プロローグ
プロローグ 彗星は突然に
「あー…つまんね。」
あと何度、俺はこの台詞を呟くだろうか。惰性であった学校から帰り、いつもの至福に浸ろう。部屋へ入ればそこは…
オタクの聖域、自室。推しのグッズ、ポスター、写真集、ペンライト。全てを網羅した俺の部屋。まさに聖域である。その聖域にて俺はいつも通りネットの波へサーフしに行く。
「今日は更新なしかよ…」
まずは好きなアイドルのブログの更新チェック、だが今日は無更新だ。仕方ない、次だ。YouTube(人はこれをようつべという)を開き、公式が提供したライブ映像を流す。そしてコール。ライブで聞こえるそれに劣らない熱々のコールをする。ストレス発散、会場との一体感。ああ、素晴らしい!コメ欄の荒れが玉にキズだが…お前ら、仲良くしようぜ…
ひとしきり叫んだ後は、ネットテレビでそのアイドルのバラエティーを見る。
「今日もまいまい可愛いなぁ…」
先ほど聞いていた曲でセンターを務める俺の推し、まいまいこと黒瀬麻衣。絶対的エースとして君臨する彼女だが、バラエティーのノリも良く、面白い。こんなにできた美人、俺はみたことがない。ああ…会いてえ…完全に思考がオタ化していると
「兄ちゃん!飯作ってー!」
まだオタク文化を知らない弟と妹が飯の催促に来た。少しタイミングが悪いがまあいい。両親の帰宅が遅い家庭の長男として面倒は見ないとな。
「おう。ちょっと待っとけよ。」
部屋を出る。また後でな!まいまい!明日の少しの別れを惜しみながら、俺は弟と妹の待つリビングへと向かった。
今日も学校だ。リトルコミュ障の俺はあまり目立たないがむしろその方が楽だ。基本そういうことで疲れたりはしないが…
「よぉ!蒼馬、元気か!」
出た。
「さっきまでは。」いかん、本音が出た…
「おまっ、辛辣な…俺の登場で萎えたか?」
「察せ。」
「ありゃゃ…笑笑」
こいつは遠田シンジ。俺と同じ明石高校2年A組だ。こんな些細な会話が続くのもこいつと、くらいである。まあ、それはこいつも同じオタクであるからだということに起因するのだろうが。しかしこいつはオタクの絶対的イメージである陰キャというイメージをぶち壊すほど明るい性格でクラスでもそれなりに人気である。お調子者だが何だかんだ楽しいやつだ。俺もそれなりに信頼している。
それから俺たちは昨日の歌番組に出ていた推したちについてああだこうだと語り合い、教室に入った。まあ、悪くない時間だった。
二学期の始め、残夏の新緑の香りの残る日の朝のことだった。
HRが始まり、席に着く。窓際の俺の席、その隣は空いている。つまり俺は結構ポツンと1人でいるというわけだ。話しかけられることがなくなるからむしろ歓迎なのだが。HR自体もあまりぱっとしないため
俺は窓から外を見ていた。新緑が眩しく、何となく清々しい。すると、担任からこの時期らしい報告がされた。
「今日は転校生を紹介します!」
クラスが湧いた。男子は女子を、女子は男子を期待して目を輝かせた。(ただし美男美女に限る、これ絶対、という勝手なハードルを加えて)まあ、誰がくるんだろうか。俺自身は半分どうでもよく思っている。どうせ話さないかもしれないしな。
「入ってきてください!」
少し元気の良い指示。そして入ってきたのは…
「藤村飛鳥です。よろしくお願いします。」
残夏の新緑など霞むような、華の美少女出会った。彗星の如く、いや、もはや彗星が落ちてきたかのような衝撃だ。か…可愛い!まいまいと同等くらいじゃねえか!(見た目では)俺の理性が、多分学校の中で始めて揺れている。エモいってこのことを言うのか。なるほど、エモい!教室中も、特に男子が湧いている。これはおそらく、戦争だ。
そんな妄想をしていると、担任が言った。
「藤村さん、席は衛藤君の隣です。あの一番後ろの窓際の彼の隣ですよ。」
は?あいつなんて言った?オレノトナリ?
彗星はどうやらオレの頭に直撃したらしい。なぜなら。そのくらいの衝撃が今、オレを襲っているのだから。
どうも、Asukaこと里見悠馬です。なぜAsukaなのか、それは僕のプロフィール欄から察してください笑今回は、はじめて投稿させていただくシリーズのプロローグということで、短めです。とりあえず次の章からは一万字以上を目指して投稿します。
さて、オタクではある自分、一度も彼女がいたことがありません!今も1人オタクとして元気にやってますが、もしオタクがハイスペックだとしたら、ヤンキーだったとしたら、お調子者だとしたら、というわけで錚々たるオタクを揃えながら、その中に彗星の如く謎の美少女を登場させるという…一歩間違えればカオスになるような作品に挑んでおります。さて、これからどうしようか…こういう悩みの時も楽しいんですよね。
1人でも多くの人にこの作品を閲覧してもらい、楽しんでもらえることを祈ります。コメント、評価等是非よろしくお願いします。