この世界ではまだジッパーは開発されていません
今回のブレストは、『レザー雑貨を列挙する』、ではなく、縛りなしでの『レザーでノベルティグッズを作るにあたってのポイント』という内容です。
1時間の議論の結果。
以下のような意見が出ました:
・レザーはたくさんあるが、大量に配布するので、一人分に使える量は限られる
・人手が足りないので、村の人みんなに手伝ってもらう
・もちろん先生はタマエさん
・イノリちゃん、カナエちゃんも簡単な裁縫はできる
・俺からの絶対条件で、お店の名前の焼印で刻印したい(担当者:タドル)
そして話題は、『何を作るか』に:
・この世界にはまだ、『ジッパー』はありません
・『ジッパー』とは何ですか?
・『チャック』です
・『チャック』とは何ですか?
・『世界の窓』です
・『窓』なの?
・『窓』ではありません
・ちょっと意味がわからないです
・失礼しました、一旦脳みそを空に戻してください
そして話題は、改めて『何を作るか』に:
・2択で考えてます
①ネックレス
②ブレスレット
・なるほど
・ネックレスは、2枚の長方形のレザーを縫い合わせ、上部に穴を開けて紐を通す
・紐を短くしたらキーホルダー的なものにもなる
・ブレスレットは細く切ったレザーの両端を縫い合わせるだけ
・こっちの方が簡単かな?
ここまでの議論で一旦、コーヒーブレイク。
その短時間、ほんの短時間で。
タマエさんは、ネックレスとブレスレットのサンプルを作ってくれた。
否、サンプルというか・・・
これ、売れるやつや!
「どちらも、魅力的だと思います」
そういうと、タマエさんはぬるくなったコーヒーに口をつける。
「両方欲しい」
「なのです」
イノリちゃん、カナエちゃんは、実際にレザークラフトを手に取って、いろんな角度から観察している。
その顔をマジマジと見つめると、最初に彼女たちに会ったときと比べて、顔立ちが大人っぽくなっていることに、改めて気づく。
「これは、将来楽しみやで」
「タドルさんが、その気なら、将来のお嫁さん候補にしてもらってもいいですよ」
とか、そんな冗談を言ってタマエさんが笑った。
・・・
冗談、だよね・・・
「タドルさん!
『ロ』じゃなくて、『コ』がいいかもです!」
「今、『タドルさんは、ロリコン、かもです』って言った!?
いや、違うから!
ちゃうんやで!」
「はえ?」
発言したイノリちゃんが、キョトンとした顔をする。
「お兄さんは、コンプライアンスを遵守するよ!」
「どういう意味?」
「悪いことはしない、って意味なの」
「タドルさんは、いい人ですよ」
そう言って、イノリちゃんが笑った。
かわいい。
「イノリ、『『ロ』じゃなくて、『コ』がいい』ってどういうことなの?」
「今は、長方形のレザー2枚を、四方縫い付けてます。
そうじゃなくて、上側は縫わなくして。
そしたら、中に何か入れることができます。
例えば、もらった人が大切にしている手紙を折ったものとか」
「なるほど!」
「なるほど、なのです!」
「いいわね」
俺がサムズアップすると、イノリちゃんがニーッと笑った。
はい、かわいい!
「なら、中に小さいチラシを入れておこう。
小さいサイズの紙なら値段も抑えられるし。
なにより、開店の日時を明記できる」
全員が頷き、案が承認される。
計画は終わった。
さあ、実行のフェイズに入ろう!
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