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殺戮魔人の冒険譚 ~仇探しのついでに仕事を始めた結果、周囲から一目置かれるようになっていました~  作者: シノヤン
パート2:ターゲット

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第35話 突破口

「…もし、あいつらがやられちまったらどうする ? 」


 リーラの後を追いかけて来たタルマンがふと尋ねた。彼らの力を疑っているわけではないが、万が一という事もあり得る。


「その時は知り合いに頼んで亡命でもするわよ」


 リーラは振り返る事なく駆け足で答え、少し息を苦しそうにしながら騒動の渦中へと向かう。どこか心配している様な不安げな態度が垣間見え、少々疲弊しているのか余裕が無くなりつつあった。


「だ、大丈夫ですか ? 」

「大丈夫。激しく動いたの久々だから…煙草やめようかしら」


 あまりにも息苦しそうに呼吸を荒げるため、ムラセがたまらず気遣ってしまうがリーラは自分の不摂生が悪いのだと苦笑いした。そのまま逃げ惑う人々を掻き分け、有象無象の車両が乗り捨てられている道路へ差し掛かった時、自分達の右手にあったビルへケルベロスが吹っ飛ばされ、叩きつけられている瞬間を目撃する。


 ガラスが砕け散り、建造物が震える。やがて煙を上げながら倒壊する建物を前にしたリーラ達は土煙や衝撃から逃れるために近くのトレーラーに身を隠した。


「……意識高い系みたいな事言う癖に実力は伴ってるなんて、初めて見たぜ俺」


 一撃で吹き飛ばされたケルベロスに呆れる一方で、ベクターは呆然としながら振り向きざまに言った。イフリートが首を鳴らす間にも、炎に包まれた無数の拳が襲い掛かって来る。伸縮自在にリーチを変え、頭上や正面から迫って来る攻撃をベクターは必死に防いでその場を凌いだ。


「群れるのはダメだが数に頼るのはセーフなんだな…」


 そうやって愚痴を零した矢先に、指を開いた状態での張り手が自身の体に叩きつけられた。焼けるような熱さなのは勿論の事、その硬さはさながら岩石である。そのままシアルド・インダストリーズ本社の壁を突き破り、出動しようとしていた兵士達の目の前を横切ったうえでホールの奥にある壁へ叩きつけられる。


 巨大な陥没に埋もれた状態で辺りを見てみると、兵士達が呆然と立ち尽くすか、或いはへたり込んでいた。


「お~い…気を付けろ。結構…強いぞコイツ…ってうぉああ‼」


 巨大な手に押しつぶされそうになるベクターは、少々苦しそうにしながら大して役に立たない情報を伝える。その直後に体ごと掴まれてしまい、恐ろしい速さで引き戻されて行った。再び外へと連れ出されたベクターだったが、そのまま握りつぶされようとした直後にイフリートの背中で小規模の爆発が起きる。


「…貴様から死にたいというわけだな」


 小賢しい攻撃に虫唾が走ったのか、イフリートは鈍重な動きで振り返りながら言った。


「やはりダメか…」


 グレネードランチャーを構えていたアーサーは、想定はしていたにもかかわらず対して効果のない近代兵器の無力さを嘆く。そんな彼の方にイフリートはベクターをぶん投げるが、アーサーが身を低くして咄嗟に躱したせいで近くの商店にベクターは叩きこまれる。棚を押し倒し、商品を辺り一面に散乱させながらベクターは倒れたまま項垂れた。


「受け止めるぐらいしてくれよホント…」


 自分の能力基準で勝手な無茶を要求しつつ、ベクターは周りに散らばっている商品をどけながら立ち上がる。レジカウンターの方にて気配を感じたが、店番らしい青年が縮こまって震えていた。


「どうも。請求はシアルド・インダストリーズの方に頼む」


 詫びを入れてから店を出ると、アーサーが一撃で叩きのめされていた。そのままトドメを刺そうとイフリートは動くが、すぐに背後からケルベロスが奇襲を仕掛ける。瓦礫の中から飛び出すと、そのまま飛び掛かって首筋に齧り付いた。


「煩わしい‼」


 背中から強烈な爆炎を呼び起こしてケルベロスを吹き飛ばし、イフリートは怒鳴る。その光景に対して困ったように頭を掻きながらベクターは左腕を見た。どうやら十分に魔力が溜まったらしく光を放っている。


「…未だに基準が分からないんだよな、これ」


 魔力が溜まる条件について苦悶していた時だった。左腕が勝手に変形を始め、頑強な装甲に包まれた拳へと変貌する。肘や各部位にノズルの様な噴射機構が備わっており、拳を握れば熱風と共に軽く煙を噴射する。これまで見た事の無い形態だった。


「え…え ? 何これ」


 最初こそ戸惑っていたベクターだったが、握った際に唸りを上げる拳の機構や漲ってくるエネルギーからして突破口になってくれるかもしれないという期待を抱く。以前に吸収したグリフォンのコアが関係しているのかもしれなかったが、今はどうでも良かった。


「まあ、使えば分かるか」


 肩を回しながら気合を入れ、ベクターはそのまま走り出した。幸い、イフリートはケルベロス達に気を取られて自分の存在を忘れているらしい。大破した車両や散らばった瓦礫を躱していき、イフリートの背後へ辿り着いてから跳躍をする。そして背中へ左拳を叩きつけた。


 拳を叩きつける直前、ノズルから出てくる煙が推進力となって更なる加速を拳に与えた。そして叩きつけられた瞬間、拳が爆発をして勢いよくイフリートの巨体を吹き飛ばす。ビル街をまとめて更地にする勢いで押し倒しながら転がっていくイフリートを余所に、ベクターは左腕を抑えてのたうち回った。


「ああああああ!!痛ってええええ‼」


 悶え続けるベクターの事など気にも留めずに、アーサーはイフリートが吹き飛ばされた方角を眺める。そしてベクターやケルベロスの方を改めて見た後に、自分には場違いな戦いが繰り広げられている事を改めて悟って小さく身震いを起こした。

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