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第7話

「そういえば……エレーナのやつ、今頃はどうしているだろうかな」


 自分が婚約を切り捨てたエレーナが、今頃どんな様子を見せているのか。オレフィス第二王子は不意に興味がわいた。


「おい、少しエレーナの様子を偵察してきてくれ。この僕に捨てられて今どうなっているのか、知りたくなった♪」


 自分が火をつけて逃げてきた建物が、それ以降どうなったのか気になる…というのは、人間の心理の一種なのだろう。オレフィスは自分に捨てられて絶望に染まるエレーナの姿を想像しながら、その心を高ぶらせていた。

 …が、しばらくして持ち込まれた現実は、彼の思い描いたものとは正反対であった…。


――――


「そ、それがオレフィス様……エレーナ様は、毎日をいきいきと過ごされている様子でして…」


「………はぁ?」


 おそるおそるそう報告した部下の言葉を、オレフィスは素直に受け止めることができない。


「冗談で言っているのか?それにしたって面白くない冗談だが」


「そ、それが事実でございまして…」


「そんなはずがないだろう!?第二王子であるこの僕に婚約を破棄されたのだぞ!?どうしていきいきとなどできると言うのだ!?」


「ひ、ひぃ!?」


 思い通りの反応を得られなかった事で、オレフィスはその語気を荒げる。この部下はありのままを伝えただけで何の非もないというのに、まるで仕事で大きなミスをしたかのような扱いだ。


「本当にエレーナを見てきたのか??見間違いではないのか??僕の予想では、今頃部屋に引きこもって全く出てこずに、なんなら生きることに絶望して自ら死ぬことまで考えているはずだぞ!?」


「ま、間違いなどではございません!!つい先日行われた食事会にエレーナ様の姿がありまして、そこで」


「もういい!貴様には頼まん!……我が王宮に役立たずは必要ない。お前もエレーナ同様、ここから追い出すことに決めた」


「そ、そんな!?私はただありのままを」「うるさい!!早く消えろ!!」


 大きく機嫌を損ねたオレフィスは乱暴にそう言い放つと、その場から立ち上がり部屋から消えて行った。残された部下は放心状態のような様子を見せ、その場にただただ固まるほかなかった…。


――――


「心配いりませんよオレフィス様。きっとエレーナは強がってそう振る舞っているだけで、内心では第二王子夫人の立場を奪われたことに、死ぬほど絶望しているに決まっていますとも♪」


「そうかそうか、君もそう思うか!やっぱり僕の心を理解してくれるのは君しかいないよ、イーリス!」


 自分が欲しがった言葉をそのまま伝えてくれるイーリスの存在が、オレフィスにとってはこの上なく至福であった。


「イーリスがいてくれて本当によかった…。もし君が現れてくれなかったなら、僕は間違いなくエレーナとの婚約を結ばざるを得なかった事だろう。あの頑固な父や兄のせいで、僕の人生はめちゃくちゃにされるところだった…」


 エレーナを選ぶと言い出したのは自分の方なのだが、そんな都合の悪い記憶はすでに脳内から消え去っている様子。今はその二人が自分のために右往左往してくれているというのに、全くそんな事は考えてもいない様子だった。


「私の心はすでにオレフィス様のものでございます…♪」


 その言葉に脳の理性を破壊されたらしいオレフィスは、勢いのままに彼女と行為に及び始めるのだった…。

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