属性経験値はスキルでは確認できません
「まず、魔法には、『属性経験値』、というパラメータが存在しているの。
火の魔法を使うと、その火の属性の経験値が増えるわけね。
なので、あなたが例えば炎の上級魔法、ハイフラン、つまりはフランLv3を覚えようとするまでには、遠方もない回数、炎の魔法を使用して、炎の属性経験値を取得し、そのうえで魔法屋の門を叩く必要があるわけなの」
「属性経験値、ですか」
「属性経験値を確認するスキルは、現在知られていないので、どの程度魔法を使えば、というのがおおよそ感覚になってしまうのだけれど。
ただ、そのようなユニークスキルが存在するとは聞いたことがあるわ。
つまり、だれにでも属性経験値を知ることができるわけではないの」
「経験値が足りない状態で、魔法屋で魔法を教えてもらった場合はどうなるんですか?」
「魔法習得に失敗するわ。
でも、その場合は金銭授受が発生しないから、その点は安心して大丈夫。
でも、毎回毎回、失敗が続くと、さすがに格好がつかないわね。
それに、魔法屋の店主は、その属性経験値に関する、いわば『勘』のようなものをみな持っているから、あとどの程度の熟練を積めばよいか、ある程度教えてくれることが多いわね」
「それは、助かりますね」
「そして、もう1点、重要なことがあるわ。
それはユニークスキルの使用では、属性経験値が向上しないのよ」
「つまり、ドラゴンブレスを何発打っても、火の属性経験値は取得できない、ということですね」
「その通り。
また、魔法の収束や放出に関する技能も、魔法を何度も使わないと向上していかないわ。
制御力が足りなくて、魔法が敵に当たらない、なんてことにもなる。
なので、魔法をこれから極めていきたいと思うのなら、基礎魔法のフランから地道に始めて、属性経験値を蓄積していくのが定石というわけなのよ。
『千里の導も、フランから』、という言葉さえあるほどにね」
「10,000G払う、その価値があるわけですね」
「そうね。
楽できるところは、楽をしていいけれど。
シェルターの力を使ってね。
それでも、魔法の習得や、武具の熟練に関しては、地道に取り進めるしかないわけ。
そのあたり、デイリータスクとして組み込んでもよいのではないかしら」
「そうですね」
「あと、もう1点、フランの利点をあげるとすると、『火力調整可能』というものが上げられるわね」
「あー、なるほど」
「つまり、『あなたは、ドラゴンブレスで、パンを焼くの?』という問いかけに通じるわね」
「黒焦げだ」
そもそも、当初魔法を習得した目的が『クッキングスキル』であったことから考えると、結局はドラゴンブレスでは役不足、っていう話になっていたのでした。
*****
ワールドシステム解説付きのコーヒータイムを満喫したのち、お店の看板はおろしたまま。
俺はハミルトンの街へ買い出しに出かけた。
本日の購入品リストは以下:
・コッペパン
・卵
・レタス
・酢
・玉ねぎ
・ピクルス
コッペパン、卵、レタス。
今回の購入量は1人分でも、2人分でもない。
ついに喫茶店、本格オープンに向けて動き出すため、約1週間分の食材を買い込むのだ。
そして、最後の酢(他)。
これらに関しては後述することとなる。
これらの購入の前に必要になることがある。
それは軍資金の入手である。
布団用の布、及び魔法の購入で、所持金が底を付きつつあった。
そこで、今回出品するのがコチラである。