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殺戮魔人の冒険譚 ~仇探しのついでに仕事を始めた結果、周囲から一目置かれるようになっていました~  作者: シノヤン
パート3:争奪

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第55話 デッド・ウェイト

「お、俺達…どうすれば良いんだ? 」


 下に降ろされ、なるべく距離を取ろうと走り出していた仲間達にアルが言った。


「知るかよ。とにかく足手纏いだと思われたんなら仕方ないさ」


 ローマンは息を切らして答えたが、どうも怖気づいているらしく周囲の様子を窺っている。立て続けに急変する事態を前にして、自分がどの様な立ち位置で動けばいいのかが分からなくなっているのは彼も同じだった。ひとまずはムラセに言われた通り、この場を離れて先程までいた地点へと戻る以外に思いつかなかった。




 ――――一方で残って戦い続けるベクター達は、想像以上に苦戦を強いられていた。変異しているプレタ達の厄介さは勿論だが、コアを守ろうと蠢く触手にも手を焼かされる。持久戦に持ち込むのは体力や頭数からして不利である。周りに群がるプレタを押しのけてコアの破壊を優先する事も出来るが、そうすれば今度は俊敏でありながら逞しい触手が襲い掛かって来た。ひとまずは触手で攻撃をされないようにコアから距離を取り、プレタの変異種と戦い続けるしかなかったのである。


「ジリ貧だ…」


 うっかりオベリスクがすっぽ抜けたものの、レクイエムで殴り殺したベクターが呟く。そのまま近くに転がってしまったオベリスクを再び拾おうとした直後、目の前でアーサーが数体の変異種と押し比べ状態になっていた。力負けしているのか、どんどん奥へと押しやられており、装甲の所々から火花が微かにチラついた事からかなり装備自体にも負担をかけているらしい。


 ムラセも同様に手こずっており、”ゲーデ・ブリング”で殴り飛ばしてはいるが顔色は決して良くない。まだ体力や精神的にも場数を踏む必要があるかもしれないと、彼女自身がそんな風に未熟さを恥じていた直後だった。一体が背後から迫っている事を察知し、ムラセはすぐに蹴りを入れようと振り返ろうとする。ところが、地面に転がっている倒したと思っていた変異種の一体が自分の足を掴んでいた。


 払い除けようと動いた一瞬の乱れが大きな隙となり、彼女の横腹に変異種の刺々しくも頑強な拳がめり込み、体の内側から強烈な鈍痛と熱さが瞬く間に広がっていく。床に転がり、起き上がろうとすれば殴られた箇所から血が滴っていた。おまけにズキンと鋭い痛みが走る。肉体の表面だけではなく、内部にも影響が出ているとすぐに分かった。


「っ…ぐっ…‼」


 それでも尚、自分の身に迫っている危険から逃れようとムラセは藻掻く。しかし味わったことの無い負傷による苦痛が、彼女を肉体的にも精神的にも摩耗させていた。ここで立ち上がらなければ死ぬが、立ち上がった所でこんな状態では何もできない。気が付けば頭の中が真っ白になっていた。


「クソ ! 」


 ベクターが悪態をついた。ムラセに群がろうとする変異種をオベリスクで叩き飛ばし、彼女に近づいてから容態を確認する。すぐに死ぬわけではないが、戦闘には参加できそうにない。


「立てるか⁉」

「……何…とか」

「余計な事はするな。そのまま下がってろ」


 ベクターが次々と襲い掛かろうとする変異種たちを相手取りながらムラセに言った。不甲斐なさをどこか感じつつ、ムラセが下がっていると事態に気づいたアーサーもその渦中に加わって来る。そして二人の前に背を向けて立ち塞がった。


 直後、アスラの背後に備えられていた二つの砲塔が変形し、両肩へと自動で装着される。次の瞬間、光と共に何かが放たれたかと思えば激しい爆発音が響き渡った。爆風に呑まれかけるベクター達だったが、アーサーが前にいたお陰で事なきを得ると、辺りに散らばった黒焦げの散らばった変異種の死体に目を向ける。


「ありがと…欲を言えば、もう少し早めにやって欲しかったが」


 ベクターが礼を言った。


「出来れば使いたくなかった。これは…うっ」


 何かを言いかけたアーサーだったが、突然呻き声を上げて跪く。


『連絡、急激な魔導エネルギーの消費とそれに伴うアスラのオーバーヒートを確認。ったく、”リベリオン”をマジで使っちまうとは…装備の冷却のために全ての機能をシャットダウンして排熱をさせている。筋力補助も魔力探知も使えなくなるから気を付けろ』

「問題ない。歩いて移動ぐらいなら出来る」

『…一応言うが百五十キロあるって聞いたぜ、その装備』

「違う。一四八キロだ」

「たいして変わんねえだろ。何食って育ったらそんな体になるんだ…まあ後でな」


 オペレーターとの通信が終わり、装備の重さに耐えながらアーサーはぎこちない動きで立ち上がり、何とか歩き出してベクターへ近づく。


「邪魔はいない。今のうちにコアを破壊しろ… ! 」

「あいよ。ウチの連れを頼む」


 そのまま彼の横を通り過ぎ、ベクターは首を鳴らしてコアを睨む。爆発を耐えるためにわざわざ触手がコアを覆いつくしていた。


「タネが分かればこっちのもんだ。同じ手は通用しねえぞ」


 そのままオベリスクを担いで走り出し、再び襲い掛かる触手を避けて行った。進路を阻むのであれば叩き斬り、そうでなければ躱すか飛び乗って行きながらコアの元へと駆ける。


「オペレーション。爆噴壊突デモリション・フューリー


 ベクターの合図で勿体ぶって使うのを躊躇っていたレクイエムの変形が発動した。まとめてやって来た触手にオベリスクを刺し、怯んだ瞬間に飛び掛かったベクターはとてつもない熱を持っているコアへしがみ付き、レクエイムを全力で叩きつける。攻撃によってコアはひび割れて真っ二つになってしまう。結晶体から煌めきや色が消え失せていくと最後には砂の様に散り散りになり、完全に崩壊した。

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