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殺戮魔人の冒険譚 ~仇探しのついでに仕事を始めた結果、周囲から一目置かれるようになっていました~  作者: シノヤン
パート2:ターゲット

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第21話 想定外

 中に入ってみれば、さながらバーゲンセールでも起こっているかのような賑わいを見せていた。コンクリート造りの角ばった内装のあちこちにはテーブルを囲んで雑談を繰り広げている者、何やら怪しげなヒソヒソ話をし続ける者、気に入った相手へナンパをする者など目的は千差万別である。そんな彼らを避け、ある時は構わず押しのけながらベクターは先へ進んでいく。


「はぐれるなよー」


 呑気に呼びかけるベクターへムラセがついて行ってみると、辿り着いたのはそれなりに頑丈そうな金網で仕切られている区画だった。


「いらっしゃい」


 妙に細身でそばかすの似合うエルフがニタつきながら歓迎の挨拶をする。当然彼らとの間にも金網が設けられており、完全に外部の人間は入れない様に対策をされていた。重要な機密や仕事に関する情報などを扱っているが故の配慮である。


「ギルドへの加盟を考えてるんだが」

「かしこまりー…要望あるんなら聞きますよ」

「面倒な手続が無いのと、ピンハネが無いと嬉しい。あと…ああ、仕事のやり方に口出ししてこない所」

「了解っス。ちょっと調べるんで待っててください」


 妙のノリの軽いスタッフは、ベクターの要望などを一通り聞き終えてから奥へと消えて行った。彼の慣れてそうな対応からして、自分の様な条件を出す者は珍しくないのかもしれない。となれば思っていたよりは良い結果に期待が出来そうだとベクターは一人で満足げに笑う。


 何ならこのまま見つからなかったとしても、「何もしないよりはマシだろ」と言い訳が出来るなどと考えてしまう。大した努力もせず、求人案内を貰った程度で職探しをした気になるニートの様なしょうもない愉悦感で満たされつつあった。というより、本音としては人付き合いやらに労力を割きたくな彼にとっては無いと言ってくれた方が嬉しかった。


「すんませーん。待たせちゃいました ?」

「いや別に。どうだった ?」

「結構きつかったっスけどね…あったんですよ。一件」

「…へえ、どこなんだ ? 」


 スタッフにわざとらしく尋ねるベクターだったが、、内心ではこういう時こそ無能でいて欲しかったと嘆いた。


「シアルド・インダストリーズ。最近やたらとデーモン狩りに力入れてるっぽいスからね~…クソみたいな額でも基本給ありで、装備の貸し出しも持ち込みもオーケー、経歴次第ではあるんスけど即日採用も有り、何より中抜きもそんなにキツくな――」

「あ~、うん。パスで」

「なるほど…って、ええ ? この上なく要望通りっスよ!?いいんスかホントに ? 」

「最近ちょっとな、まあ…色々あるんだこっちにも」


 希望通りのギルドが見つかった事を報告したものの、気まずそうにベクターが断った事でスタッフは素っ頓狂に反応した。


「ん ? 何か騒がしくないですか ? 」

「みたいだな。行って見るか」


 その頃、ムラセとタルマンは人だかりが出来ている広場の方へ、ベクターに内緒で向かっていく。どうやら一人の男性がスーツを着た大柄な輩達に絡まれているらしかった。


「ま、待ってくださいよ…別に最初から騙すつもりってわけじゃ――」

「しらばっくれても無駄だ。この辺りにデマを流しては高額を請求する情報屋がいると聞いた。おまけに無許可でな」


 細めの白髪が目立つ男性は隙を見て逃げ出そうとするが、そうはいかないと四方を囲まれていた。屈強そうな男たちはジャケットのボタンを外しており、その理由は素人であるムラセにも良く分かる。懐にしまっている装備品をすぐ取り出せるようにするためであった。そして彼の背後にいる一人は、既に懐へと手を突っ込んでいる。


「あの男の人、殺されちゃうんじゃ…」

「あれは…まさか”フジ”か ? ざまあ見ろ。アコギな商売ばっかしてるからそうなるんだ」


 絡まれている男性を心配するムラセだったが、対照的にタルマンは彼を見てほくそ笑んでいた。


「タルマンさん、助けてあげましょう。このままじゃ… !」

「あんなの助けるだけ無駄だぜ。アイツのおかげでどれだけ損してきたか…っておいおい ! 嬢ちゃん待てって ! 」


 ヒソヒソ話で耳打ちをするムラセを制止しようとするタルマンだったが、懐から拳銃を取り出した瞬間にムラセが走り出した事で慌てて彼女を追いかけた。そして今まさにフジへ拳銃が向けられようとした瞬間、ムラセが体で拳銃を持った男へぶつかってみせる。


「 ! なんだてめえ ! 」


 一度だけ銃声が鳴り、放たれた弾丸が灰色の柱へぶち当たると周りにいた者達が距離を置いた。拳銃を持った男は思わずムラセへ怒鳴るが、彼女はパニックに陥ることなく彼を見返す。


「せ、せめて場所を選んでください ! 」


 言い放った直後、やってしまったとムラセは後悔する。それと同時に、自分の言い方では場所を選べば殺しても良いと取れるようなニュアンスになっているではないかと、その言い回しのダサさを恨んだ。


「突然割って入ったかと思えば、何を言い出すんだこのアマ…」


 拳銃を持った男以外も同様に、その様な感想を抱きながら困惑していた。フジという名の男は様々な意味で驚きを隠さずに、ムラセと自分に絡んできていた男達を交互に見る。


「ヒーロー気取りなのかは知らんが、事情を知らないのなら引っ込んでいろ。それとも一緒に死ぬか ? 」


 様子を見ていたリーダーらしきドワーフの男は、ムラセが突き飛ばした男へ下がる様に言い聞かせる。そして凄みながら歩み寄って来たが、ムラセは不思議と恐怖を感じなかった。この男には自分を殺す度胸など無い。この場で「じゃあ殺してみろ」と泣き叫び始めれば、すぐに躊躇をするだろうとなぜか悟っていた。ベクターが自分を人質に交渉に応じた際、彼が見せた気迫や自身の命などどうとも思ってない様な冷淡な口調に比べれば演技だと分かるため気が楽であった。


 彼女が怖がってない事はすぐに相手も理解したらしい。次の瞬間には彼女の頭へ銃を突きつけた。しかし、彼女が眼帯を取った瞬間に血相を変える。


「てめえは…」

「や、やれるもんなら、やってみればいい… 」


 それは、彼らの服の上から付いているバッジがシアルド・インダストリーズの物であると気づいたムラセが咄嗟に行った判断であった。彼らが自分を狙っているというなら、場合にはよるが殺されない可能性も高い。彼女は「生け捕り」が目的だという可能性に賭けたのである。


「ベクター… ! 」


 人混みを掻き分けて彼女の様子を目の当たりにしたタルマンは、同じく二人の後を追って来たベクターと鉢合う。すぐに状況を理解したベクターはニヤリと笑っていた。


「成程ね。状況が分かったぜ」


 ベクターは手短にタルマンへ伝えると、そのまま騒動の渦中へと走り出していく。


「ベクターさ――」


 そのままムラセを脅していたドワーフへ飛び蹴りを食らわせたベクターだったが、なぜか次にフジを殴り飛ばした。


「ぐぼぁっ…えぇ俺… ?」

「やっと見つけたぞてめえっ‼このドぐされペテン師が‼」


 困惑するフジだったが、ベクターは間髪入れずに彼の胸倉をつかんで怒鳴りながらもう一発入れた。そのまま周囲に睨みを利かせる。


「何見てんだ。お前らもやるか ? 」


 周囲にいたスーツ姿の男達もベクターのその声に気圧され、ムラセが言いかけた名前から報告で聞いた死神が彼である事を知った。この場で彼とやるには戦力が足りなさすぎると把握し、全員でこぞって退散を始める。倒されたドワーフは当然置き去りだった。騒動が一段落ついたことで群衆も少しまばらになっており、ムラセも体から噴き出した汗を服の袖で拭う。


「ざ、ざずがはベクターざん…噂に聞いた通りの…ごぼっ ! 」


 ボコボコにされた事で呂律が回っていないフジが必死にベクターを褒めていたが、煩わしく思ったベクターに追撃を食らわされた。


「ムラセ、今の奴らは ? 」

「シアルド・インダストリーズの人達だったんです。この方が狙われていたみたいで…」


 ムラセが安心した様に話をしたが、それを聞いたベクターは少ししてから笑ってフジを見た。明らかに碌な事は考えていなさそうな邪悪な顔つきをしている。


「ちょっと俺と話しようぜ。あ、拒否権とか無いからな」

「はい ? …って痛い痛い痛い ! 」


 ベクターはフジへ提案をしてから、間髪入れずに彼を引き摺って外へ出て行こうとする。タルマンとムラセは唖然としていたが、ベクターの呼びかけによって倒されていたドワーフを担いでから彼を追いかけて行った。

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