表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/187

ポリアネシア大陸では鉄の製造が盛んです

 ハムはある、ピーマンも売ってた。

 必要要素はあと1つ。

 『トマトケチャップ』だ。

 

 が、しかし・・・。


「トマトケチャップの作り方が、わかんない」


 トマト、つぶすだけでいいのかな?

 でもそれだと、『トマトピューレ』か。

 いや、『トマトピューレ』なの?

 ってか、『ピューレ』って何?

 何語?


 そんな知識しかない俺は、まあとにかく、作ってみることにした。

 が、しかし、その前に。

 1ヶ所、寄っておきたいところがある。






*****






 ドアの上には『ナイフフォーク』の看板。

 しかし、『コーヒーカップ』の看板は見受けられず。

 それは、このお店が、純粋に、『料理だけ』で勝負していることを示しており。

 その料理の実力は、すでに把握済み。

 それは、俺が、この店を。

 既に、一度、訪れていたからである。


「なつかしいなぁ。

 初めてハミルトンに来たとき以来だぁ」


 お店の名前は『MILK FARMミルクファーム』。

 お一人様ではあったが、4掛けのテーブル席に通される。

 俺は、手持ちのコーヒーミルを、隠すように。

 隣の座席の下に配置した。


 まだ正午より1時間くらいは早いだろうか。

 それでも、数人のお客さんがいる。


 前回の来店のあと、俺は、知ったのである。

 この店が。

 ハミルトン、トップの、人気店であることを。


「ご注文は、お決まりになりましたか?」


「スパゲッティー・ナポリタン、お願いします」


「かしこまりました」


 ウェイトレスさんは、白と黒、ツートンのエプロンドレス。

 しかも、顔も、かわいい。

 めちゃんこ、かわいいのである。

 整った顔に、優しそうなタレ目。

 ブラウンのロングヘアーをって、ポニーテールにしている。

 そのポニーテールが揺れながら、厨房の中に消えていく様をながめる。


「この人、目当てで来店する人も、いるんだろうな」


 そんな意見が生まれたのでした。






*****






 ああ。

 懐かしい、赤。

 昔、なつかしい、赤。

 懐古の赤。

 食欲をそそる、赤。

 

 赤色、トマトケチャップソースがたっぷり絡まったスパゲッティー。

 その上には、ピーマン、玉ねぎ。

 そして、ウィンナー。

 まるごと、1本、ウィンナー。

 俺の目が、腐ってなければ、ウィンナー。

 まぎれもなき、ウィンナー。


「そんな、バカな・・・」


 生前の俺なら、ウィンナーを見て、こんなリアクションを取ることになることは、なかっただろう。

 俺が、驚いている、その理由、それは・・・。


「この街には、ウィンナーは・・・。

 どこにも売っていなかった、はず」


 街中探したのである。

 探し歩いたのである。

 しかし、ハムにしか、出会えなかった。

 『挽肉ひきにく腸詰ちょうづめ』には、まったくもって、出会えなかったのである。


「どうやったんだ、コレ・・・」


 恐る恐る、ウィンナーに口をつける、俺。


「あー、やっぱ、コレだわー」


 ハムでは味わえない、『パリッと感』。

 それを、完全に再現している。

 ここの料理長、ほんと、スゴすぎる!


 そして、俺は。

 『ウィンナー』に気を取られ。

 『ケチャップ』というワードを完全忘却した状態で。

 一皿を、あっという間に平らげたのだった。






*****






「しまった、味の分析するの、忘れてた」


 後の祭。

 後夜祭。

 

 しかし、お皿にはまだ、赤い部分が残っている。

 まずは、水で口をゆすいだ上で。

 これを、慎重にスプーンですくい。

 その味を、言語化しようとつとめる。

 そして・・・、


「わからん」


 その赤色のソレは、もはや。

 肉や野菜の旨味も混じった、複雑なナニモノかであった。

 ただ1点だけ、明確にわかることがある。


「酸っぱい。

 酸味」


 トマトの酸味か。

 もしくは酢を入れているのか?

 たぶん、あとは、砂糖とか塩とかで味を調整するのだろう。


 そして、最後。

 とある結論に、行き着いたのである。


「完敗!」


 やっぱ、この店、スゴすぎる。

 なんで、なんで、こんな美味しいの?

 前回食べたオムライスも、今日のナポリタンも。

 絶品。

 もはや、ウィンナー単品でも、十分満足であった。


「これは・・・。

 別の料理も食べて、吸収せねば・・・」


「何を吸収するんですか?」


 瞬間、罪悪感で、吐きそうになる。

 すぐに振り向き、ポニーテールを確認。

 ウェイトレスさんが、急接近。

 味泥棒に夢中になりすぎて、気配にまったく気づかなかった。


「この料理から、パワーを吸収。

 エネルギー!

 活力です!」


「ふふっ、うれしいです」


 笑顔、かわいい・・・。

 そんな優しい雰囲気にほだされて、気が緩んでしまったのでした。


「このナポリタンに使っている、トマトケチャップ。

 その、作り方、知りたいなー。

 なんて」


 そして、ウェイトレスさんは満面の笑みで返すのだった。


「競合さんには、秘密です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=280491855&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ