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殺戮魔人の冒険譚 ~仇探しのついでに仕事を始めた結果、周囲から一目置かれるようになっていました~  作者: シノヤン
パート2:ターゲット

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第31話 発見

「ところで…あんたの目的は ? 」


 綺麗に整備された街道を、不相応に汚れた車で進んでいたジョージは思い立ってイフリートに聞いた。スラム街とは打って変わって身なりの整った人々が往来している歩道や、立ち並んでいる多様な店舗に気を取られていたイフリートは無言のまま彼の方へ意識を戻す。


「探し物が…あるって言ってたから。でも何を探してるのかが分からないんじゃ、行動しようがないだろ ?」

「黙って情報が集まる場所とやらに連れていけ。貴様に答える筋合いはない」


 ジョージに反論の隙を与えようとせずにイフリートは強めに言ってから再び窓の外へ目を向ける。ジョージはただの運転手扱いな自身の境遇に呆れ、彼に対して少しムッとした様子で交差点でバンを停める。


「なあ。俺はさ、これでも真面目に仕事をするタイプなんだ。仕事をする上で一番大切なのは、目的やゴールを明確にする事だと思ってる。マラソンと同じで…いつ終わるかも分からない作業をチンタラ続けてられる程、人間はタフじゃない。計画も立てられないし、モチベーションも下がっていく…だからその都度目標を定めて『今日はここまで頑張ろう』ってやっていくわけだ」


 信号が赤になったのを見計らって、ジョージはどうにか意図を聞き出そうとするために持論を語り出した。


「あんたが目的を言ってくれなきゃ、俺だってどう動けばいいか分からない。今だけでも良いから、互いを信頼して一つの目標に向かって協力していかなきゃ。そうすれば…えっと…ほら、もっと早くお目当てのもの…?が見つかるかもしれないし。力になれるかも…たぶん」


 本当の所、彼にとってはどうでもいい思想であった。仕事人として意識を高く持ちたがる友人の一人が自惚れている様な得意げな顔つきで喋っていた事を、そのままそっくり真似をしているだけである。とにかく一刻も早く用事を済ませ、この異常者から解放されたいという思いによって出来る限り現状を整理しなければという考えに至った。それだけである。


「…レクイエムだ」


 信号が青になって動き出した瞬間、イフリートはしょうがなさそうに言った。


「レクイエムってクラシックの曲だっけ… ? 楽譜かレコードでも欲しいのか ? 」

「…話すだけ無駄だったな」

「な、何だその言い方…あんたの情報が少なすぎるんだよ…コミュ障が」


 とりあえず自分の中にあった知識から、クラシック音楽の事だろうかとジョージは探ってみるが、当のイフリートは舌打ちをしてから呆れた様子を見せる。流石にカチンと来たのか、小言を言い始めたジョージだったがイフリートがこちらを睨んでいる事に気づいてすぐに口を噤んだ。


「と…とにかくうちの会社に行こう。何か情報を探れるかも」


 必死に顔を見たくないと運転に集中しながらジョージが言っていると、シアルド・インダストリーズの本社が見えて来た。少し安堵した様に顔をほころばせていたジョージだったが、異変に気付いてフロントガラスから見える外の景色に目を凝らす。


「え…?」


 目を凝らした先で見えた光景に、ジョージは思わず呟いた。人が飛び降りている。散らばって落ちていく窓ガラスや砕けたコンクリートに混じって、壁にしがみ付く様なポーズで飛び降りている人影が僅かに見えた。段々と付近も慌ただしくなっている。事故か…それとも自殺だろうか。だとしても警備がいる白昼にそんな事が出来るだろうか。余計な事を考えてしまうが、今必要なのは飛び降りた人間の安否や身元の確認である。


「少し待っててくれ。調べて来る」


 本社は目と鼻の先にある状態だったが、わざわざ駐車場へ行くのも面倒だと路肩に停めながらジョージは言った。すぐさま後ろの座席に積んでいた自分の武装を手に取ってからバンを飛び降りる。そのまま有事の際に使用が出来る様にと、安全装置を解除し、ジョージは銃を携えながら落下地点だと思われる場所へ急いだ。


 逃げ惑う人や、物珍しそうに見物をする人々を押しのけてジョージは向かったが死体は無かった。あったのは、服についた汚れやらをはたきながら上を見上げるベクター達の姿である。


「ホント、すげえよなあ。お前の左腕」

「だろ ? 建物傷つけちまったが…まあ、おあいこって事で良いだろ」


 タルマンは興奮気味にベクターへ話しかけ、彼もまた建物の様子を窺いながら答えた。ジョージは壁に付いている抉られたような跡が高層から一直線に伸びている事に気づき、何かを食いこませたまま下まで落ちてきたのかと考えた。しかしベクターの左腕を見た事で、その不気味な左腕を使ったのだろうかと疑った。そう納得するしかない程に、左腕の持つ雰囲気や見た目は異様であった。


「預けてた荷物どうします ? 」

「今更取りに行くのも嫌だし、帰ろうぜ。新しいの買おう…っておっと」


 ムラセが預けていた持ち物について思い出していたが、ベクターは放っておこうと言って後ろを振り返る。そしてアサルトライフルを携えているジョージと目が合った。


「えっと……怪我は ? 」

「この通りピンピンしてるよ、気遣いどうも。兵士の鑑だね」


 ひとまず惨い姿になった死体が無い事にホッとしつつ、ジョージはベクターに尋ねるが、彼は呑気に問題無いと言い切る。そしてマニュアル通りの対応をしてくる真面目さを褒めた。


「そ、そうか…一応現場の確認をするのと、上層部に連絡を入れたい。その場から動かないでくれ。抵抗しなければこちらも攻撃はしない」


 引き続きジョージは事務的な調子で彼らに告げるが、それは困るといった風にベクターは首を横に振った。そして無視して歩き出そうとした時、ジョージの背後から近づいて来るイフリートへと視線が移ってしまう。


「お、おい… ! 待ってろって――」

「小僧、どけ。獲物がいた」

「獲物…あれが ? 」


 慌ててイフリートを手で牽制しようとするジョージだったが、イフリートの発言によって再びベクターの方を見る。


「どうした ? お前の彼氏かそいつ ?」


 そんな二人の事情を知る由も無いベクターは気だるげに煽った。一方でイフリートは彼の左腕を睨んでいる。


「こんなに早く見つかるとはな」


 不気味がっているベクターだったが、そんな彼とは対照的な笑みを浮かべてイフリートは言った。

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