表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/187

カナッペは一口大に切った食パンやクラッカーなどにチーズや野菜などをのせた料理です

「きたぞー、タドル」


 バー営業開始から1時間経過。

 客入りも上々で、忙しくなってきた時間帯。

 ここで入り口から、黒い鎧の男が現れる。


「ダルトさん、来店、助かります!」


「アタシも来たぜー」


 ダルトさんの後ろから、ケモミミライザも登場。

 これぞ、打倒アリサへ向けた秘策の1つ。


「武器屋での売上も上がってきたから。

 今日は大盤振る舞い、金を落としていってやる」


「俺も今日、ギルド依頼をこなしてきたところだ。

 勝負の、手助けをしてやる」


 そして、やってくる団体客。

 その先頭をあずかるのは、技工士のコウキさん。

 後ろからフェンス親父。


 さらには。


「信じられない。

 本当にあのときの喫茶店だわ。

 どうやって大陸を渡ったの?

 夢でも見ているのかしら?」


「内装は様変わりしてますね。

 メニューもグレードアップしているとうれしいのだけど。

 今日はよろしくお願いしますね。

 店長さん」


「再来店、感謝します。

 シオンさん、エリンさん」


 昨日、たまたまガンダルの街で出会った2人。

 その2人は俺の突然のお願いを、快く聞いてくれたのだった。


 シオンさん、エリンさんが席に着くと、お店は満員を越えて。

 一部のお客様には、余った椅子を使って着席いただく状態にまでなった。

 そこからは、今までの喫茶店で、最も忙しい。

 でもでも、うれしい戦場。


 本来お客のはずのダルトさんとライザさんにも手伝ってもらいながら。 

 酒と(さかな)を提供するのだった。






*****






 ここから、本日の『バー営業』の売上を報告します:


46日目(夜)

 ・コーヒー x1 = 300x1 = 300G

 ・有糖カフェオレ x1 = 350x1 = 350G

 ・緑茶x1 = 300x1 = 300G

 ・ビール x25 = 500x25 = 12,500G

 ・米焼酎 x5 = 500x5 = 2,500G

 ・ウィスキー x3 = 500x3 = 1,500G

 ・赤ワイン x4 = 500x4 = 2,000G

  →[ドリンク] 19,450G


 ・枝豆 x8 = 300x8 = 2,400G

 ・生野菜サラダ x3 = 400x3 = 1,200G

 ・ポテトサラダ x6 = 500x6 = 3,000G

 ・ハムチーズ盛 x1 = 400x1 = 400G

 ・トマトチーズ盛 x1 = 400x1 = 400G

 ・フライドポテト x10 = 500x10 = 5,000G

 ・唐揚げ x8 = 500x8 = 4,000G

 ・油淋鶏ユーリンチー x1 = 600x1 = 600G

 ・チキン南蛮 x1 = 650x1 = 650G

 ・ナポリタン x1 = 750x1 = 750G

 ・ペペロンチーノ x1 = 750x1 = 750G

 ・ピザサンドx8 = 600x6 = 3,600G

 ・BLTサンドx4 = 650x4 = 2600G

 ・エビカツサンドx4 = 700x4 = 2,800G

 ・テリヤキサンドx1 = 700x1 = 700G

 ・BICハンバーグサンドx3 = 950x3 = 2,850G

  →[フードメニュー] 31,700G


→計:51,150G [注文数99]



 結果、一日の合計売上:


昼:32,900G [注文数58]

夜:51,150G [注文数99]

→ 計:84,050G [注文数157]


 俺は、思い知りました。

 酒の力を。


 俺は、思い知りました。

 宣伝の重要さを。


 俺は、思い知りました。

 FD率の重要さを。


 俺は、思い知りました。

 団体客の重要さを。


 さまざまな衝撃を心に受け、口の端から、自然と笑みがこぼれます。

 それを一時抑え、分析に戻ります。

 次に、以下の解析結果をご覧ください:


[ドリンク] 19,450G(約40%)

[フード] 31,700G(約60%)


 このフードとドリンクの売上の割合を『FD率』と呼ぶそうです。

 一般的に、ドリンクの方が、フードより利益率が高くなります。

 今のウチの店は、『バー』というより『居酒屋』という言葉が合います。

 今回、ドリンクが40%となり、十分高い値が出たのではないかと考えています。


 営業時間は夜の方が短く。

 かつ、来客人数も夜の方が少なかった。

 しかし、売上は夜の方が勝った。

 つまり、客単価が、夜の方が高かったのです。


 これで、勝てる。

 心の中でつぶやきました。


 しかし、競合も。

 そんなヤワな相手ではないのでした。


 簡単な売上分析が終わり。

 俺は、入り口の窓から。

 対面する競合のレストランの方を見つめました。


「アリサさんの店にも、照明が、ついている、だと!!」






*****






 時刻は22:30。

 俺は店外に出て、周囲を確認する。

 俺の店にも、彼女の店にも、『CLOSED』の看板が扉に飾られていて。

 その扉から、赤色の光が漏れ出してきている。

 お客様は皆帰り、周囲は静まりかえっている。


「アリサさんも、夜間営業に踏み込んでいたんだ・・・」


 真夜中だと言うのに。

 ガンダルの街は明るい。

 他の街では、決してこんなことはなく。

 ガンダルが大都市であるからこそ。

 こんなにも遅くまで皆が起きているのであるという考察を行える。


 俺の視線は再び、MILK FARMミルクファームの店舗入口の扉に戻る。

 その扉がゆっくりと開き。

 茶色のポニーテールの少女が現れる。


「あなたも、夜間営業に手を出していたのね」


「考えることは、同じでしたね」


 笑みが交錯する。


「今日は、高級なワインが、たくさん出たわ。

 あなたみたいな低俗な店では出せないような、高級品がね」


「ぐぐっ・・・。

 それ、アリかよ」


「法外な値付けはしていないわ。

 高級品を、お手頃に提供しているだけだもの。

 文句はあって?

 あなたのお店も盛り上がっていたみたいだけど。

 客単価の違い。

 思い知りなさい!」


「こっちだって。

 今までの人のつながりが、力を貸してくれてるんです。

 彼らのためにも。

 負けるわけには、いかない!」


 俺たちの啖呵たんかの切り合いを聞いてだろう。

 ミエルさん、ヒヨリちゃん、黒髪少女さん、メイアさんが店外に様子を見に来た。

 各位、赤橙色に光るライバル店を見て。

 夜間営業の存在には気づいていることだろう。


 しばし、静かな時間が流れると。

 2人の店長の熱もおさまり。

 話題が変わる。


「1つ聞きたいんだけど。

 私の店より、あなたの店の方が大きいのは、喫茶店のレベルみたいなものがあるのが理由なのよね」


「はい、そうです」


「喫茶店のレベルアップの条件は、総売上だとして。

 レベルアップのタイミングはどうなってるの?」


 この点、隠しておくのはフェアではないと俺は判断した。

 しかし、俺が回答を返す前に、天使が発言をした。


「レベルアップのタイミングは、総売上が一定に達した状態で。

 喫茶店をクローズ状態にする。

 もしくは、入口扉のアイコンを全て外す。

 どちらかの条件で、アナウンスが脳内に流れるように設計しているわ。

 ただし、喫茶店サイズの拡張が行われるのは、次回オープン時となる。

 店内に動物がいる状態でのクローズはできないので注意しなさい」


「なるほどね」


「これくらいの内容、タドルだけが知っているのはフェアじゃないと言う天使の判断よ。

 文句、ある?」


「ありません」


 そして、彼女の店が。

 本日俺の店と同等か、それ以上の売上を達成しているとしたら。

 おそらく・・・


「このアイコンを外せばいいのね。

 ・・・。

 ・・・・・・。

 きたわよ、アナウンス。

 レベル2!」


 アリサさんはすぐに喫茶店をクローズ、アンド、オープン。

 俺は気づかなかった、そのサイズの違いに。

 すぐに気づく。


「嗚呼。

 これで席数を増やせるわ。

 天使様に感謝しないと」


 敵がパワーアップする様を目の前で見せつけられた俺。

 ここから更に、厳しい戦いが・・・。


「タドルさん。

 ウチもアイコン、外してみましょう」


 そう言ってヒヨリちゃんが、俺の店のアイコンを指さした。

 そこには、『ナイフフォーク』と『ビールジョッキ』のアイコン。

 バー営業に合わせて、『カップ』のアイコンを、『ビールジョッキ』のアイコンに変更している。


 すぐに扉に駆け寄って。

 アイコンを外す。

 そして・・・


・喫茶店の売上が一定値に達しました、レベルアップします

・現在喫茶店レベル5です

・喫茶店面積拡張は、次回喫茶店開放時から反映されます

・『移動可能コンロ機能 Lv1』が解放されました


「いど・・・!」


「井戸?」


 危ねぇ!

 敵に情報を流してしまうところだった。


「喫茶店、レベルアップしました!

 面積拡張もあり、です!

 皆さん、店から離れてください」


 今現在の喫茶店のサイズを目に焼きつけたうえで。

 喫茶店をクローズ。


 そこから、草原が現れ、風が流れる。


 そして、


「喫茶店オープン!」


 俺の叫びに応え。

 そこに現れた喫茶店は!


「『二階席』、キターーーーーーーー!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=280491855&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ