アーク溶接装置は、まだこの世界には存在しません
ここからは、俺が考える『溶接』のイメージです:
・2つの母材をくっつけたい
・ここに鉄の棒を持ってきて
・母材と、鉄の棒を、同時に溶かす
・冷え固まったら、くっついてる
・電気を使うアーク溶接という言葉をよく聞いた
・母材と鉄の棒の間に、めっちゃ電圧をかけると、めっちゃ火花出る
・でも、まだこの時代に、『電気』は開発されていない
「社会見学に行きます」
俺達は、再び、ガンダルへやってきた。
ソシャゲ天使はウチで留守番。
本日3回目となる、フェンス親父との邂逅。
そして、親父は無言のまま。
俺たちは、その背中を追いかけた。
*****
『ガンダル第一製鉄所』、『ガンダル第一鉄工所』。
2つの文字が並んでいる。
ここで、注意事項の連絡が始まる:
・うろちょろ、すんな
・騒ぐな
・これから案内するのは、『鉄工所』
・奥に『製鉄所』があるが、ここは機密情報が多々存在するので絶対に侵入禁止
・『製鉄所』で、鉄鉱石から鉄材を作って
・『鉄工所』で、さらに加工を行う
・本来、『鉄工所』も立ち入り禁止区画
・ここで見たことを、あんまりベラベラ喋るんじゃねぇ
案内されたのは広い倉庫。
ジェルソンの木造建築とは異なる、鉄骨を持った建物。
そこで発見、第一作業員。
俺は、声をかける。
「何を、作っているんですか?」
「鉄のラダーです。
俺は、高所作業用の建築具、および建材の作成が仕事です」
そして、俺の観察眼が、2つの矛盾する事実を見つけ出した:
・ラダーのステップが溶接で接着されている
・作業員さんは、手に、何も持っていない
そして、ここで唐突に、クイズが始まる。
「では、ここで問題です。
俺は、どうやって、このラダーを溶接したのでしょうか?」
*****
ここから3人がシンキングタイムに入りますので、皆さまはオームの法則の映像をお楽しみください
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まさか。
本当に、この時代に『アーク溶接装置』が存在するのでは?
「正解発表を、お願いします」
「じゃあ、やってみせますね」
母材、ラダーの柱とステップは、万力アームで固定された状態。
作業員さんは、長い鉄の棒を左手に持って。
それを、接合部分に、付ける。
その瞬間。
・・・
何も、起きなかった。
「正解は、光の魔法で焼いて、くっつけるでした〜」
接合部に向けて、レーザービームが発射される。
鉄が赤く染まり。
そしてほどなくして、また黒くなり。
柱とステップが溶接された。
「魔法、使うんかーーーーい!」
俺のツッコミが、倉庫内に響いた。
「接合だけじゃなく、切断も光魔法で可能です」
「いや、まあ、確かに。
『魔法を使うな』、なんて、誰も言っていません。
・・・。
でも、なんで、『光』の魔法なんですか?
火の魔法で焼いて、溶かしてもいいんじゃないですか?」
「いい質問ですね。
火の魔法は、局所的にエネルギーを集約する、という。
エネルギーの圧縮が難しいんだよ。
今、この鉄を溶かすために、僕は1ヶ所、1ポイントに、エネルギーを集めたいんだけど。
火の魔法でエネルギーを大きくしていくと、火の玉のサイズが大きくなっちゃって。
なんというか、全部燃えちゃうんだ」
「へー」
「『ロケットランチャー』と、『スナイパーライフル』の違い、みたいなものだよ」
「・・・。
あなた。
転生者ですか?」
「君もでしょ。
GGDを1人で倒す人間なんて、前代未聞だもん。
僕は『コウキ』。
よろしくね、タドルくん」
ここから、コウキさんは、溶接に関する補足情報を教えてくれる:
・炎魔法が活躍するのは、『製鉄』のフェーズ
・雷魔法でも溶接は可能かもしれないが、雷は制御が難しいので、実用化していない
・光魔法を使える人間は、この世界でも、ごくわずか
・故に、かなりのお給金をもらっている、高給取りである
・光の魔法を覚えるには、下級属性を2属性、中等レベルにする必要があり
・その上で、光の聖地を訪ねて
・高額のお金を払い、光魔法を習得する必要があり
・さらにレーザー溶接を行うまでの、威力、精度を達成するまでには、地道な鍛錬が必要になる
・なので、普通に戦っても、めっちゃ強い
・そんな稀有な人員を、多数囲い込んでいるのが『ガンダル』
・故に、ガンダルは、世界最大の軍事力を誇っているのである
そして、ここまでの状況をまとめると、以下のようになる:
・俺は、鉄製の家具を作るために、光魔法を極める必要がある