バルタン王国はポリンクの東方に存在する巨大な王国です
ついに、会議当日。
早朝から、慌ただしく。
その理由は、バルタン王国兵が、喫茶店の下見に来たからである。
危険なものは存在しないが、珍しいものは多々あるため。
説明に苦労することになった。
AM10:00、15分前。
ダルトさんとミーティアさんを従えた、リズさんが到着。
リズさんは、ドラゴンルーラーソファー、その奥側に陣取った。
ダルトさんミーティアさんは、その後ろに。
そして、AM10:00、ジャスト。
バルタン国王が、2人の近衛兵のみ連れて入店した。
国王の容姿を一言で説明すると、『レスラー』だった。
上半身裸で、その鍛え抜かれた筋肉を見せつける。
腰にはチャンピオンベルトのような、黄金のベルト。
首からも黄金のネックレスをジャラジャラさせて。
髪の毛まで金髪、オールバック。
「はっはっは!
元気そうだな、リズ殿!」
「そちらこそ。
また大胸筋が肥大されたのでは?
バルタン国王」
「こいつは俺の生き甲斐だからな。
我が子のようなものだ」
バルタン国王は、大胸筋をピクピクさせる。
国王は武器を持っていない。
しかし、拳のみで全てをなぎ倒す。
そんなオーラを放っている。
ここでリズさんが、護衛の2人にアイコンタクト。
「ガンダルを中心に冒険者をやっているダルトです。
かの、ガンダル国王様に会えて光栄です。
数々の武勲、耳に入っております」
「ガンダル冒険者ギルド、ギルドサブマスターのミーティアです。
国王様のことは、リズより、いつも聞かされております。
ポリアネシア『1』の戦士であると」
えっ?
ミーティアさん、サブマスターなの?
めっちゃ偉い人だった。
変態ニヤケ女は、仮の姿。
もう少し敬意を持って接した方がいいのかしら?
いや。
今はそんなことはどうでもいい。
護衛、2人の挨拶の完了。
このタイミングで、コーヒーを出すことになっている。
手が震え、変な汗出る。
今日の目標。
『噛まない』。
「コーヒーでございます」
俺は、用意していた2杯のコーヒーを、テーブルの上に配膳する。
ここから、簡単な俺の自己紹介を・・・。
「はじめまして、バルタン国王様。
お会いできて、こ・・・」
「おい!」
国王が大声で口を挟む。
何、何!?
なんか無礼あった?
今の、なんかまずかったの?
打首なの?
俺は緊張の面持ちで、国王を見つめる。
目力、すごい。
「酒はないのか?」
「さけ、ですか?
・・・。
い、はい!あります!
えっと。
こちら、ドリンクメニューです」
俺は、ドリンクのみが書かれたメニュー表を国王に渡した。
朝から、酒、飲むんかい!
「このモスコミュールとはなんだ?」
「ライムとジンジャーをブレンドした、シュワシュワして甘いお酒になっております。
こちらビールに次いで人気のメニューです」
「わかった。
それを用意してくれ」
「はい、すぐに」
俺はシェルターに戻り、モスコミュールを早急に作成。
店内に戻り、コーヒーとモスコミュールを交換した。
そして、配膳した途端に、酒はあっという間に飲み干された。
「俺は、甘い酒は好かん」
なら、なんで頼んだの?
とか突っ込むことは、当然できず。
「しかし、この酒は、美味いな。
男。
名を名乗れ」
「喫茶店ROOTのマスター、タドルでございます。
こっちは、店員のヒヨリです。
どうぞよろしくお願いします」
やっと名乗れた。
ヒヨリちゃんも、深く頭を下げる。
「マスター殿、ビール、追加で頼む」
「かしこまりました」
急いで給仕、配膳。
しかし、今度は国王は口にはつけず。
ついに会談が始まる。
*****
「劣勢だ。
腹立たしいが。
敵は、魔王軍は、強い。
今はまだ、敵の動きは鈍い。
しかし、近いうちに、敵が総攻撃に打ってくるという情報が入っている。
押し負ければ、その勢いは、我がバルタン国を飲み込み。
そのまま、ポリンク、そしてガンダルにまで波及するだろう」
「総攻撃、ですか」
国王、リズさん、両方から笑顔が消えた。
「雑魚を食い止めるのは容易だ。
問題は、魔王幹部。
炎のベリアル。
そして、その直属兵。
今、我が欲しいのは、兵数でなく。
一人の強者だ。
ベリアルは、俺が倒す。
その間。
ベリアルの配下を相手にできる人間が欲しい」
「魔王4幹部。
炎のベリアル。
氷のアザゼル。
風のベルゼーヴァ。
土のシド。
今、活動が確認されているのが。
ポリアネシアのベリアル。
そして、アトラシアのベルゼーヴァ。
特に危ういのが、ハーパー国と対立するベルゼーヴァ。
ベリアルは、バルタン国王様の尽力で、被害が抑えられている。
しかし・・・」
「敵も、総攻撃に合わせて、何をしてくるかわからん。
力が欲しい。
ガンダルの冒険者達。
炎と鉄の力。
そして・・・」
こんなシリアスなタイミングで。
国王は。
俺を見つめて来たのである。
「そこの、『異能持ちの力』、とかな」