ショーウィンドウ
人混み、声
流行りに乗られる人々
皆の頷くラブソング
独り、足音を立てる
黒い川の流れに逆らい
一昔前のロックンロールにくらってる
服はまっさら
顔は人並み
薄っぺらい
なんとも掴みにくい人間に
ふと、眦が捉えたショーウィンドウ
中に人がいる
それはそれは綺麗な人で
華やかで嫋やかな
今にもおちていきそうな儚さで
だから、僕は
見蕩れてしまって
次の日も来て
見蕩れて
その次の日も見て
見蕩れて
毎日見蕩れた
ある日気づいた
まわりの人がまったく見ない事に
これだけ綺麗な人を
素通りしてしまう事に
僕は嬉しかった
なにも触れる訳じゃないのに
僕だけ見ている事が嬉しくて
余計に見蕩れるようになった
その時間は日に日に増えていった
新しく知れる事が楽しくて仕方がなくて
毎日小躍りしてしまうような
朝には心が痛むほどの喜びがあった
僕はその人を見ることで僕を忘れられた
その人から僕を得ていた
その奥の反射した僕を
そう思うと
その人がだんだん薄くなっていって
代わりに僕が
ショーウィンドウに写った
やはり掴みにくい人間であった