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収納魔法は転生特典として指定できますが、容量などに制限があります

「お待たせいたしました。

 チキン南蛮定食です」


 ウェイトレスさんは、『あなたの自信作を食べたい』とおっしゃりました。

 すごく尊大なる態度は、ミエルさんといい勝負です。

 でも、かわいいから、許せる。

 本当に、『ヒヤカシ』が目的だったようで。

 『前回殺しそこねたから、今回こそ』、みたいな殺気は感じないのでした。

 

 残りわずかな醤油を用いて作ったかせがしら

 それでも、このアリサさんのお店の味にはかなわないことは、理解していたのでした。


 無言を貫いたまま。

 彼女は、タルタルと甘酢がたっぷり乗ったチキンを口に運びます。

 あの巨大鶏も、こんなかわいいに食べられるとは、思ってもいなかっただろう。

 もぐもぐ、反芻はんすう

 ゆっくりと、その味を確かめるように。


 『おいしい』を勝ち取るか?

 『下手くそ』とののしられるか?

 緊張の一瞬。


 そして、アリサさんは、突然立ち上がり、叫んだのでした。


「なんで!

 なんで、『醤油味』なの!」


 すごく、短い感想でしたが。

 俺は彼女の言わんとすることを、理解できたのでした。

 なぜなら、その『醤油』のことで、今、俺は悩んでいるわけで。

 ここから、『醤油をめぐる冒険』が繰り広げられるわけで。


「あなたは、どうやって、『醤油』を手に入れたの?」


「転生のオマケで、ついてきました」


「そんなこと、あるの?

 でも、この大陸には、『醤油』は存在しないはずよ。

 いつかは、この料理は、提供できなくなる」


「そーーーーーー、なんですよ。

 そーーーーーー、なんす!

 今、非常に、マズイ状態なんです!

 理解してくれて、ありがとう!」


「なんか、急にテンションがあがったわね・・・」


 俺は、『醤油の理解者』の出現に歓喜した。

 と、同時に、アリサさんは、この地域の食材事情に詳しいことを理解したのだった。


「で、醤油を使わない、別のメニューを開発中というわけね」


「違います」


「じゃあ、どうするの?」


「『醤油を求める旅』に出ます。

 海を越えて、はるか、遠くの地を目指して」


「醤油のために、わざわざ、ポリアネシア大陸まで『買い物』に行くの?

 いくらなんでも、『輸送費』がかかりすぎるわ」


「『買い物』ではなく、『移住』です。

 つまりは、こういうことです。

 『シェルター・クローズ!』」


 俺は、シェルターを収納した。

 その場所から、何もない空間が出現した。


「『収納可能な』、喫茶店、なの!?」


「その通りです。

 今、俺たちがいる、この『喫茶店』自体も、同様に収納できます。

 これが、俺の『転生特典』です。

 この能力を使えば、場所を選ばす、喫茶店を営業できます」


「喫茶店や、さっき消えた『シェルター』に、食材、資材を格納して、それごと収納すれば。

 『収納魔法』が実現される、というわけね」


「その通りです。

 シェルター・オープン!」


 シェルターを元の位置に解放する。

 アリサさんは、さほど驚いた表情は見せない。

 その様子は、彼女も『異能持ち』である、それを暗示しているように思えた。


「いつ、海を渡るの?」


「明日、出発」


「なにそれ。

 ・・・。

 競合の、敵の、情報を盗みにきたら。

 『競合が逃げる』という結果が得られたわけよ。

 せっかく、少し、おもしろくなってくる、かと思ったのに」


「それほどに、俺の『南蛮』は、うまかった、ということですか?」


「いや、全然。

 あれは、卑怯ひきょうよ。

 もっと難しい料理で勝負しなさい」


「だって、俺、料理、素人しろうとなんですもん」


「じゃあ、なんで喫茶店やってんのよ!」


 少しづつ、アリサさんと、打ち解けられてきている。

 たぶん。

 たぶん、だけど。

 でも、こんな出会いも。

 『醤油』が引き裂いてしまうのだと。

 アリサさん。

 そして、ユナスさん、ミュレイさん、ユズノさん。

 モリタさん、ケントさん、イノリちゃん、カナエちゃん、タマエさん。

 

 少しの間、現れたシンミリとした感覚を。

 『どうせ天使の転移魔法で戻ってくるんだよねー』というフレーズが、ぶち壊しにするのでした。


「食材の種類は、アトラシア大陸よりも、ポリアネシア大陸の方が、はるかに豊富なのよ。

 そして、それらの食材は、全て、『ガンダル』に集まる。

 ほんと。

 『転生特典に転移の魔法は選べない』って条件。

 あれ、なんでなのよ。

 本当は私も、醤油や味噌も入手したいのに・・・」


「気候や環境で、育つ作物も変わってしまう。

 まあ、当たり前のことなんですよね」


 そして、アリサさんは、考え込む。

 レザーソファーに背中を預けて、天をあおぐ。


 ・・・


 と、突然、起き上がり。

 そこから、俺が提供したチキン南蛮定食を。

 驚くべきスピードで、胃にき込んでいき。

 完食!

 そして、宣言したのだった!


MILK FARMミルクファーム

 『2号店』を、ガンダルに出店する!」

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