転移魔法は自分以外に、同時に、任意の対象物を転送可能です
「『ラダー』ってのは、相棒だ」
そんな発言から始まったミーティング。
双子ちゃん、モリタさんに加え、今回は、大工のケントにも参加してもらった。
ケントさんは、木製の『ラダー(はしご)』、その実物を持ってきてくれた。
イメージを共有しやすくなるので、非常に助かる。
「俺たちは、こいつに、命を預ける。
こいつが柔だと、俺たちは真っ逆さまさ。
日々の点検は、絶対に欠かさない」
ケントさんの持ってきてくれたラダーは、『12段』のステップを持っている。
ちょうど、1階建建造物の天井まで届くような高さの一品。
4m程度、あるのではないだろうか。
1つのステップに、片側、釘が4本打たれている。
頑丈さが命のアイテムなのだと。
それが伝わってくる。
「最初に、言っておくが。
コイツはやれないぞ」
「それは理解しています。
サンプルとして、見せていただけるだけでも助かります」
「実物があると、真似するのも楽チン、なのです」
「でも、頑丈さを追求する点が、難しそうですね」
「いや、頑丈さは、そこまで必要ないです。
『ラダーシェルフ』と言っても。
その上に人間が乗るわけではないので。
まあ例えば、お皿とか、花びんとかが置かれるとイメージしてください」
ここから、俺は設計図の作成を開始する:
・まずは、ケントさんのラダーと同じ物を作る
・これを真ん中で半分に切断する
・すると、6段のラダーが2つできる
・切断して半端に残った先端部は、切断して捨てる(6段目が最上にくるように)
・2つのラダーの6段目がくっつくように、左右対称に並べる
・1段目、3段目、5段目に天板を配置して、固定する
・天板の長さは、バランスが崩れて倒れない程度のサイズ
・必然的に1段目よりも、5段目の天板の方が短くなる
「意外と、単純な作りだな」
「外枠がありませんからね。
でも、今までで最も背が高いアイテムです。
怪我には気をつけて作業されてください」
*****
ラダーシェルフの設計検討会が終わると、俺はすぐにジェルソンを発った。
喫茶店に帰還後、すぐに再転送を依頼。
その場所は、いつもの、喫茶店解放ポイントだった。
この場所が、今まで俺が訪れた中で、最も『パレル』に近い場所だったのだ。
転送完了。
今日もいい天気。
さあ、目指すは、港町、『パレル』。
と・・・。
ここで、天使は、こんなことを言い出したのである。
「私は、歩かないわ」
「いや、転送、使わないんでしょ」
「『転送を使わない』、とは言っていないわ。
『あなたを転送しない』と言ったのよ?」
「ごめん、何言ってるか、よくわかんない」
つまり、こういうことらしい:
・まず、パレル近郊まで2人で転送する
・ここで喫茶店をオープンし、シェルターのみクローズする
・この状態で、元の場所に再転送する
・ミエルさんだけ、パレル近郊に転送で移動
・シャワーや食事は、パレルでクメンするので大丈夫
・ソシャゲで待つ
このような天使のアイデアにより。
俺は、パレルまでの2.5日の道のりを。
一人寂しく、徒歩移動することになったのだった。
*****
ここから2.5日の旅路となりますので、皆さまはラダープログラムの映像をお楽しみください
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「ただいま到着しました」
ミエルさんは、紫のドラゴンに乗って画面をいじっていた。
2.5日間、ずっとソシャゲをしていたのだろうか?
そのソシャゲ。
いったい、どれだけの開発費を使って作られてんの?
そんな疑問が浮かんだ。
「自宅から出発して、まっすぐ移動して、自宅に帰宅するって。
なんか不思議な感じがします」
「地球を1周すれば、前世でも可能でしょ」
「前世では、そんなお金はありませんでした」
「なら、今世で稼ぎなさい。
大富豪、目指すんでしょ」
「俺は、そんな表現は使っていません。
『世界一の喫茶店を目指す』、とは言いましたが」
「同じことじゃない。
現在、世界一である喫茶店が、どこにあるかはわからないけれど」
「実は、一応・・・。
すでにライバル店は出現しています」
「どこにあるの?」
「内緒です」