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第四話 『ならず者、組合へ向かう』

 前回までのならず者


 汗と涙に愛おしさ。

「おう、ギガじゃねえかよ! 遅い時間までご苦労なこったな。」


「おかげさまでな。」


 なんてやりとりを俺としているのは街の城門前で門番を務める兵士のトニーだ、正直名前は覚えなくていい。けっこう気さくな雰囲気のおっちゃんである。

 銀色のプレートを着込んでおり、ふさふさな顎髭が生えてるのが結構特徴的かもしれない。


 実はトロールを討伐したあと、俺たちは討伐箇所である頭だけ拾ってしまい残りの死体部分というのは早々に全部"魔法"で燃やし尽くしてしまったのだ。


 というのもトロールの死体というのは残しておくと結構なトラブルの元になるからである。放っておけばいわゆるゾンビ化だとか、そうじゃなくても血の匂いに釣られて"ちょっと強いモンスター"ってやつが寄ってきてしまうのだ。


 そうしてしまうとまあ都合が悪いってんで俺らみたいな組合に入っている連中の間では、モンスターの死体を燃やすのは常識のようなもの、というわけでバレたら罰金とか食らう羽目になる。

 ちなみに組合は今回トロールの討伐箇所を持っていく目的地で、ギルド的な存在だと認知しているが……どうだったかな?


「ああ、ちょっと止まってくれ」


 普段通る分には挨拶くらいなもので絡まれることはないが止められてしまう、やはり今日は少し門番のトニーとお話しすることになりそうだな。


「今日はなに殺してきたんだ? ゴブリンか? 一角コウモリか?」


「そんな雑魚どもじゃあねえよォ、トニーの旦那」


 横から投げられたアルの言葉に怪奇そうな顔をするトニー、疑ってる疑ってる。


「トロールだ」


 トロール、という単語を聞いた顔馴染みの兵士は豆鉄砲でも食らったかのような顔をする。答えを出してやったアルは心なしか自慢げな顔をしている。

 

「そいつぁ結構な大物じゃねぇか、本当なのか?」


「本当に決まってんだろ、ほれっ、見てみろや」


「っとと、うお!?」


 トロールの頭部は大きめの布などで軽く覆っていたので夜闇に紛れて見えなかったのだろう。手渡しするのが面倒くさくて傍に抱えてたトロールの頭をそのまま兵士に投げ渡した。

 パシ、と慣れたような感じで頭部を受け取ったトニーは、布をはいでから暫くトロールの顔の方をまじまじ見つめ、口を開く。


「本物じゃねぇか! 殺ったのか、お前さんらが」


「おうよ」


 どこか感心したような口ぶりで「やるじゃねえか」と溢す。


「ワリィな、通っていいぜ」


 ああ、説明しておくとこの一連の流れってのは一種の儀式みたいなもんで、不審な事がないかこうやってさらりと確認してるって寸法だ。


 食い詰めた俺たちには本来の目的で荷馬車を襲うというものがあったので、もし本当に実行していればこの少しの問答で街には入れなかったかもしれない。


 少し、ゾッとする。


 わりと今ままではそういった犯罪を犯していない立派なno前科者である。

 しかし何かを起こす輩というのは長年の嗅覚で培われているらしく、少々マークされていたようだな。

 こんななんでもなさそうに見えるのに、なかなかやり手なやつ!


 油断も隙もあったもんじゃないな。


「じゃあな」


「おうおう、いってこい。おっとこれはもらっていいのか?」


「まさか。」


 肩をすくめて応え、ははは、と笑い合うと頭を投げ返してもらう。そのまま行っていいぞとばかりに一歩後ろに下がったトニーを横目に街の中へと入っていく。門をくぐる際、街の内側にもう一人の兵士がいたので少し身構えたが、目があってもペコ、と頭を軽く下げる程度であった。


 あまり見覚えのない顔だったので新人だったのかもしれない。


「フゥ、兄貴の言う通りマジで止められるなんてな」


「オデたち、完全に疑われてただ。」


 ゴンズがやっと口を開く、というのも口下手なゴンズから下手な話をさせないために口止めしていたのである。うっかり変なこと言い出しちゃ止めようがなかったからな。

 その辺器用なアルには結構前に出てもらっていたので随分と助かった。


「アル、遅くなったけどよォ。色々と助かったぜ」


「へへっ、よしてください兄貴」


 感謝は後からと言い出したのもアルだったな、ゴンズにやった時みたいにバシバシと力強く背中を叩いてやれば痛そうながらも嬉しそうにしているのが目に見えてわかった。

 ゴンズが羨ましげな顔でぼおとこっちを見てたので構うのはこの辺にしておくか、こういうとこ寂しがりやなんだよなあコイツ。




 そういえばこの街へやってきたのは目的がいくつかある。まず一つはトロールの討伐証明をすることで討伐料というものをもらうことだ。

 ズバリ指定討伐対象に指定されているトロールってのは、並大抵のやつは敵わないのでウハウハである。額を見るのが楽しみだ。


 確か俺が気絶していた間綺麗なやつが助けてくれただとか聞いたが、そいつ一人でやったってならなかなか強いやつだと思う。

 この街にいるなら会ってお礼をしたいけどな、ひとまずこっちは後回しでもいい気がする。こういうのって縁みたいなところがあるしな。


 二つ目はこの快挙をふれ回り自慢すること。

 そもそもがトロールに挑むこと自体、命知らずなやつかマジでつええやつかの二択になるくらいにはヤベエやつなんだ。よく倒せたな……

 なんで、自慢することでけっこうちやほやされるのだ。


 改めて今回の目的は討伐報酬もらうのと快挙の自慢、この二つがメインになってくる。トロールが倒せるやつら、ってのはそれだけすごいことなんだよな。


 と、ごちゃごちゃ考えてる間に組合にたどり着いたらしい。

 いくぞ、第一の本命!

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