プロローグ
「ねー、ねー!いつものお話し聞かせてよー」
「仕方の無い子ね」
窓辺からなだらかに心地よい風か転がり込んで来る。
陽の光に温められた窓辺で子ども達が大人にお話をせがむ。
無邪気な要望に綻ぶ口元を見た子ども達は各々の椅子を持ち、窓辺のイスに腰掛ける女性の周りに集まってきた。
嫌がるふうもなく柔らかな声色で話し始める
「これは世界の始まりの続きのお話し」
最古の神アラルハーゼスが降り立ち「天と地を繋ぐ」と唱え、大地と力の神グラデウス、天空神アインテールが生まれ世界の礎となった。
次にアラルハーゼスは「風と水」と唱え、風と緑の神シルフィーネ、水と生命の神アウリウスが生まれ豊かな自然と生命が生まれた。
神々の生まれた時代、生命の溢れた楽園に満足したアラルハーゼスは最後に正義と法の神テンビエニスを生み出すとその姿を消した。
グラデウスは人族を、アインテールは獣族を、シルフィーネはエルフを、アウリウスは海獣族を創り出し大地と海に住まわせた。
それぞれの種族が手を取り豊かな暮らしをしていた神々の時代。
長く続くと思われた日々に一石が投じられる。
テンビエニスは世界の在り方に異を唱えたのだ。
「良きとは何か悪しとは何か」と。
その一言に神々の時代は終わりを迎えた。
テンビエニスの言葉から生まれた深紅の髪と瞳をもつ死を司る神デスキネートは自らの肉から魔族を、血からアンデッドを創り出し豊かな大地を蹂躙した。
神々の怒りに触れたデスキネートは大軍を率いて神々へ宣戦布告、長い戦乱の時代が始まる。
グラデウスは神々の祝福を得て自らも瀕死の傷を負いながらも辛うじて勝利を納めることとなる。最終決戦に敗れたデスキネートは最果ての山脈に封印され、魔族は果の大地へと追放された。
荒廃した大地に1人の英雄が降り立つ。
英雄であり殺戮王と称え忌み嫌われる、後に大帝ルドルフォンと呼ばれることになる男は、最も弱い人族を束ね他種族を打ち払い繁栄の時代を作り上げた。
如何に変革を得ても世はいつの時代も貧しく侘しい。
血で血を洗う時代。
大帝が没して400年が経つ今尚、血生臭く混沌としていた。
これは、世界の始まりの続きの物語。