表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/187

ベリアルは炎の魔法を得意とする魔王幹部です

 バレてるー!

 

 ただ、今の発言を逆に考えると。

 国王は異能持ち、つまり転生者ではないことになる。

 しかし、それでも魔王の幹部を倒すと言っていることからして。

 そのレベルは、ゆうに100は超えているだろう。

 リズさん以上の強者かもしれない。


 国王の目は、俺から離れない。

 俺の、次の発言を待っている。

 いや、どうしよう!

 めっちゃ、コレ、巻き込まれる流れ。

 巻き込まれる流れ。


 ・・・


「異能についてもお詳しいようですね。

 しかし、俺の異能は、『喫茶店』です。

 武力を持つものではありません。

 残念ですが、お力にはなれません」


 この俺の切り返しに。

 国王はなんと返すか。

 緊張の一瞬。


「『移動可能な』が抜けているのではないか?」


「げっ!!」


「もう、一気に答えまで行くぞ!

 俺には、このお前の店は。

 最高の『砦』に見える」


「終わった」


「魔王軍総攻撃に際して、この喫茶店を、我に貸与たいよせよ。

 マスター、タドル。

 反論は許さん」


 俺の店は、以前はポリンク、ガンダル間で営業していた。

 それが、今は、ガンダル東門前に存在する。

 その情報は、バルタン国王側に流れていたのだ。


「タドルすまん。

 こうなる予感はあったが。

 俺の今の力ではどうにもならんかった。

 せめて。

 俺にこの喫茶店の防衛をやらせてくれ。

 ライザも力を貸すと言っている」


「ダルトさん」


 ダルトさんが申し訳なさそうに呟いた。


「俺は、ガンダルを守りたい。

 タドル。

 力を貸してくれ。

 もちろん。

 お前に直接戦えとは言わない。

 喫茶店のマスターで、いてくれればいい。

 戦場でな」


 喫茶店が移動可能な限り。

 俺はどこにだって逃げれる。

 それは、この場のほぼ全員が知っている。


 でも。


 でも。


「私はタドルさんについて行くだけです。

 タドルさんが決めてください」


 そう言って、笑みを見せてくれるヒヨリちゃん。

 今、戦わなければ。

 ガンダルも、ポリンクも。

 大きなノッポの古時計も。

 全てなくなってしまう!


「わか・・・」


「お待たせいたしました!

 レストランMILK FARMミルクファームより、御昼食の提供でございます。

 まずは前菜。

 サラダとスープをお持ちしました。

 国王様にもお気に召していただけるはずです」


 陰鬱とした雰囲気をぶち壊す、元気ハツラツな声色で。

 アリサさんはいつものアリサさんでやってきた。


「昼食にいたしましょうか」


「そうだな。

 タドル殿。

 今の件、じっくり考えてから回答するがいい」


 『反論は許さん』、とか言われたり。

 『じっくり考えろ』、とか言われたり。

 なんか、どっと疲れたので。

 俺はシェルターに引っ込んで、余ったコーヒーを飲み干したのだった。






*****






 アリサさんが振る舞うコース料理は、それは見事で。


・赤ワイン

・色とりどりの野菜のサラダ

・カボチャのスープ

・サーモンと真鯛のカルパッチョ

・ステーキ

・ミニオムライス

・チョコレートケーキ


 その全てで、国王様の目を楽しませ、舌をうならせたのでした。


「俺、こんな人相手にしてたんだ・・・」


 もう、宮廷料理人やん。


 アリサさんの料理のおかげもあり。

 バルタン国王とガンダルの武力協力の協定も結ばれ。

 ガンダルの名立たる冒険者が、バルタン国に送られることとなった。

 一方の俺は、どうなるか。

 このまま話がうやむやになって消滅してくれるのでは?

 そんなこと、あるはずないのである。


「タドル殿の出発は、総攻撃が始まってからでよいぞ。

 総攻撃が始まったことは、すぐにガンダルに連絡されることになっている。

 それまでは、しばらく、のんびりと。

 筋肉でも鍛えておけ」


「いや、あの、その・・・。

 いいえ。

 もういいです。

 それで、いいです」


 『考えておけ』と言いながら、まったくこっちの意見聞く気ないのである。

 社会人あるある!

 畜生!

 もう、こうなったら、やってやる!

 やけくそ!


「タドルが行くなら、私も行くわ!」


「はっ!?」


 突然、話に割り込んできたのはアリサさん。

 まるで遠足に行くかのような、軽いノリで答えた。


「魔王幹部討伐ですよ?

 正気ですか?」


「ハエ退治でしょ?

 うまく、打ち落とすわ」


 そしてアリサさんは、恐れることなく。

 国王と握手をした。

 その瞬間。

 国王の顔色が変わる。


「これは、とんでもない『拾い物』をしてしまったかもしれんのう」


 そう言って、国王は高らかに笑った。


 本来なら、無理にでも止める場面であるが。

 しかし。

 俺は心の奥で。

 安堵のため息を漏らしたのだった。


 最強の、助っ人だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=280491855&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ