始まり、始まり
喉が焼ける様に熱い。まさか毒か?救急車を呼ばなければ。くそ、手に力が入らねぇ。携帯が目の前にあるのに。視界が、暗く…
っはぁ!はぁ、はぁ、ここは…?
俺は生きてるのか?身体は問題なく動く。しかし、視界が開けても一面真っ白で訳わかんねぇ。あ、いや、そんなことはなかった。なんかでかい四角の箱があるな。ちょっと中を見てみるか。
文字のかかれたボールが沢山あるだけか。
治癒強化、魔獣使役、鑑定、未来予知…よくわかんねぇな。
なんか一つだけホコリを被って汚れているのがあるな。なんだこれ、不老不死?そういえば俺、死んだのかな。わ、やべ、なぜか不老不死と書かれたボールが消えてしまった。
なんかやばいことしちゃったかな。
「あー悪いっす。遅れた」
「うぉ!誰だ!」
後ろから突然女の声がした。
「あ、どうも。はじめまして。驚かせてすまないね。私は、ええと、誰だっけ?」
何を言っているんだ?この女は。
「あ、確かナントカカントカの仲介人ってやつだったと思います。」
いやわからないが。何しに来たんだこいつ。白い一枚の布を体に幾重にも巻いた様な服、着方が雑なのか、はたまたそれが正しいのかは知らないが、余った布が下に長く垂れている。
「俺に何か用か?」
「あ、君、これから生まれ変わるから。その為の手続き?説明?をするね」
生まれ変わる、ということはやはり俺は死んでいるのだな。「だいたいの状況は掴めた」と言えればいいのだが。
「そこに箱あるっすよね。あん中から好きなスキル選んでくださいな。どういうスキルかは私から説明するんで」
考えても仕方ないか。ここはこの仲介人とやらの話に乗っておこう。
「この『鑑定』ってやつはなんだ?」
「『鑑定』は『鑑定』っす。鑑定した物の知りたい情報なんでも得られるっすよ。デメリットはスキル使ったら目が疲れます。それにします?」
「ちょっと待ってくれ。その生まれ変わる世界はどういうところなんだ?」
多分だが、聞いておいて損は無い質問だろう。
仮に『鑑定』を選び、生まれ変わった先に鑑定するものが何も無い世界に飛ばされようものなら無駄でしかないからな。
「化学の変わりに魔法が発展した世界だと思えばいいと思うっす。あとは生物がちょっと違うくらいでほとんど地球っすよ。君はその世界にヒトとして生まれ変わるっす」
なるほど、ファンタジーな世界か。ほとんどが地球と一緒ということは一種のパラレルワールドの様なものか?
「じゃあこの『歩行』という能力は?もしかして俺は足がない状態で生まれ変わるのか?」
「いや、『歩行』は歩行に関係する能力とか関係しない能力とかが身につくスキルです。デメリットはムチムチの脚にならないことっす。」
なんで関係しないものまで?それにしてもデメリットがデメリットのように感じないな。
「地味に見えるからあんま人気ない能力なんですよねー」
地味、それはいいな。やばいやつに絡むことも少なくなるだろう。変な人間と関わって災いをおびき寄せるなんてどれだけ実感してきたことか。
「この能力が欲しい」
「え、それでいいんすか?」
「ああ、問題あるか?」
「いやいや、きっとそのボールちゃんも喜ぶっすよ」
この女たまに変な発言をするな。
「ゴミ回収みたいで悪いんすけど、ついでにこの『伸縮舌』も貰ってくださいませんかね。能力は舌が五十センチほど伸び縮みする能力で、デメリットは舌を伸ばしたときの絵面がキモイことっす。まあスキル使わなければデメリットもないですし貰ってくれませんかねぇ」
「あ、じゃあ、はい、貰います。いいんですか?二つ貰っても」
「問題ないっす。こちらの話になるんすけど、このボール私が作ったやつで誰かに使って欲しかったんすよねー。なんかそっちの世界では舌が長いと何かが上手いとある時に聞きましてですね、もしかしたら需要があるのかなと思ったんですけど全然ですよ」
一体何を見聞きしてるんだ。この人は。
それにしても、ゴミ回収とか、何かが上手いとか言うから誰も受け取ってくれないんだろうな。
「じゃあこのボールをどうすればいい?」
「持って欲しいと念じれば大丈夫っす」
俺は言われるがままに、それを欲しいと念じた。
すると、ボールは消えていった。あの不老不死と書かれたボールの様に。ここで理解した。俺はあの時、不老不死を無意識に欲して、不老不死の力を手に入れたのだと。
「じゃ、行ってらっしゃいっすー」
「え、早くないか。って、うわああぁぁぁ」
突然床が抜け、暗闇の中落ちていった。




