錯乱は指定状態異常には該当しません
一晩明け。
俺は、今、ジェルソンの村にいる。
天使に頼み込み。
土下座までして。
転送魔法を使ってもらって。
「お久しぶりです、村長さん。
さっそくですが、『木』、また、ください」
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俺がジェルソンを出発してから、今日までに17日が経過しており。
村には、多少、活気が戻ってきていた、ように見える。
そして、村には、『家具店』ができていた。
ここで作る家具が、少しづつ人気を獲得しつつあり、ハミルトンでの販売も現在検討中、とのことでした。
そして、この家具店ができていたおかげで、『樹木を伐採し、加工して』。
その工程を経た結果である『木材』が、すでに多数準備されていたのだった。
俺は、その家具店内部、作業場へと通された。
ちなみにミエルさんは、喫茶店でソシャゲ中です。
『十天使』がナントカ、とか言ってました。
作業場で働いていたのは4人。
1人は、この村の大工さん。
中年、小太りの男性で、大工の仕事がないときは、家具作りの手伝いをしているらしい。
名前は『ケント』さん。
1人は、元ハンターの年齢20歳後半の男性。
しかし、足を怪我したため現役から退き、農業をしていたらしい。
足の動きは鈍っているが、腕の筋肉は現役。
名前は『モリタ』さん。
あとの2人は、なんと・・・。
やっと10歳を越えたばかりの女の子。
しかも、双子ちゃん。
しかし、子供とは思えない理解度。
そして女性的な感性、繊細さ、デザインセンスを持っている。
家具の仕上げは、おおよそこの2人が担当しているらしい。
「お兄ちゃん、会いたかったー」
「私もー」
「イノリ、カナエ、久しぶりー」
イノリちゃんと、カナエちゃんという名前なのでした。
ちなみにお母さんはタマエさん、だそうです。
ブラウンの短髪が、イノリちゃん、です。
ブラウンの長髪が、カナエちゃん、なのです。
ここで、この場所まで案内してくれた村長さんが、かしこまった口調で進言した。
「恩人である、あなた様に、貢物があります。
これを、お持ちください」
受け取ったもの、それは、鉄製の、小さなバケツ。
そのバケツはしっかりと蓋がされ、中が密閉されている。
ゆっくりと開封すると。
そこにはダークブラウンカラー、ロウソクの蝋?、のような、謎の固体。
「塗料です」
「塗料、キターーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
ゴマダレー。
俺は、バケツを天高く掲げた。
まるで、聖剣を引き抜いた勇者のごとく。
俺のテンションの高さに、村長さんは若干引いていた。
が、しかし。
そう、これで。
さらに『改良』できる!
*****
作業場にて。
元ハンターのモリタさんから質問を受ける。
「すみません、これ何ですか?」
「ドラゴンルーラーレザー、です」
「あの?
えっ?
はっ?」
モリタさんは、錯乱状態に陥った。
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モリタさんの錯乱状態が解けるまで、かわいい双子のお母さんの映像をご覧ください
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モリタさんの状態異常が回復した。
その上でモリタさんは、とてつもなく丁寧に解釈を述べる。
「あなたがドラゴンルーラーを討伐して、その最高級素材で、『イス』を作ろうとしているのですか?」
「そうです」
「あんた、バカなの?」
「本気です」
いつにない、真剣な表情で、俺の本気度を伝えようとする。
「そんな話、前世でも聞いたことないよ」
「俺もないです」
まあ、俺の前世には、ドラゴンルーラーは存在していなかったが。
デジタルの世界を除いて。
*****
前回の家具作成では、設計図を俺が全て作成した。
この時の設計図は、全て、村に提供してある。
これを見て、その『ココロ』のようなものを学習した人間が、ここには4人もいる。
今回のソファーの設計図作成は、俺も含めての5人が、同時に図面とにらめっっこしながら、そんなスタイルで行われた。
そこで生まれる、双子ちゃんの意見が、俺の心の琴線に突き刺さること数回。
この娘ら、大物に、なるで。
そして、設計図は完成。
レザーの縫い合わせは、双子のお母さん、タマエさんが裁縫上手とのことで、お願いすることにした。
木材の加工や組み立ては、モリタさん。
仕上げは双子ちゃん。
俺は塗装。
ケントさんは現場監督。
そんな作業分担で、万事うまくいったように見えた。
しかし、そこには、たった1点だけ、問題が残ったのでした。