始まり
世界には2つの種族がいた。1つは人族、2つは獣人族。
人族には肌の色による個体差があるが、獣人族にはそれぞれ動物の特徴での個体差がある。
「お前、仕事をサボってるのかっ!!」
「今休憩中で…」
「チッ…」
その個体差、種族によっての偏見が多くみられ、獣人族の犬科や猫科の方が優遇されやすく、蛇科や豚科、ナマケモノ科などは鈍臭いやら盗みを働きそうだと言いがかりを付けられやすい。
そして獣人族の厄介な所はもう1つある。
「ミリシャくんってΩなんですねぇー」
「え?」
「首のチョーカー。それΩ専用のやつですよね?私この前テレビで見たんですよ!」
第3の性についてだった。
元より獣人族が持っている性ではあったが、他種族間の婚姻から人族にも表れるようになった。
この事から獣人からの被害、また人が意図的に獣人を誘うような事件が起きていた。
「あー、そうですね」
「Ωの発情ってやばいんでしょー!抑制剤とかもってます?チョーカー付けてるってことは番とかいないんですね」
知ったばかりのことを考え無しに言葉にする奴は多く、若い子に多い。相手にするだけ損をするので聞き流すのが1番の対処だった。
「ごめん、休憩終わりだから」
結局あと20分残った休憩をはやめに切り上げて仕事に戻った。蛇科のΩ、それが俺だった。偏見を持たれやすい俺を最初の店長は偏見なく迎えたが、新しく来た今の店長は寧ろ偏見しかもってなかった。自分の好みの獣人しか雇わず、気に食わないやつは理由をつけて辞めさせるなどの所謂パワハラを繰り広げていた。そうなった今辞めてしまいたいと思うが、それでは負けた気がして休むことなく通っている。
蛇科が悪い訳ではない。実際俺の父親はαで国外にいるし、テレビにも出ている。美しい実業家などと言われ、表情もなく冷たい印象を持つがそれがいいのだと言われていた。
「休憩終わったなら、裏の掃除にいけ」
待ってましたと言わんばかりに店長がいう。店の裏の掃除が何だかんだ1番落ち着くのだから構わないが。
散らかったゴミと態とらしく置かれたゴミ袋を片付け定位置に置いていく。バイトをするほど困窮してるわけではなかった。俺の母親もΩ性で苦労したから無理はしなくてもいいと言ってくれた。それでもこのまま両親に、甘え続けるのも違うし、1人で生活してみたいと思ったから始めた。
「寒くなってきたな」
外は少しずつ気温が落ちていき、冬が近づいてくるのがわかった。厄介な冬眠の時期が近づいてきていた。
「掃除終わりました」
「店の裏を掃除しただけだろう。裏の掃除しろっていったらそこしかできないのか」
店長がそういうとさっきの高校生がくすくすと笑う。悪意を持って笑ったわけではないのだろうが、いい気はしない。
「もうすぐ冬がきて使い物にならなくなる前に、ちゃんと働こうとか思わないものかね」
蛇科は気が利かないんだな、と吐き捨てた。ホールにいる熊科にも言ってみろ、と思うが店長はあの子を気に入っているから言わないし、聞かれたら困るから裏で言っているんだろう。
「ミリシャ君って蛇科なんですね」
高校生がこちらに向かってくる。ふと嫌な予感がした。
「Ωで蛇科ってやばくないです?私、あの実業家の人。憧れてるんですよねぇ」
ここは裏で、通路も狭く窓も小さなものしかない。そもそも今の俺に味方になってくれる奴なんていないのに。それにαがΩを襲うなんて事例聞いたことがない。
「今この状況でヒートを起こしたら困りますよねぇ?ミリシャ君」
「αなのにΩを襲うんですか?」
「襲うって酷いなぁ」
制服のボタンを外しながら、目の前の女が笑う。
自分の体が熱くなるのを感じる。ヒートを起こさせようしている。無理矢理のヒートは体への負担が大きくなる。
「襲うのは貴方、私は襲われる側。加害者はヒートを起こした貴方の方」
ぞわりとした感覚の後に、頭がぼーとする。抑制剤はカバンの中で今この場にない。女は笑いながら近づいてくる。
ヒートが起きた今ホールのαにも伝わっているだろう。そうなれば俺はどうなる。女を突き飛ばしてフラフラと立ち上がり、裏扉から走った。
人通りが少ない道を走った。体は熱いままで、今すぐにでも誰かに相手してほしい本能と無理矢理のヒートでαに迷惑をかけてはいけないという理性がせめぎ合っていた。
気づけば近くの森の中で、熱い体を治めようと必死に自分の身体を抱いた。冬の近づいた外で蛇の本能が働く。
「いい匂いすると思ったらこんなとこに発情期の男がいるぜぇ」
「男かよ!しかもなんか弱ってね?」
酒臭い男2人がこちらにくる。その男が俺の尻を撫でる。ぞわぞわと走る感覚にこいつはαか、と思う。
「やば、こいつヒート中だわ」
「は!?お前こいつ男だぞ!おい!まじかよっ」
俺の服を脱がしだした男を止めようとするもう1人は恐らく第3の性を持ってないやつだろう。
「やめろって!そこのお前も抵抗しろよ!」
そうは言っても力が入らないのだ。気温が下がれば下がるほどこちらの動きは鈍くなる。人族には申し訳ないができる抵抗も微々たるものしかできない。
息を荒くした男は人族を振り払う。体に触れられるのは分かるがもう何も考えれなかった。
はじめまして。
初めて小説を書いてみたのですが、こんな書き方でいいのでしょうか。不安でいっぱいです。
オメガバースと獣人という好きなものを全部混ぜ合わせたお話になります。
拙い文ではありますが、どうぞお付き合い頂けたら幸いです。