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シェルターは喫茶店内の任意の場所に配置できます

「もう、我慢できません。

 ミエルさん、お願いします」


 そんな発言から始まった朝。

 俺は飛び膝蹴りをお見舞いされた。


「変な表現はけてちょうだい」


「失礼、いたしました。

 言い、直します。

 どうしても、『レッドドラゴン、レザーソファー』、の様子を、見たいので。

 転送魔法を、お願いします」






*****






「喫茶店の中、広くなってないか?」


 その発言は、モリタさん。

 本来、赤ソファーの納品は明日だったのであるが。

 俺がジェルソンを訪れた時点で、すでに完成していた。

 よって、1日早い納品となったわけだった。

 仕事が速い!


「ミエルさんに、頼み込んでよかった」


「ミエルさんって誰ですか?」


「いや!

 なんでもないです。

 忘れてください」


 赤のソファーは、4組の2人掛け席のうち、入り口から見て左の奥側。

 左手前側には紫色のソファーが先行納品されている。

 これで、喫茶店の左手側に、ドラゴンレザーソファーが並ぶことになる。


「ピカピカ。

 車みたい」


「車って何ですか?」


「いや!

 なんでもないです。

 忘れてください」


 例によって、ソファーの『座高』が低いので、合わせてテーブルのサイズも短くする。

 その作業は、現場、喫茶店内で行われた。

 それは、双子ちゃんによる『ヤスリがけ』までを含む。


 そして、始まる、新車試乗会。

 初乗りは、もちろん、俺から。


「ああ、座面の、この反発力。

 レザーの光沢と触感。

 ウッドのアンティーク感ただよう塗装。

 なによりも、レザーの『赤』。

 最高、です」


 背もたれのソファーに背中を預けて、天井を見つめる。


「背中、吸い込まれるー」


 その感覚を15秒程度楽しんだのち、俺は立ち上がり、高らかに宣言した。


「検収、上がりました!」


 例によって、現場で、拍手が起こる。

 今回は、ニコニコ現金払い、早めに済ませよう。


「15,000G。

 確認をお願いします」


「・・・。

 たしかに、受け取りました。

 ご購入、ありがとうございます!」


 なんか、日に日に、モリタさんが、頼もしくなっている気がするのは、自分だけだろうか。

 そのモリタさんは、ここで、新しい『商談』を持ちかけるのだった。


「是非、見ていただきたい、『商品』があります」






*****






 俺は再び、ジェルソン、家具店の作業場へと通された。

 そこで出会ったのは、『ソファー』。

 『ソファー・レプリカ』。

 俺の作った設計図を元に、ジェルソンメンバーが、模造品を完成させていた。

 その考えが浮かんだのは、一瞬だけ。

 俺は、彼らの技能吸収速度と作業速度に、ただただ感嘆したのだった。


「2人掛け!!」


 そう、そのソファーは、俺が設計したサイズの、『2倍』のサイズになっていた。


「設計は、1人掛けとほとんど同じさ。

 クッションの数は2個になっている。

 ただ、1人掛けのソファーを、2つ合体させただけだ」


「いや、謙遜は要らないです。

 仕事、早すぎます。

 だって、レッドドラゴンの作業も、あったわけだし」


「手を貸してくれる村人が増えたんだ。

 特に、ハンター達の力を借りれるようになったのが大きい」


「モリタさん。

 詳細の説明をお願いします」


「了解だ」


 そして、モリタさんによる、『ソファー・ダブル』の説明が始まった:


・1人掛けのソファーを2個連結した、ダブルサイズのソファー

・モリタさんと、双子ちゃんの3人で設計図を作成

・手すりは左右に2つだけ

・クッションは、1人掛け用のサイズを2個、座面のみに使用

・骨組みはウッド、材料は前と同じだけど塗装なし

・クッションのガワの素材は『狼の皮』

・縫合は、タマエさんに依頼


 全ての説明が完了する前に、俺は質問を急いでしまう。


「クッションの中身は、どうしたんですか?」


 『羽毛の回収は難しい』と言っていたはずだ。

 では、いったい、どうしたのだろうか?


「綿花です」


「はへー」


「羽毛を大量に集めることは、やはりできませんでした。

 少量は、ハンターの力で集まりましたが。

 しかし、綿花なら、このあたりでも栽培されています。

 値は、まあまあ、しますが。

 手が出せない、ほどではありません」


「それでも、農民にとっては、高価ですよね」


「なので、今回、クッションの厚みは、あまりありません。

 前回のドラゴンソファーの厚みは、テノヒラほどありましたが。

 今回は、その半分程度です。

 それでも、木材の上にじかで座ることと比較したら、雲泥の差があります。

 ちなみに、座面には薄い木材の板を敷いて、その上にクッションを置いています」


「座ってみて、いいですか」


「もちろん」


 俺は、ゆっくりと腰を下ろす。

 狼の皮は、フサフサとしていて、草原の草を思わせる。

 ソファーは柔らかで、あまり反発力はないが。

 モリタさんが言う通り、ウッドにじかで座るのとでは、その感触に、雲泥の差がある。

 また、ウッドは、しっかりとヤスリ掛けされていて、触り心地に不快感はない。

 このあたりは、双子の力が大きいのだろう。

 そして俺は、以下のような結論を叩き出した。


「買う!」


「ありがとうございます」


「高すぎなければね」


「13,000Gで・・・。

 いかがでしょうか」


「買う!」

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