メンターは基本戦闘には介入しません
ついに実技試験が始まった。
メンター、ダルトさんから説明が行われる。
「今回のミッションは、『ミッドデーモン3体討伐』だ。
場所は南東の森林地帯、その洞窟内。
ミッドデーモンを発見することまで含めてが試験範囲だ。
期限は今日の夕刻18:00まで。
以上。
俺は、本当に危険だと判断した場合にしか手を出さない」
「楽勝ね」
メイアさんは殺る気マンマンである。
一方の俺たちだって、負けるわけにはいかない。
「早速、出発しましょう。
少しでも時間が惜しいです」
*****
目的の森、その奥地までやってきた。
道中の敵は、ハミルトンのワニワニロードとは異なり。
デモンクリーチャやレイスなどが出現する、非常に危険なモノだった。
しかし、今の俺たちの敵ではない。
ヒヨリちゃんのレベル上げにはちょうど良い場所だった。
「この鳩、強いわね」
「サブロウくんです」
「それがあなたの転生特典なのね」
そのメイアさんの一言で、俺はやっと気づいた。
「メイアさんも、転生者なんですか!?」
「そうよ。
さてさて。
ちょうどの頃合いなので。
私の転生特典を見せてあげるわ。
さっさと、試験を終わらせましょう」
「どうやるんですか?」
「黙って見てなさい」
そう言って、メイアさんは。
『左目』を閉じた。
そして、『右目』は、彼女の眼帯によって最初から閉ざされている。
つまり、完全盲目状態なのである、はず、だが。
「イビルアイ!」
その言葉を発した瞬間。
メイアさんの頭のお団子が、天に向けて発射された。
それを見て俺は、『黒ひ○危機一発』を思い出したのですが。
全く関係ありませんでした。
天に浮かんだお団子は、黒い翼を持っていました。
そして、髪の毛が動き。
そこから1つの『目』が生まれます。
「行け!」
そのメイアさんの合図で、イビルアイは森の中を飛んで行きました。
しかも、信じられない速さで。
この時、メイアさんはまだ、左目を閉じたままです。
説明、欲しい。
「視察か?」
ダルトさんが、答えを見抜きました。
「正解よ。
敵がいそうな洞窟を探しに行かせたわ」
「自律か?
操作か?」
「私が『見て』操作している。
それが私の異能。
今、私の左目には、イビルアイが見ている景色が見えている。
さらに、私の2つ目の異能、『高速移動』。
この効果はイビルアイまで適応可能。
さらに敵感知魔法も適用可能。
わかる?
最高の『斥候』スキルなわけ」
「そして、自分も高速移動可能。
敵地を視察して、隙を見つけ、速攻で攻撃できる。
めちゃくちゃ相性の良い異能ですね」
皆が関心していると。
わずか1分でイビルアイは戻ってきて。
再び、メイアさんのお団子として合体した。
「洞窟を見つけたわ。
さっさと行くわよ」
*****
名もなき洞窟に入ると、出現モンスターのレベルが上がる。
森の中よりも、より慎重に、その足を進めていく。
ダルトさんがカンテラを持ってくれているので、俺たちは戦いに集中できる。
問題は1点のみ。
洞窟が狭くて、サブロウをリリースできない。
巨大な守護獣は、こんなところに弱点があるのだな、と認識しました。
しかし、それでもヒヨリちゃんには、『肉』があります。
持ち武器なしのヒヨリちゃんでも、『食事効果2倍』の能力で、攻撃力は十分確保できています。
今度、ヒヨリちゃんの武器、何がいいか、一緒に考えよう。
ここで分かれ道に差し掛かる。
迷わず行動に出たのはメイアさん。
「イビルアイ!」
右の道を選んだイビルアイは、そのまま洞窟を突き進んだ。
「暗視機能付きなので、ご安心を」
「何それ、ほんま便利やな」
「軍隊が、泣いて欲しがる異能だな」
「アタリよ。
発見したわ。
青色の個体。
ミッドデーモン
・・・
と言うことで、コイツは私がいただくわね」
その言葉を残し。
高速移動。
その次の瞬間。
魔物の断末魔が聞こえる。
俺たちも、現場へと急ぐ。
が、俺たちが到着した頃には。
すでに、爪素材は収集完了だったのである。
「あなたたちは仕事してない。
手柄、全部、私のモノ。
これで、あなたたちは、ランクアップできない」
いやらしい笑みを浮かべたメイアさん。
彼女の引き抜かれた剣には、魔物の血がこびりついている。
確かに、3体とも彼女に倒されては、俺たち2人の試験にならない。
まずいな。
「いや、もう、お前たち、全員合格だよ。
ここまでの道中で実力は十分見させてもらったからな。
あとは、2体倒せれば、お終いだ」
「何それ!
そんなのアリなの!?」
メンターダルトさんは、ミッドゴーレム戦だけでなく。
ここまでたどり着くまで、その全てを評価していたのだ。
これで、俺たち2人だけが不合格となることは無くなった。
俺とヒヨリちゃんはダルトさんにお礼を言う。
が、メイアさんは不服そうで。
そのあと、ため息をつくと、
「ならあと2匹はあなたたちだけでなんとかして。
私手出ししないから」
そう言って、剣を肩にかけた鞘に戻したのだった。