この世界には魔王軍4幹部と呼ばれる存在がいます
次の日。
俺とヒヨリちゃんは、喫茶店の大掃除に取り掛かった。
ホコリ、1つも、残さず。
隅からホウキではわいていく。
俺の敵レベル確認魔法を妨害したリズさん。
相当なツワモノだと考えられる。
面倒なことになった、が。
まあ、1日喫茶店を貸すだけである。
無礼がないように気をつければ、報酬までいただける。
無礼がなければ、の話だが。
ちなみに、この会議。
天使は欠席することになった。
それが妥当であろう。
ミエルさんはアリサさんのお店で待機してもらう。
*****
大掃除は正午までには終わった。
お昼ご飯(デミパン)もとった。
さて、ここから明日までに、やっておくべきことはないか。
しっかりと考えておこう。
・発声練習
・敬語の確認
・コーヒー準備
・料理準備(一応)
・家具説明準備(ミエルさんの存在は伏せる)
・観葉植物の水やり
・国王様に関する情報集め
*****
「あ・え・い・う・え・お・あ・お!
赤巻紙、青巻紙、黄巻紙。
竜巻旋風脚、竜巻旋風脚、竜巻旋風脚。
えー。
本日は、私の喫茶店ROOTにご来店いただき、まことにありがとうございます。
私は、店長のタドルと申します。
以後、お見知りおきを。
かのバルタン国王様にお会いできて光栄でございます。
・・・。
あ・え・い・う・え・お・あ・お!
赤巻紙、青巻紙、黄巻紙。
竜巻旋風脚、竜巻旋風脚、竜巻旋風脚」
「竜巻旋風脚、竜巻旋風脚、竜巻旋風脚。
私、店員のヒヨリと申します。
ご来店、心より感謝いたします!」
「竜巻旋風脚、竜巻旋風きゃ、たっ巻せ、風きゃ、たっまききゃく」
「竜巻旋風脚、竜巻旋風脚、たまきせんせい脚、たまき。
竜巻旋風脚って、難しいですね、タドルさん」
「波動昇竜拳の方がいいかな?
いや、ってか、俺たち何やってんの?」
「わかりません。
途中から、楽しくなって、よくわかんなくなってました。
・・・。
それにしても。
国王様って、どんな人なんでしょうね」
「実は、それを今から教えてもらいに行くことになってるんだよね。
ヒヨリちゃんも一緒に行こう」
「お供します」
*****
やってきたのはガンダルのギルド。
その受付前での待ち合わせ。
そこで待っていたのは、ミーティアさんとダルトさん。
「お待たせしました。
明日に向け。
ありったけの情報をください」
ここからダルトさんが詳細を説明してくれた:
・ダルトさんは仲介役
・リズさんとダルトさんは知り合い
・今回の喫茶店貸し切り依頼は本来、ダルトさんが俺を説得する予定だった
・でも結局、問答無用のような形になってしまった
・ミーティアさんはおまけ
・一応、リズさんの護衛の意味もあったが、リズさんの方が強いので、あまり意味はなかった
・バルタン王国はガンダルの東方にある国、同じ大陸
・そのバルタン王国は、今、魔王幹部の軍勢と交戦中で苦戦を強いられている
・もしバルタン王国が落城すれば、次に狙われるのはポリンクとガンダル
・バルタン王国に、ガンダルの戦力を貸して欲しいというのが目的
・バルタン国王は40代の男性
・ダルトさん、ライザさんといい勝負の筋肉を持つ武人
・厳格な人だが、他国に攻め入るようなことはしない
・国もかなりの兵力を持っているが、今までポリンク、ガンダルと交戦することはなかった
・というよりも、魔王軍との交戦でそれどころではない、とも言える
・国王は今日の夕方にガンダルに到着、今日はガンダルの高級宿に泊まる
・交渉会議は明日、朝10:00から
・基本いい人、らしいので、相当な失礼がなければ大丈夫だ!
この説明の中で俺は、以下のフレーズを拾った。
「魔王幹部、ですか・・・」
「そこは、明日また話があるさ。
残念な話だが。
この世界に住まう以上、この存在を無視して生活し続けることはできない」
「異世界は今日も平和なので、喫茶店を経営します。
そういうわけにも、いかないんですね」
「そういうことだ。
これだけは言わせてくれ。
レベル上げは怠るな。
何かを、守りたいのならな」
「実は、ダルトさんにお願いがあります。
俺の剣術の師匠になって欲しいんです。
剣術の稽古を付けて欲しいんです。
もちろん、報酬は払います」
「じゃあ、こうしようぜ。
それ、引き受けた。
ただし、今後お前の店で、ただで飲み食いさせてくれ」
「その条件、飲みます。
でも、加減はしてくださいね。
飲み食いの件も、剣術の件も」
「わかった」
「交渉成立ですね。
では、よろしくお願いします」
さあ、これで準備は整った。
明日の会議。
何事もありませんように!