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短編 56 全裸地底世界

作者: スモークされたサーモン


 最初は地底人の設定でした。何故か核戦争が出てきて話が少し変わったのです。


 やはり戦争の影響か。


 遠い世界の話ではない。が、とりあえず真面目な話はここまでで。


 本編どうぞー。



 地底世界に広がる全裸の世界。



 世界は滅んでしまった。核戦争が起きて全てが核の炎で焼き払われたのだ。地上は吹き止まぬ放射性物質の嵐の世界となり、生き物は死に果てた。


 森も、山も、川も、全てが灰色の世界に塗り変わった。


 地球は間違いなく滅んだのだ。


 でも人間はしぶとく生き残った。


 僅かな人数、それでも千人単位は世界各国の生き残りが確認された。これは各国に作られた避難所、シェルターの類いに逃げ込めた人達となる。


 ここ『北海道地下壕』もその一つ。核戦争がいつ起きてもおかしくない、そうなった段階で掘り進めた巨大な洞窟になる。全道に渡って逃げ込める防空壕、それが『北海道地下壕』の概要だった。


 あまりにも無謀な計画だったが、計画初期の調査段階で北海道の地中に謎の大空間が発見されたことで『北海道地下壕』は造られる事になった。


 しかし完成間近に核戦争が開始。


 巨大な地下洞窟、もしくは地下世界ともいえるこの『北海道地下壕』に逃げ込めた人は……あまりにも少なかった。


 男……22


 女……74


 それがこの『北海道地下壕』で暮らす人間の数である。


 数は確かに少ないが、人間は生き残った。それを喜ぶべきなのだろう。


 ……何故かみんな全裸で過ごしているのだが。




 世界が滅んだ初日。


 北海道地下壕では見学会が開かれていた。見学会というか地下洞窟探検と言った方が的確だったのかもしれない。防空壕に馴染みのない北海道である。地下壕見学会も当然のように人気はない。


 そもそも北海道の人間に防災の意識はない。


 だからこの日も大人を対象にしたものではなく、小学生を対象にした小さなイベント、という形で北海道地下壕に人が入ったのだ。


 北海道地下壕。ここは天然の洞窟を利用した地下シェルター。そういう事になっている。しかしその実態は、まんまダンジョンである。


 地下に張り巡らされた洞窟は迷宮であり、一度足を踏み入れたら決して出ることの出来ない魔窟である。


 地下シェルターとしての機能こそ入り口付近に設置は出来たものの、その深部、大半は手付かずの天然洞窟によって構成されていた。


 そのシェルター部での見学会である。子供達がわいわいしているとき、それは起きたのだ。


 核戦争。


 世界は半時を経たずして滅んでいた。


 シェルターに逃げ込む時間があったものは極少数。大半の人類はそれと気付かぬ間に核の炎に焼かれて死んだ。


 北海道地下壕では地下シェルター内の食堂でみんなが集まり、お昼を食べているときの事だった。


 お昼を食べ終わりお昼休みを挟んで、午後の予定……地上との交信デモンストレーションをしようとしてようやく気付いた。


 地上は既に滅んでいた事に。


 連絡は何処にも繋がらなかった。


 数少ない大人達は慌てふためき泣きわめいた。そして何故か殺しあいを始めた。地上との連絡室は血に染まることになったのだ。


 子供たちの前で大人達は殺しあい全員が死んでいった。


 残されたのは小学生だけ。


 子供達の順応力は高かった。すぐさまみんなで会議を開いて地下洞窟に逃げ込むという判断をしたのだ。


 『北海道地下壕』に繋がる洞窟の入り口全てに蓋をするような形でシェルターは敷設されていた。それはつまり洞窟には核の影響はない、ということを意味した。


 大人達の狂った様子に、このままシェルターに居続けるのは危険であると全ての子供が思ったのだ。


 それは確かに正解だった。


 最初の核の炎を凌いだ者達が大挙してここ『北海道地下壕』へと押し掛けてきたのだ。


 その時にはシェルター内の物資は全て小学生達の手によって洞窟奥地に運ばれていた。


 勿論彼らのいたシェルターのみの話となる。北海道各地に点在する他のシェルターにも人々は殺到し……殺しあいに発展した。物資の奪い合い、そしてシェルターの独占を巡っての争いはほぼ全てのシェルターで起きたのだ。


 物資のないシェルターへとやって来た者達は早々に他のシェルターへと去っていった。洞窟奥地に繋がる扉に気付くことなく。


 北海道の人間に『助け合いの精神』というものがもう少しあったなら……シェルターの奪い合いで人々が殺しあう事もなかったのかも知れない。


 子供達の判断は間違っていなかった。


 大人に頼るということを止めた逞しい子らは洞窟を拠点として生活を始めていた。


 洞窟内には謎の発光キノコや光る植物の群生があった。


 これこそが『北海道地下壕』の真の姿である。シェルターで暮らせなくなった人々も洞窟に匿うことで北海道の人間全てを救う計画だったのだ。それだけのキャパはあったのだ。北海道全土に広がる地底世界。それは人々を救う希望だったのだ。


 他ならぬ北海道の人間によってその計画は見事にぶち壊されてしまったが。


 北海道は北の地にある。それゆえ寒い。しかし地下洞窟は地熱により一定の気温を保っていた。洞窟の各地には温泉も湧き、謎のキノコがあちこちに生えている不思議な世界だった。


 大人であればたじろいだ。しかし洞窟にいるのは子供達である。彼らはすぐに環境に適応した。適応して……全裸になったのだ。


 ものすごく前書きが長くなったが、ここからが本番だ。


 全員が!


 裸に!


 なってんだよ!


 地熱と温泉によって洞窟内は快適な温度になっていた。そういう場所を生活の拠点に選んだのでそれはいい。寒くないし、暑くもない。快適だから。謎キノコも美味しいし。


 でも!


 なんで!


 全裸なの!?


 まず脱いだのは年長組だった。しかもみんな女の子。


 男子はみんな固まった。


 そして思い当たった。


『キノコのせいか!?』と。


 謎のキノコを食べたから優しくも厳しいお姉さん達がみんなおかしくなってしまったのだ。男の子達はそう思った。生で食べたのがやはり不味かったのか。いや味は美味しかったんだけど。


 でも違った。


 お姉さん達はこう言った。


『服を洗うのめんどいから、これからは全裸で過ごしましょうね』


 地底に太陽はない。洗濯物は極端に乾きにくかったのだ。何せ地下である。温泉や地熱で湿度もそれなりに高い。


 女の子は考え方がドライで合理的。


 こうして男の子達は服を剥かれて全裸となった。勿論お姉さん達からのセクハラも受けた。

 

 女の子も基本はスケベである。


 男の子の方が股間を隠して恥ずかしがる全裸地底世界がここに生まれた瞬間だった。


 そして長い地底生活は始まった。


 地上は放射性物資が飛び交う嵐。


 だが地底世界は平穏そのものだった。子供達は洞窟を探検したりキノコを採取したりして時を過ごしていた。年長組が年少組の先生として勉強を教えたりもしていた。


 シェルターから洞窟に人がやって来そうなものだが、殺しあいの末にシェルターを占拠した者達である。洞窟内も放射能汚染されてると勝手に思い込みシェルターから出ることは決して無かった。外へと繋がる入り口を固く閉ざし、全てを拒絶。例え他のシェルターから交信があっても、それを無視する徹底振り。


 十年も経つ頃にはシェルター内に生存者は居なかった。物資に限りが見えてきた所で数少ない生き残り同士で殺しあいが起き全滅。


 シェルター全ての生存者はこれで全滅した。北海道のシェルターはこれで全滅。まさに死に絶えたのだ。


 でも地底世界は普通に平穏な日々を送っていた。


 男……23。


 女……80。


 ちょっと数が増えた。


 ……ほら、十年も経つとお姉さん達も立派なレディにね? ね? 男の子だって男になったのだよ。うん。

 

 世界は滅んだけど多分大丈夫。全裸地底世界はまだまだ発展の途上にあるのだから。


 でも男女のバランス比がおかしいので男の子達は毎日が大変だ。


 全裸地底世界。


 今日もここでは全裸の人間が平穏に生きている。


 ……平穏なんだけどさ。


 キノコ狩りと称して追いかけるのは止めてくれないかなぁ。遊びなんだろうけどさ。内股になるんだよね。


 ……ふぅ。




 今回の感想。


 真面目に終わらす気は無いのかね?


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