喫茶店にレジは設置していません
次に、以下の表を見て欲しい:
・1日目:6人
・2日目:8人
・3日目:10人
・4日目:12人
・5日目:20人
→計:56人
これは、この5日間の集客データである。
ここから判断したいのが、必要となる喫茶店の『店員数』である。
正直、1日20人だと、そこまで忙しくはないのである。
集客が多いお昼時だけ忙しく、その他の時間は、そのほぼ全てを、ミエルさんはソシャゲにつぎ込んでいた。
エンドコンテンツのためのアイテム集めがナントカ、とおっしゃっていました。
相当の廃ゲーマーのようです。
まあ、俺も人のこと言えませんでしたがね、前世で。
そこで、俺が空いた時間に取り組んだのが、『人間観察』である。
喫茶店、観葉植物の隣に配置した切り株スツールに座ってコーヒーを飲みながら。
窓の外、街道に人が流れていくのを眺めていました。
以下は、ここでの考察です:
・人通り、思った以上に多い
・特に馬車を引く商人が多かった
・が、彼らはこの喫茶店に来店することはなかった
・その次に多いのが冒険者で、おおよそ全員が、この店に多少なりの興味を示していた
・その冒険者の一部が、実際に来店してくれた
・冒険者は戦士、弓兵、魔術師、僧侶の格好の人がおおよそほとんどで、たまにピエロみたいな服を着た人もいた
・女性冒険者が想像以上に多く、冒険者の3割程度は女性だった
・無武装の村人や子供が通過することは、一度もなかった
まとめると、この店のメインターゲットは『冒険者』ということになる。
俺もすでに『魔獣』にも『盗賊』にも襲われたし、ある程度の戦闘能力がなければ、この街道を利用できないのだろう。
そして、もう1点。
『女性客を無視できない』、ということである。
ミエルさん曰く、『この世界では、女性の方が魔術的素養が高い』そうだ。
こんな理由もあり、女性冒険者が増える結果になった、とな。
ヤッタネ!
*****
『最小二乗法』。
・・・。
いや、突然、お前、何を言ってるんだ、と思っただろうが。
つまり、何が言いたいかというと:
・1日目:6人
・2日目:8人
・3日目:10人
・4日目:12人
・5日目:20人
・x=1:y=6
・x=2:y=8
・x=3:y=10
・x=4:y=12
・x=5:y=20
これを入力データとして、一次関数『y=ax+b』の直線にフィッティングすると、という話である。
すると、a=(nΣxy-ΣxΣy)/(うわーーーーーーーーーー)、ってなるんですけど。
ともかく、計算すると、a=3.2、b=1.6ってなって、y=3.2x+1.6。
つまり、営業10日後にはy=3.2x10+1.6 = 32+1.6 ≒ 『33人』。
営業100日後にはy=3.2x100+1.6 = 320+1.6 ≒ 『321人』!、ってなって。
・・・。
『そんなわけあるかーーー!』、ってなるわけです。
脱線しましたが。
結局は、『A:このまま営業を続ければ、人員が足りなくなる』、かつ『B:いや、そんなうまくいくかいな』と言いたいわけで。
A+B=『しばらくは、お客の数を制限する』、という結論に達しました。
『イットキの活況で、人員を増やすのは危険』という判断でした。
本当は、自分が人見知りだから、『バイトさんとうまくやっていけるのか』という思考が脳内を制圧していたのも、かなりあります。
さて、時は夕暮れ。
売り上げデータ解析(適当)はこれにて終了。
とある、明日の楽しみを思い起こし、俺はミエルさんにコトワリを入れた上で、シャワーを浴びに行くのでした。