喫茶店の天井には登れますが、ハシゴは用意していません
そこから、すぐに丸テーブルの搬入を開始。
ハンターの2人が、1人1脚づつ。
天板と底板が丸いテーブルは、俺にはまるで『巨大なダンベル』のように見えたのでした。
お願いマッスル!
筋肉納入!
「検収、上がりました!」
筋肉検収!
例により、拍手が巻き起こります。
でも今日は人数が4人しかいません。
ハンターのラウドさん、シュリンクさん、モリタさん、俺。
丸テーブルは予定通り、ドラゴンレザーソファの間、2カ所に配置されました。
余った、既存テーブルも捨てずに、喫茶店の端に寄せて、取っています。
「ソファーのウッドと同じ色になって、最高の調和です。
この4席だけ、異世界みたいです」
異世界の中に存在する異世界。
異世界の異世界。
それは、現世でも来世でもない。
実在する、俺の理想郷だ。
*****
ハンター2人は村に戻り。
俺は再び、モリタさんと仕事の話に入る。
レッドソファーでコーヒーを口につけたモリタさんは、現状の報告を始めた。
「まず、初めに伝えますけど。
あの双子ちゃんは、『天才』です。
どんどんアイデアを出してくれて、しかも仕事にはコダワリを持っています。
最後のヤスリがけまで、全く手を抜きません」
「針と糸で円を描くアイデアも、本当にナイスでした」
「今、村全体で、家具を村の産業にしようと、本気で動き出そうとしています。
ここで大きいのは、女性と子供の存在です。
樹木を木材にするまでの作業は、完全に男手です。
しかし、そこから先の作業なら、女子供でも可能です。
否。
女、子供の方が、『繊細』、なんです」
「その中でも、あの双子ちゃんの繊細さは、もう、商業レベルですね」
「双子ちゃんは、すでに、『先生』です。
双子ちゃんが、他の子供にレクチャーをしています。
ちなみに、今回の1本脚のテーブルの塗装・・・。
実は、塗ったのは、双子ちゃんです」
「ほんとですか?」
「当然、俺、そしてタマエさんも監督をしています。
塗料が熱くなっていて、危険なので。
そこで、まず、これを見てください」
そう言って、モリタさんが取り出したもの、それは・・・
「ブラシだ!」
「タドルさんが、『ブラシ』の話をしていたのを、双子はちゃんと聞いていて。
自分たちで、このブラシを作ったんです。
木材と薄い鉄板と、そして馬の毛でできています」
「すげぇ!」
「これは、差し上げます。
双子ちゃんからのプレゼントです」
「助かるー。
でも、このブラシがあるのなら。
熱い塗料でも、比較的、安全に塗れますね。
俺、『布』で塗りましたしね」
「これで、塗装作業も、より安定するでしょう。
もちろん、『塗料を安定して入手できれば』の話ですが」
*****
「タドルさんは、この店に・・・。
あと、どんな内装品があると、うれしい、と思われますか?
テーブルと、イス以外で」
モリタさんの質問を受け、俺はある用紙の存在を思い出した。
それは、欲しいものをブレストで書き出した用紙だ。
俺は、この用紙を、モリタさんに見てもらうことにした。
*****
ここからモリタさんが閲覧タイムに入りますので、皆さまは完成した1本脚テーブルの映像をお楽しみください
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「訳のわからない単語もあると思いますので、それは無視してください」
「ほんとに、訳がわからないですね。
『ガジュマル』ってなんですかね?
人名ですか?」
「植物の名前です」
「・・・。
すみませんが、紙とペンとインクを、いただけませんか」
俺が3点セットを渡すと、モリタさんは、俺が最初に渡したブレスト用紙を書き写していった。
ただし、完全コピーではなく、一部のみ。
最終的に、以下のような結果となった:
・2人掛けのレザーソファー
・3人掛けのベッドソファー
・クッション
・バーカウンター
・バーチェア
・1本脚の木製テーブル
・カーテン
・パーティション
・観葉植物+木製植木鉢
・ラダーシェルフ
・ブックシェルフ
・雑貨を置く棚
・酒類用陳列棚
・ロッキングチェア
「俺たちでも、作れると思ったものだけ、残して、書き写してみました」
「なるほど」
「この中で、現状、どれを一番に所望されますか?
当然、渡航の話もありますので。
売買契約を結んでもらわなくても、構いません」
俺は、モリタさんから用紙を受け取って、1項目づつ確認していく。
そして、ある項目のところに視線が集中したのだった。
「ラダーシェルフ!」