同じ湯船の中に姫様が入っている。しかも狭い。密着している。ふむ、こういう時は素数を数えると聞いたことがあるな。

 一応は追い出そうとしたのだが、立場もレベルも姫様の方が上と来ている。結局押し切られてしまった。


「ヘイベス兄さまが来たのには驚きましたが、何かしらの手は打っているとは思っていました」


「レベル屋の支度だな。それは俺も考えていた。ただ心配はしていなかったよ。こちらには支度する時間も余裕も資材も資金も何にもないが、それでもやらせようとしていたんだ。戻ってくれば準備は完了しているとは思ったが……ヘイベスってのはどんな奴なんだ。それと後ろにいた2人の事も何やら知っている様だったが」


「相変わらず鋭いですね。特に用が無ければいないと考えるのが通例なのですが」


「制度の事は知らないが、気になったのはそこだな。坑道で1人倒したのに、姫様はあの2人を気にしていないそぶりだった。しかし知らない特務隊だったら少しは警戒するだろう。あそこで仕掛ける事は無いにしても、気を抜く訳にはいかない。つまりは顔見知り。かつ、それなりに信を置いているって訳だ」


「なるほど、勉強になります」


 少し熱くなって来たのか、風呂から出て浴槽の縁に座る。いやいやいやいや。

 たかだか湯の音なんぞをこんなに気にしたのは初めてだ。


「それであの2人ですが、1人が“神知”クエント・ハース・ノンダニア。もう1人が”魔略” エナ・ファンケス・ミネストダイエですね」


 俺でも知っている奴だな。

 女性とは思わなかったが、両方共に異名通りであり、それだけではないだけの戦闘逸話も残っている。

 しかしあれほどに小さいとはな。だが少なくとも俺が最初の任務の頃には異名が知られていた。当然だが、見た目通りの歳ではないか。


 しかしそうか、第4王子付きか。ならヘイベス王子自体は見た目通りの凡庸な……いや、そんな考えは愚かだ。

 レベル200超えているのにそこから2上げる。それが凡人なわけがない。

 だけどそれはあのレベルの微妙な差が分かる人間だけだ。

 そう考えると、あえてあの2人を連れているのも策略か。


 知らない人間にとっては普通の王子様と護衛。レベルも考えれば、正面から敵対しようとは思わないだろう。

 搦手で敵対できるほどの資産や権力を持っていれば、“神知”と”魔略”を知っていて当然。なら彼の逸話は2人によるものに映るだろう。

 ふむ……あれは蜘蛛みたいな性格な男と見るね。自らを餌にして相手を見定め、場合によっては処分するのだろうな。

 どうもこのところ、蜘蛛と縁があるものだ。本人には言えんが。


「まあレベル屋は俺が専業だからこっちでやるが、他の設備はあの王子がやるんだろうな」


「さすがに十分に状況を理解しておるようだのう」


「ふふゅひゅ、まあ説明するまでもあるまい。その程度の事、気が付かない様では話にもならぬ」


「とか言いながら堂々と浴室に入って来るな!」


 入って来たのは“神知”と”魔略”。しかも当たり前のように全裸だ。

 良かった、お子様ボディで。危うく限界突破するところだった。

 いや良くは無いけど今は突っ込むより少しでも情報が欲しい。

 わざわざ来てくれたのだから、当面は付き合おう。


「というか、そもそも2人でいっぱいだ。大体、なぜ平気で入って来るんだよ!」


「あら、あたしら王族は、家族皆で入りますよ。もちろん全員が揃う事はまずないですが」


 そうなのか? まあ偉い人間のする事はよく分からん。

 まあ庶民では温度変化の魔法は使えないからな。安い銭湯は混浴も普通ではある。

 ただ高級になる程に男女は別になるものだからな。王家もそうだと思っていたよ。


「そんな訳で、我等王室特務隊も供をする事も多いのじゃ」


「まあ気にする事も無かろう。それより、女体が気になるなら存分に堪能するがよいわ」


 いや、無いわ。

 妙な口調というかどっちもそうなのだが、銀髪と黒髪の二人組。

 銀髪の方が“神知”クエント・ハース・ノンダニア。

 身長は142センチって所か。

 丸みのある、肩にギリギリかからない銀色のショートカット。顔は身長にぴったり合っている童顔。まあこれで老け顔だったら、ちと怖い。

 体系も一般的なお子様だな。つやつやの肌には傷一つ無く綺麗なものだ。それに細い。

 なんか『のじゃ』とか変な口調だが、アレはどこかの方言か?

 異名の由来も聞いてはいるが、ここは先入観など無しで考えよう。

 どうせ全てがオープンなど有り得ない。愚かな先入観は身を亡ぼすだけだ。

 敵対する事はないだろうしそう祈りたいが、世の中どうなるかなど分かりはしない。


「ククク、我らの裸体に釘付けの様ではないか。クエントよ、こ奴なかなか良い趣味をしているのではないか?」


 悪いがそんな趣味はねえ。


 こっちの尊大なのが”魔略” エナ・ファンケス・ミネストダイエ。

 尻が隠れるほどに長い髪は、黒と紺と紫が合わさった様な、なんとも不思議な色合いだ。基本的に黒と言えなくもないほど濃い。

 前髪も長く顔もかなりの部分が隠れているが、こいつも身長相応に童顔だな。

 ただかすかに黄色い瞳が見えたが、俺はすぐに視線を逸らした。

 あれは本能がそうさせたのか、とにかく危険な気配を感じ取ったからだ。

 王室特務隊なのだから、2人ともにユニークスキル持ちだ。敵対はせずともそれ以外は何でもやりそうだからな。


 因みにこちらも体つきは変わらん。身長は2ミリほどこちらが高いが、誤差だな、誤差。

 ただ一つ違うのは、右胸の上に魔女の刻印がある。

 魔法、聖教魔法、精霊術――魔法にも色々とあるが、あれは呪術を使う者だ。

 珍しくて普通の人間がお目にかかる事はないが、俺は呪術とは色々と縁があってね。ただ(おおむ)ね禁呪と及ばれる範疇だ。関わりたくないな。





続きに興味を持って頂けましたら、是非ブックマークをお願いします。

評価はいつでも変えられますので、今の段階の感じを入れて頂けると嬉しいです。

↓↓↓

☆ ☆ ☆ ☆ ☆→★ ★ ★ ★ ★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ