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殺戮魔人の冒険譚 ~仇探しのついでに仕事を始めた結果、周囲から一目置かれるようになっていました~  作者: シノヤン
パート3:争奪

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第53話 ハプニング

「しっかし、雑魚相手には滅法強いな…サボれるとは有り難い」


 口喧嘩が終わり、アーサーを加えた一行は別の胃袋を目指し進んでいく。道中に群がるレプタ達は、持ち出した機銃を使って軒並み射殺していった。アスラによる補助もあって軽々と扱って見せるアーサーを尻目に、気が抜けたような欠伸をかましながらベクターは呑気に言った。


「弾切れだ」


 アーサーは呟き、バットを振る様にして機関銃の銃身をレプタへ叩きつける。そして機関銃と引き換えにレプタの頭を完全に粉砕した。そのまま腕部に付いているリストブレードを作動させる。


「…あいつ、パクりやがったな」


 ブレードの刀身がチェーンソーの様になっているのを見たベクターが愚痴を漏らした。小振りとはいえ凄まじい切断能力を持つリストブレードの手数と、これまでよりも格段に性能が上がっている装甲の頑強さに任せてねじ伏せていくアスラの姿は、資本の持つ力を一行に思い知らせる。


「ひとまず終わりだ。先に進むぞ」


 アーサーが辺りに散らばった死骸を蹴散らしながら怒鳴る。そのままついて行く内に再び広い場所へと全員が躍り出た。先程いた場所以上に臭いがきつくなっている。念のためにガスマスクを被っていた他の者達とは違い、息苦しいからと素顔を晒していたベクターはその臭いを直に食らってしまう。


「…おあ。し尿処理のバイトを思い出す」

「ああいう場所って悪臭対策とかしてるもんだろ ? 」

「汲み取る現場でバイトしてた時がある。臨時でな…おえっ」


 後悔した様子でガスマスクをかぶり直したベクターがえずく。ローマンの問いかけに対しても吐き気を催しながら答えて周周辺の状況を確認しようとしていた。


「あんた平気なの ? 」

「…頭部のヘルメットに脱臭用フィルターが備わっている。ついでに臭いに含まれている成分の分析もしてくれる」

「へぇ~ハイテク。金持ちは違うな~」

「これほどではないが、うちで働けば実績次第で良い装備を支給してもらえるぞ。福利厚生も意外と充実している。例えば負傷した場合には――」

「節操ねえな企業勤めって」


 ウィンディが物珍しそうにアスラの装甲を撫でていると、アーサーはスペックの一端を教えた上でシアルド・インダストリーズの紹介まで始めた。ベクターは遠巻きに阿保らしいと小馬鹿にしつつ、付近に自分達が来た道と同じような穴がいくつか空いている事に気づく。


「どうする ? 手分けをするわけにもいかんだろう」


 全員に向かって振り返りながらベクターが言った。


「ちょっと待ってろ」


 アーサーがベクターに伝えると、いきなり無線で連絡を取り始めた。


「突然で悪い。解析を始めてくれ」

『了解。だが、大まかな位置しか特定できないぞ。後はそっちで調べてくれ』

「それで構わない」


 オペレーターがアーサーから連絡を受け取ると、レーダーを起動してクロノスの状況を調べ始める。小規模な魔力の反応がクロノスの体内から検出されていたがそれは無視し、クロノス自身を取り巻く膨大な魔力の源がどこなのかを探り当てようとした。


『俺だ。あんた達が今いる場所をさらに進め。そして…頭上の方にあるかもな。とにかくデータは送るから後はそっちで頼む』

「分かった。ありがとう」


 無線を切断し、アスラに備え付けれられているレーダーを起動した。反応が強くなっている方向のみを示すという簡易的なものだが、今の状況では十分である。


「ついて来い。恐らくだが近くまでは行ける筈だ」

「…何でもアリか」


 アーサーの指示にを聞くベクターは、その充実した装備を内心羨ましく思いながら彼について行く。途中で幾度かレプタと交戦はしたものの、大した障壁になりはしなかった。


「…この上だな」


 しばらく歩いていた矢先、アーサーが呟いた。


「分かった。どいてろ」


 ベクターは周りを押しのけてからアーサーが示す方を見上げる。そしてレクイエムで握り拳を作った。


「オペレーション。”爆噴壊突デモリション・フューリー”」


 イフリートとの戦いで見せた新しい形態に名前を付けていたらしく、合図と共に変形したレクイエムを構える。そのまま跳躍すると同時に、拳を突き上げて肉壁へ叩きつけた。殴った際の爆発や衝撃によって風穴が空き、別の空間が頭上に広がっていることを知ると、黒焦げになった肉壁の縁へとしがみ付いてからベクターは上へよじ登る。アスラに搭載されているグラップリングフックでアーサーは上に昇り、ムラセは”ゲーデ・ブリング”を使って簡単に彼らへ追いついた。


「あった」


 少し半笑いになりながらベクターは言った。目前にあるのは繊維質な肉に覆われた巨大なコアである。その濁った色をした艶の無い結晶体は独特な瘴気をまとっており、少し近づくだけで変な寒気がしてしまう。


「ほう…たまげた…こんなにデカいのは初めてだ」


 周囲に危険がなさそうだと判断したムラセによって他の者達も連れてこられたらしく、サヴィーノは呆然と眺めながら口走っている。


「このコアは持ち出すのか ? 」


 アーサーがベクターへ尋ねる。


「それじゃ荷物が増えるだけだ。破壊する。その方が手っ取り早いしな」


 ベクターが骨を鳴らしながら歩き出したその時、何かが彼の胴体を貫いた。


「なっ…⁉」


 驚いたアーサーは攻撃が来た方角を見る。コアの後ろ側から悍ましい数の触手が伸びている。その内の一本がベクターの体に深々と突き刺さっていた。

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