ドラゴンの牙は装飾品として装備すると、攻撃力が上がります
まず向かったのはライザさんの武器店。
軍資金が底を尽きたため、なんとか素材売却が成功することを祈る。
しかし、前回は、6本の爪のうち、1本しか売れなかった。
まあ、その価格は破格の8,000Gだったわけだが。
今回の売却素材は、『ノーマルドラゴンの牙』、である。
おそらく、角や爪ほどの価格は出ないだろう。
しかし、最低1,000Gでも構わない。
今は、それほどに切羽詰まった台所事情なのでした。
*****
「売れたぞ!」
満面の笑顔を見せる店主。
いや、俺、まだ、何も売ってないんだけど。
「ドラゴンルーラーの爪を使った武器が売れた!」
「ほんとですか!」
「がっぽり、儲かったぜ!」
「誰に?いくらで?」
「値段は秘密だよ。
顧客情報も、流せない」
俺は思った。
こんなキッチリした人間もいれば、『ドラゴンレザーでエプロン作った変人がいる』って言いふらす人間もいる。
世の中、いろんな人がいるのだ、と。
「で、今日は何の用だい?」
「素材、買ってください。
『ドラゴンの牙』です」
「牙かー。
牙は安いぞ」
「ですよねー」
俺は、手提げ袋から牙を出す。
カウンターの上に、無数の牙がゴロゴロと転がっていく。
その中で4本だけが、大きなサイズである。
「全部、あんのかよ!」
ここで、ライザさんの顔色が変わった。
「そうだよな。
爪が全部揃ってるんなら、牙も揃っている。
お前が、ドラゴンを倒したんだもんな」
「そうです」
「牙。
1個、1個は安いんだ。
でもな、これだけの数があれば、話は別だ。
7,000Gでどうだ」
「前回と同様の理由で、拒否権がありません」
「交渉成立だな。
ちなみに、レザーはどうした。
ドラゴンレザーも回収しただ・・・。
いや、わかった。
お前の着てるのが、ソレなんだな。
ユナスのところ、行ったんだな」
「全部、バレましたね。
知人ですか」
「一応、友人だ。
『商工会』でも顔を合わせるしな」
「『商工会』。
『組合』、的な感じですかね」
「まあ、そんなんだ。
レザーも売って欲しかったがな。
耐火性能持ちは、よく売れるんだよ」
「ユナスさんも、同じようなこと言ってました。
ちなみに、全部、ユナスさんに売っちゃいました」
実は、ルーラーとレッドラのレザーが余ってる。
ということは、黙っておこう、と思いました。
「話を変えるが。
ルーラーの爪、あと2本売ってくれ。
ドラゴンルーラーの武器が売れて、また・・・。
創作意欲が、湧いてきやがった」
「『創作』?
武器の創作、ですよね」
「武器ってのは、芸術品なんだよ」
「なるほどですね」
『この人の創作意欲を削ぎたくない』。
そんな言葉が浮かび。
俺は、すぐに喫茶店に戻って、ルーラーの爪を回収して、売却。
前回よりも2,000Gアップ。
1本、10,000G。
2本で20,000Gで売却。
軍資金回収は、想像以上の結果を生んだ。
これで、所持金、『27,100G』。
この結果を受け、俺は、予定を変更することになったのだった。
*****
やってきたのは、『雑貨屋』。
前回ケトルを購入した、店主ユズノさんが経営する。
おしゃれな雑貨に溢れた、夢の国だ。
また、この店は、別の側面も持っている。
それがケトル購入時の散策で、明らかになっていた。
それは、『輸入品』の取り扱いだ。
そして、その輸入品には『鉄製品』が含まれていること。
それが、今の俺には、とてつもなく重要なことだったのである。
前回は、店中を散策したが。
今回は、もうすでに購入品を決めていたのである。
ソレを持ってユズノさんの待つカウンターへ向かうと。
彼女は、前回と全く同じフレーズを掛けてくれたのである。
「この『ミル』を選ぶとは・・・。
あなた、見る目あるわね。
今の、ダジャレじゃないわよ!」
水色の髪をサイドで束ねた、美人のおねぇさん。
「でも、こんな高級品を選ぶなんて。
あなた、お金持ちなの?
そんな汚い、エプロン・・・。
エプロン、綺麗になったわね」
「新調しました。
ドラゴンレザーエプロンです」
「厨房に、モンスターかなんか、出没するの?」