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第157話 vsガミジン その①

「飛行種が付近に多数 ! これ以上は近づけません ! 」


 飛行艇でシェルターの近くまで向かっていたムラセ達に同乗していた兵士が報告した。


「構わない。ここから降りる」

「え、でも着陸が――」


 ザガンはそのまま席から立ち上がりながら返答し、準備が出来ていない事を兵士が伝えようとする前にハッチを空けて飛び降りた。飛行艇が仕方なく高度を下げた段階でムラセもファウストを抱えて飛び降りる。そのまま上空で待機を続ける事にになった飛行艇を見送ったのも束の間、辺りは既に大量のデーモンが埋め尽くそうとしていた。


「凄い数…」

「気を引き締めろ。全員を相手にする必要はない」


 物怖じするムラセにザガンは注意を促すが、そんな二人を差し置いてファウストが前に出た。


「父さん ?」

「オルディウスや奴の取り巻きも残っている…お前達に体力を使わせるわけにはいかん」


 困惑するムラセにファウストはそう言ってから手を前にかざす。そしてデーモン達が我先にと群がってきた瞬間を狙い、静かに手を握りしめた時だった。四方八方、上下問わずに夥しい数の魔方陣が現れた。そしてその魔方陣からムラセのゲーデ・ブリングとよく似たオーラで形成された武器や化身が現れ、たちまちデーモン達に襲い掛かる。雨あられの様に降り注いでくる襲撃を前に、デーモン達は成す術なく蹂躙され、一分もしない内に死体の山が出来上がった。


「ぐっ…やはり、堪えるな」


 どっと押し寄せて来た疲労感と苦痛を味わったファウストは跪いて呻くが、すぐに立ち上がって杖をつきながら歩き出す。


「私やオルディウスと殺り合ってた頃よりも遥かに弱くはなったが…あれがお前の父親だ」


 呆然とするムラセに対し、ザガンはなぜ自分やオルディウスが彼に一目置いていたのかが分かるだろうと、少しだけ誇らしげに言った。そのままシェルターへと向かった三人だが、外壁の前に一人の男が立っていた。


「ガミジン… !」


 ザガンが驚くと同時に不愉快そうに顔をしかめながら呟く。


「おっと、これはこれは。オルディウス様の御厚意に唾を吐いた裏切り者とその娘…おまけに、そんな奴に出し抜かれて追放された間抜けの揃い踏みとは」


 彼自身がが集めたらしい人間の死体の山からガミジンは降り、三人を前にしながらも嬉しそうにしていた。


「そんな怖い顔をするな。まさか、俺が拷問を担当していた事をまだ根に持ってるのか ? ……ああそれとも、お前の子供の事か ?」

「黙れ」


 ガミジンはわざとらしく笑い、ザガンとの間に因縁がある事を示唆しながら話しかける。ザガンはすかさず真剣な表情で止めるように言った。二回目の忠告はきっと無いだろうという事は、彼女から滲み出ている殺気でファウスト達も悟る。


「良い声で泣いたよ、お前の子供は。あんな小さくていたいけなガキが、拘束された親の目の前で『お母さん助けて~』ってな。可哀想ではあったが、ヘマをしたお前の責任でもある――」


 ガミジンが詳細を語ろうとするや否や、ザガンは刀を作り出して飛び掛かる。しかしガミジンは腕を粒子状に変化させ、盾のような形に変形させた上で彼女の攻撃を防いだ。甲高い金属音と共に激しく火花が散る。


「流石に、心までは鉄に出来なかったか ?」


 火花を散らしつつ攻撃を防いでいたガミジンは余裕そうに言った。そのままザガンを吹き飛ばし、彼女もまた着地をした上で体勢を整え直す。


「哀れな物だ…オルディウス様に復讐をしたいがために、自分をこんな立場に追いやった元凶と手を結ぶなんてな」


 彼がそんな事を言っていた時だった。周りにあった人間の死体達が突然動き出す。そしてゾンビの様に立ちあがったかと思えば、ガミジンと同様に体の一部を粒子状に分解した上で様々な武装に変形させていた。鉤爪やバッタに酷似した脚部、剣など…個体によって様々である。


「俺の能力は粒子状に体を分解させ、好きなように再構築する事が出来る…最近になって、この粒子一つ一つに意思が宿っていう事に気づいてな。そこでちょっと実験をしてみた。”禁術”を使って」

「貴様、まさか…」

「ああ。次元の超越…別の時空へわざわざ向かわせてもらったよ。流石に現世や魔界で行うと足が付くんでな」


 ガミジンの発言にファウストが驚愕するが、ムラセはどういう事なのか分からずに二人を交互に見ているしかなかった。


「父さん、どういう事なの ?」

「次元の超越は、一歩間違えばこちらの世界そのものにも影響を及ぼしかねない…出先の別世界で恨みを買い、均衡が崩れる事になりかねん。だからこそ大昔から行ってはならないとされ、歴史から抹消されていたんだ」


 ムラセの質問に対し、ファウストもガミジンが行った事の危険性を語る。当の本人は全く反省してい無いのか、自身が作り出した傀儡を愛くるしそうに撫でていた。


「バフォメットの遺した資料から推測し、自分で方法を見つけたんだ。まあ、世界がぶっ壊れてしまう様な事はして無いから安心しろ。ただ、その出先の世界で面白い発見をした。どうも、俺の分解した粒子の一部を他者の肉体に寄生させる事で、こうして操れるようになるらしい。まあ、例外もあったがな…死体相手じゃないと宿主に適合して、逆に支配下に置かれてしまった事で俺の操作を受け付けなくなってしまうケースもあった。だが個人的には大満足だったよ。こうして死体を再利用して兵力を幾らでも生み出せるようになったんだから」


 ガミジンがそうして解説している間にも、死体が次々と動き出してはムラセ達の周りを囲みつつあった。死体が人間ばかりでデーモンが一切いないという点が気掛かりであったが、そんな疑問に対する考察は後回しにするしかない。


「さあ…いつまで持つかな ?」


 自分も戦いに参加するつもりなのか、紅い稲妻を纏いながらガミジンは言った。

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