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神隠し事件

 十月半ばにも関わらず蒸し暑い日だった。

 風がないということもあり、部屋に居る者は十月にも関わらずクーラーをつけてしまったという者や、そうめんを食べて体を冷やしたという者も居た。ニュースでは「季節外れの暑さ」「晩と日中の気温差が大きいため、体調管理に気をつけて!」などと注意喚起していた記憶が残っている者も居た。

 そんな中、神隠しにでもあったように一人の少年が忽然と姿を消した。

 身体を動かすことが大好きで活発な子だった。中学ではサッカー部に所属し、高校に上がってもサッカー部に入部し、この春からキャプテンとして仲間を率いる、そんな責任感も持ち合わせた少年だった。彼女の噂はめっぽう聞いたことは無かったが、居てもおかしくない風貌だった。

りょう!」

そう元気よく手を振っているのは幼馴染の理佐りさだった。亮と理佐はいつも一緒だった為か、よく『おしどり夫婦』と揶揄われていた。理佐はそんな周りを気にも留めてない様だったが、亮は頬を赤らめて気にしている様子だった。そんな彼の姿を見た者は皆、その愛らしさに微笑んでいた。

 そんな彼が高校二年の春、突如として姿を消した。突然のことで驚きを隠せずに居たのは家族だけではなかった。彼をよく知る大勢の者たちが動揺していた。また、サッカーの強豪校の次期キャプテンということもあり、この青陽せいよう高校で知らない者は居なかった。

 少年が消えた日。

 まだ日は短く、十七時でも辺りは暗くなる頃、一向に部活動へ来ないキャプテンを心配して副キャプテンが顧問のところへ行った。顧問は、いやぁ、部活に行ってるもんだと思ってたんだがと、怪訝な顔をしていた。

午後十八時。まだ部活動に来ない少年を心配してか顧問が少年の家に電話を掛けた。少年の母親と電話が繋がったものの、息子はまだ帰ってきてませんよ、部活に出ているはずじゃ…と、こちらも怪訝そうな顔で質ねられたのは容易に想像できた。

午後二十一時。さすがに帰ってこない息子を心配して両親は警察に連絡した。母親は手あたり次第、我が子の友人関係から電話を鳴らした。その中に少年の幼馴染、理佐も居た。理佐も少年の家族と一緒に一晩中、閑散とした街の中で少年の名前を呼んだ。

――少年はもう、戻ってこない。

そんな絶望的な言葉が皆の心の中を過った。

 その言葉通り、その日少年はとうとう帰ってこなかった。

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