吸魔の包丁で植物の鑑定も可能です
一通りの、猪の侵攻がおさまったところで、俺はシェルターを降り、そのままシェルター内で1泊した。
そして異世界生活4日目。
山積みになった猪の亡骸の前に、人だかりができていた。
「これだけの数、あなた一人で倒したのですか」
「はい。
めちゃくちゃ時間かかりましたけど。
これだけ倒せば、しばらくは村を襲ってこないでしょう。
って、なるといいんですけど」
「いえ、これで十分です。
本当にありがとうございました。
今の我々に返せる恩はありませんでしょうか」
「あります!
肉の解体を手伝ってください」
それでは、村の皆様の力も借りまして・・・。
「解★体」
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ここから多少グロテスクな内容を含みますので、皆さまは美しい森林の映像をお楽しみください
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作業分担のおかげで、解体は思った以上に早く完了した。
解体作業の時点で、やっとその猪がとんでもないバケモノだったことを理解した、俺。
牙のデカさもさることながら、体の筋肉が凄まじい。
前世に存在した、田畑荒らしとは訳が違う。
そして、そんな魔獣のタックルを受けてもビクともしなかったシェルターは、やはりさすがの鉄壁性能である。
村人が解体してくれた肉を、俺はシェルターの冷凍庫に運び。
頭数は、明確でないが30匹程度。
そこらの小隊の軍事備蓄程度の肉が集まったことになる。
解体作業の慰労も兼ね、俺は猪肉をみんなに振る舞うことにした。
村長に『小麦粉』をおねだりして。
作るのは。
猪肉のぶつ切りに、醤油と、すりおろした生姜を大量に投入して混ぜ、1時間寝かせ。
そして、頂戴した小麦粉をまぶして、多めの油でカラッと揚げ焼きすれば!
「猪肉の唐揚げ!」
この料理は、前回の狼肉の生姜焼き以上に子供たちを喜ばせることができた。
俺も試食したが、生姜がいい感じにパンチになって、臭みも紛れ、肉は狼よりも比較的ジューシー。
これなら、お店のメニューとして、出せないことはないだろう。
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狼肉の生姜焼きパーティー、猪肉の唐揚げパーティーの連日開催で、多少村にも活気が戻ってきたように感じる。
しかし、それは一時的なものであることを、俺は知っている。
猪肉を無償提供することも考えたが。
なんとか、この苦難を、自分たちの力で乗り越えて欲しい。
「旅のお方。
行って、しまわれるのですね」
「いいえ、行きません」
「行かんのかい!」
村長が老体を押してツッコミを入れてくれた。
ここの、ジジイは、良いジジイ。
「今、村の食糧事情は困窮を極めていますよね。
狩りにいける人間も負傷していると」
「その通りです」
「トレードしませんか?
私が持つ、大量の猪肉と」
「今の私たちには、何も提示できる品物はありません。
あなたは何を望むのですか?」
「木」
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あれから一ヶ月。
大量にあった猪肉の備蓄も底をつき始めたが、この頃には、負傷していた若いハンター達も現役復帰。
自力で獣肉や野草を採取できるようになっていた。
そこで俺も、一緒に森に入り、この世界での狩猟と採取の、その入り口だけを教えてもらうことができた。
ここで、野草もゲット。
・野草:無毒、味★、特殊効果なし
やはり、この包丁で、植物の鑑定もできることが判明した。
そして嬉しいことはもう1つ。
・薬草:無毒、味★、回復効果(小)
回復アイテム、ゲットである。
この点、狩猟仲間から、『なんでこの草が薬草だと解ったんだ』と何度も問いかけられることになったのだった。
狩猟から帰ってきた俺を待っていたのは、村人達。
「本日も上納品を持ってまいりました」
そう言って、村人が差し出してくれたもの。
それは『木材』だった。